介護報酬改定2027の論点とM&A・事業承継への影響
2027年度介護報酬改定に向け、処遇改善、生産性向上、LIFE、医療・介護連携、BCPなどの議論が進んでいます。ただし、2026年9月20日時点では、具体的な改定率やサービス別の単位数、加算要件は未確定です。介護事業のM&A・事業承継を検討する経営者は、改定を予測して待つだけでなく、複数の収支シナリオを作り、自社の収益力と承継上の課題を整理しておくことが大切です。
介護報酬改定2027の現在地|何が決まり、何が未確定か
介護報酬改定では単位数以外も見直される
介護報酬は、介護事業者が利用者へサービスを提供した際に受け取る対価です。サービスごとの基本報酬に、提供体制や取り組みに応じた加算・減算を反映して計算します。
改定の対象は単位数だけではありません。加算の算定要件、人員・設備・運営基準などが見直される場合もあります。そのため、全体の改定率が同じでも、サービス構成、地域、職員配置、加算の取得状況によって各事業所への影響は異なります。
2026年9月までに審議された主な内容
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会では、2026年4月27日の第256回会合で、2027年度介護報酬改定に向けた検討の進め方が議題となりました。その後、個別サービスと横断的課題について審議が行われています。
| 時期 | 主な議題 |
|---|---|
| 2026年5~7月 | 小規模多機能、通所系、訪問系、施設系、人口減少地域のサービス提供体制 |
| 2026年8月 | 地域区分、高齢者住まい、処遇改善、生産性向上、虐待防止、BCP、ハラスメント対策 |
| 2026年9月3日 | 認知症、医療・介護連携、LIFE、口腔・栄養、多床室の室料負担 |
| 2026年9月10~16日 | 関係団体等との意見交換会 |
会議の開催状況と議題は、厚生労働省「社会保障審議会(介護給付費分科会)」で確認できます。
ここで注意したいのは、分科会の論点や関係団体の要望が、そのまま改定内容になるわけではないことです。2026年9月20日時点では、次のように整理できます。
| 区分 | 現在の状況 |
|---|---|
| 確認できる事実 | 2027年度改定に向け、個別サービスと横断的課題の審議が進んでいる |
| 審議中の論点 | 処遇改善、生産性向上、LIFE、BCP、虐待防止、医療・介護連携など |
| 関係団体の意見 | 基本報酬、加算、人員配置、地域区分などに関する要望が提出されている |
| 未確定事項 | 全体の改定率、サービス別単位数、加算率、最終的な算定要件 |
2027年度介護報酬改定で注目される5つの論点
1.介護人材の確保と処遇改善
厚生労働省が第263回介護給付費分科会で示した資料によると、第9期介護保険事業計画のサービス見込み量などを基に都道府県が推計した介護職員の必要数は、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人です。2022年度の介護職員数約215万人を基準にすると、それぞれ約25万人、約57万人の増加が必要とされています。
これは将来の「必要数」の推計であり、実際に確保済みの職員数ではありません。出典は厚生労働省「介護人材確保に向けた処遇改善等」(第263回介護給付費分科会資料1、2026年)です。
2027年度改定では、継続的な賃上げをどのように支えるかに加え、処遇改善加算の複雑さや、小規模事業所の事務負担も論点となっています。
M&Aでは、処遇改善加算による収入だけでなく、職員への配分、賃金規程、計画書・実績報告、将来も継続する人件費を確認します。加算収入が増えていても、同額以上の賃上げや採用費が必要であれば、利益が増えるとは限りません。
2.ICT・介護テクノロジーによる生産性向上
見守り機器、介護記録ソフト、ケアプランデータ連携などの活用も審議されています。ただし、生産性向上は単純な人員削減を意味するものではありません。記録や移動にかかる時間を減らし、ケアの質や職員の負担軽減につなげられるかが焦点です。
M&Aの査定では、機器やシステムを導入しているかだけでなく、次の項目も確認します。
- 導入費、保守費、利用料、更新費はいくらか
- 現場の職員が継続的に利用しているか
- 記録業務や残業時間の削減につながっているか
- 買収後にデータを安全に移行できるか
- 追加投資や職員研修が必要か
設備が存在するだけではなく、運営改善へ結び付いていることを資料で説明できると、買い手も将来収支を検討しやすくなります。
3.虐待防止・身体拘束適正化・安全管理
