少子高齢化が進む日本において、介護業界のM&A（合併・買収）が活発化しています。特に、認知症高齢者や障がい者向けの「グループホーム」は今後も需要が増すと予想され、経営の効率化や後継者問題の解決手段としてM&Aが注目されています。本記事では、2025年の最新M&A事例や注意点を解説し、成功に向けたポイントを詳しく紹介します。

1.グループホーム業界の現状とM&Aの必要性

グループホームは、家庭的な環境のもとで認知症高齢者や障がい者が支援を受けながら生活できる施設です。高齢化の進展に伴い需要は拡大していますが、一方で以下のような課題も浮上しています。

人材不足：介護職員の確保が難しく、運営の負担が増加。
経営者の高齢化と後継者不足：事業承継の問題が深刻化。
運営コストの上昇：物価高や人件費の増加による負担増。

これらの問題を解決する手段として、M&Aによる事業譲渡や統合が有効とされています。

2.2025年の最新M&A事例

以下に、2025年におけるグループホーム業界の注目すべきM&A事例を紹介します。​

• リビングプラットフォームによるシニアケアの高齢者グループホーム事業譲受（2023年12月）
  リビングプラットフォームは、兵庫県尼崎市で高齢者グループホームを運営するシニアケアの事業を譲り受け、阪神南地域でのシェア拡大を図りました。 ​
• QLSホールディングスによるAKの障がい者グループホーム事業譲受（2023年11月）
  QLSホールディングスの子会社であるエルサーブは、AKが運営していた障がい者グループホーム事業「g-port」を譲受し、沖縄県内でのサービス提供エリアを拡大しました

3.グループホームのM&Aを行うメリット

■ 売り手側のメリット

• 後継者問題の解決：後継者がいない場合、事業譲渡により存続が可能。
• 経営リスクの軽減：M&Aにより経営の負担を軽減し、安定した運営が可能に。
• 従業員や利用者の継続利用：適切な買い手を選ぶことで、従業員や利用者の環境を守ることができる。

■ 買い手側のメリット

• 事業拡大のスピードアップ：新規施設の開設に比べ、既存施設の買収は即時展開が可能。
• 運営の安定化：実績のある施設を取得することで、初期リスクを抑えながら事業拡大ができる。
• 許認可の引き継ぎ：株式譲渡の場合、既存の許認可を維持したまま運営可能。

4. M&A成功のための注意点

M&Aは慎重に進める必要があり、以下のポイントに注意が必要です。

● 経営状況の適切な把握

M&Aを行う際は、対象事業の収益状況や稼働率、施設の老朽化状況などをしっかり確認することが重要です。特に、入居者の確保が安定しているかどうかが、買収後の運営に大きく影響します。

● デューデリジェンスの実施

買収前に財務状況や契約関係を精査する「デューデリジェンス（買収監査）」を実施し、想定外のリスクがないかを確認することが求められます。

● 人材確保の戦略

M&A後のスムーズな運営のためには、現場スタッフの離職を防ぐ対策が欠かせません。買収後の雇用条件や職場環境の維持・改善が重要です。

● 法務・契約面での確認

グループホームは介護保険制度に基づいた運営が求められるため、行政手続きや許認可の確認も必要です。契約内容をしっかりチェックし、スムーズな引き継ぎを行いましょう。

5.M&Aの一般的な流れ

M&Aは以下のようなプロセスで進められます。

1. 売却・買収の検討：事業の売却または買収の意向を整理。
2. 専門家への相談：M&Aアドバイザーや会計士、弁護士などの専門家に相談。
3. 買い手・売り手の選定：希望条件に合う相手を探し、交渉を開始。
4. 基本合意の締結：買収価格や条件を決定し、基本合意書を交わす。
5. デューデリジェンスの実施：財務・法務の詳細な調査を行う。
6. 最終契約の締結：問題がなければ最終契約を締結し、譲渡を実施。
7. 引き継ぎ・統合：買収後の運営を円滑に進めるため、従業員や利用者との調整を行う。

6. 今後の展望

今後、介護業界全体のM&Aはさらに増加すると予想されます。特に以下のトレンドが注目されています。

• 大手企業によるM&Aの加速：規模の拡大を図る大手企業による買収が増加。
• DX活用による経営改善：ICT技術を活用した施設運営の効率化が進む。
• 公的支援の活用：事業承継支援のための補助金制度や融資を活用するケースが増加。

M&Aを活用することで、グループホーム業界のさらなる発展が期待されます。

まとめ

グループホーム業界のM&Aは、経営者の高齢化や人材不足の課題解決策として重要な手段となっています。買い手・売り手双方にメリットがある一方で、成功のためには慎重な事前調査と計画的な引き継ぎが必要です。2025年もM&A市場の動向に注目し、適切な戦略を立てることが求められます。

グループホームのM&Aを検討する際は、信頼できる専門家と連携しながら、慎重に進めていきましょう。