高齢者虐待の防止、身体拘束の適正化、事故防止なども第263回介護給付費分科会の議題です。詳しい資料は厚生労働省「第263回社会保障審議会介護給付費分科会資料」で公表されています。
M&Aのデューデリジェンスでは、研修記録、委員会議事録、事故報告、行政への報告、苦情対応などが確認対象になります。記録不足や基準違反が見つかった場合は、報酬返還の可能性や是正費用を踏まえ、譲渡価格や契約条件が調整されることがあります。
4.BCPの実効性と地域連携
感染症や自然災害に備えるBCPについては、計画書の有無だけでなく、研修・訓練、備蓄、連絡体制、他事業者や行政との連携が実際に機能するかも論点です。
単独拠点の事業者では、代替拠点や応援人員を自社だけで確保することが難しい場合があります。一方、複数拠点を持つ買い手との統合後に、人員融通や備蓄の共同化ができれば、事業継続体制を強化できる可能性があります。
5.利用者・家族からのハラスメント対策
訪問系サービスでは、職員が利用者宅で単独対応する機会が多く、暴言、暴力、セクシュアルハラスメントなどへの備えが必要です。第263回分科会では、職員の安全確保が必要な場合の複数名訪問や、報酬上の対応も論点として示されました。
相談窓口、対応手順、利用契約への記載、複数名訪問の判断基準などの整備状況は、職員の定着と事業継続性を評価する材料になります。
サービス種別によって異なる改定の影響
| サービス種別 | 主な注目点 | M&Aで確認したい事項 |
|---|---|---|
| 訪問介護・訪問看護 | 人材確保、移動負担、処遇改善、安全対策 | 訪問効率、職員への依存、キャンセル率、移動費 |
| 通所介護 | 送迎、生産性向上、人員配置、稼働率 | 送迎原価、車両更新、定員に対する利用状況 |
| 特養・老健・介護医療院 | 夜間配置、ICT、医療連携、口腔・栄養 | 入所率、職員配置、修繕・設備更新、協力医療機関 |
| 有料老人ホーム・特定施設 | 住まいと介護サービスの関係、安全管理 | 入居契約、外部サービス利用、関連当事者取引 |
| 居宅介護支援 | ケアマネジャー確保、業務負担、データ連携 | 担当件数、資格者の配置、紹介元への依存 |
| 小規模多機能・看護小規模多機能 | 訪問・通所・宿泊を組み合わせた評価 | 各機能の稼働状況、夜間体制、送迎・訪問コスト |
例えば、訪問介護では売上が安定していても、訪問先が広域に分散していると、移動時間や交通費が利益を圧迫します。通所介護では稼働率が高くても、送迎車両の更新や運転人員の不足が将来負担になることがあります。
したがって、「介護事業」という一括りではなく、サービス特性、地域、人員構成、加算への依存度を分けて分析する必要があります。
2027年度介護報酬改定がM&A・事業承継に与える影響
基本報酬・加算の変更は将来収益の評価に影響する
介護事業の譲渡価格は、現在の売上だけで決まるものではありません。買い手は、買収後にも継続して得られる収益やキャッシュフロー、追加投資の必要性を確認します。
基本報酬や加算が見直されれば、利用者数が変わらなくても将来収益が変動する可能性があります。一方、報酬収入が増えても、人件費や設備費がそれ以上に増加すれば、利益が改善するとは限りません。
査定に備える際は、具体的な改定率を決め打ちせず、次の3つの収支シナリオを作る方法があります。
- 基本報酬・加算収入が改善するケース
- 収入がおおむね現状を維持するケース
- 一部の報酬・加算が見直され、費用負担も増えるケース
利用者数、稼働率、単価、加算、人件費、採用費、ICT費用を変数にすれば、改定内容が未確定でも自社の弱点を把握できます。
加算の根拠資料や法令遵守も譲渡条件に影響する
売上に含まれる加算の根拠資料が不足していると、買い手は返還や算定停止のリスクを考慮します。人員基準、資格証、勤務表、研修、委員会、個別計画などを照合し、請求内容と実際の運営が一致しているか確認しましょう。
問題が見つかっても、直ちに譲渡できなくなるとは限りません。ただし、想定される返還額や是正費用を価格へ反映する、成約前に改善する、過去の請求に関する責任分担を契約で定めるなどの対応が必要になる場合があります。
制度変更へ対応できる組織かも確認される
管理者だけが加算要件や請求方法を理解している事業所では、その管理者が退職すると運営が不安定になるおそれがあります。
業務手順、権限分担、記録方法、職員教育が標準化されていれば、買収後の引き継ぎを進めやすくなります。オーナーや特定職員への依存を減らすことは、改定対応と事業承継の双方に有効です。
改定前に売却するべき?改定後まで待つべき?
「報酬が上がるまで待てば高く売れる」「改定前に売れば安全」と一律には判断できません。改定による収益改善を期待して待っても、その間に管理者や職員が退職したり、資金繰りが悪化したりすれば、事業価値が低下する可能性があります。
| 早めの承継検討が適する可能性 | 改定後まで待てる可能性 |
|---|---|
| 後継者不在や経営者の健康問題がある | 財務・人員体制が安定している |
| 資金繰りや人材流出への懸念がある | 改定対応の準備が具体的に進んでいる |
| 大規模修繕や車両更新が迫っている | 収益改善の見込みを資料で説明できる |
| 承継までに使える時間が限られている | 承継時期に十分な余裕がある |
売却時期は、改定予測に加え、後継者、手元資金、借入金、採用状況、設備投資、地域需要、買い手候補を総合して検討します。
2027年度改定の内容が確定していない段階でも、現行の収益構造や加算取得状況を基に、事業価値の目安を整理できます。売却を決めていない方も、まずは無料簡易査定で現在の相場感と承継上の課題をご確認ください。
介護事業者が今から準備しておきたいこと
加算・人員・運営記録を整理する
- 算定している加算と根拠資料を一覧化する
- 資格証、雇用契約書、勤務表を照合する
- 研修、委員会、BCP訓練の記録を確認する
- 運営指導での指摘事項と改善状況をまとめる
- 過誤調整、返還、事故、苦情の履歴を整理する
改定後にも再現できる利益を把握する
M&Aでは、決算書上の利益から一時的な収入・支出やオーナー固有の費用を整理し、事業を通常どおり運営した場合の収益力を検討します。
補助金、臨時的な報酬、役員関連費用、大規模修繕、採用費などを分け、必要な賃上げや設備更新を反映した収支を作成しましょう。過度に楽観的な計画ではなく、前提条件を説明できる試算が必要です。
最新情報を追いながら相談・査定を先行させる
M&Aの準備には、資料整理、買い手候補の選定、条件交渉、職員や利用者への引き継ぎなど一定の期間が必要です。改定内容の確定を待ってから動き始めると、希望する時期に承継できない場合があります。
初期段階では、情報開示先を限定し、社内へ公表せずに査定や選択肢の整理を進める方法もあります。売却、親族内承継、役職員承継、継続経営を比較してから方針を決めましょう。
2027年度改定を見据え、まず自社の現状を把握する
2027年度介護報酬改定では、処遇改善、生産性向上、安全管理、BCP、LIFE、医療・介護連携などが幅広く検討されています。ただし、2026年9月20日時点では、具体的な改定率、サービス別単位数、加算要件は確定していません。
予測だけで売却時期を決めず、自社の加算依存度、人件費、稼働率、設備投資、法令遵守状況を整理することが先決です。上振れ・現状維持・下振れの収支を比較すれば、改定内容が固まる前でも承継準備を進められます。
M&A承継サポートは、介護・医療・障がい分野に特化し、M&A成約100件以上の実績を持つメンバーが支援します。着手金・中間金無料の完全成功報酬制で、赤字や廃業を検討している事業者にも対応しています。まずは秘密厳守の無料相談・無料簡易査定をご利用ください。
2027年度介護報酬改定に関するよくある質問
2027年度介護報酬改定の内容はもう決まっていますか?
2026年9月20日時点では、具体的な改定率、単位数、加算率、算定要件は確定していません。介護給付費分科会で各サービスと横断的課題の審議が進められています。
2027年度の介護報酬は引き上げられますか?
現時点では断定できません。全体の改定率だけでなく、サービス別の配分や加算・減算の見直しによって、事業所ごとの影響は異なります。
改定前に介護事業を売却したほうが有利ですか?
一律には判断できません。後継者、人材、資金繰り、借入金、設備更新、買い手候補などを総合して判断する必要があります。
赤字や小規模な介護事業所でも譲渡できますか?
赤字や小規模であることだけで譲渡できないとは限りません。利用者基盤、人材、地域での役割、改善余地、買い手との相乗効果なども検討材料になります。
相談すると売却を決めなければなりませんか?
売却を決める前の相場確認や選択肢の整理だけでも相談できます。情報開示の範囲を調整し、秘密保持に配慮しながら検討を進めることが可能です。
本記事は、2026年9月20日時点で公表されている資料に基づく一般的な情報提供を目的としています。2027年度介護報酬改定の内容は、今後の審議により変更される可能性があります。本記事は個別の税務・法務・労務・行政手続きに関する助言ではありません。具体的な判断については、税理士、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの専門家または所管行政機関へご確認ください。
まずはお気軽にお問い合わせください。

