就労B型と障がいGH併設施設のM&Aポイント|障がい福祉ダブルライセンス戦略

就労B型とグループホーム併設施設のM&Aポイント
就労継続支援B型(以下「就労B型」)と障がい者グループホーム(共同生活援助)をワンストップで提供する施設が急増しています。日中活動(就労)と夜間の生活支援を一体化することで利用者LTV(生涯取引価値)が向上し、ストック型×フロー型の収益を同時に確保できるためM&Aマーケットでも人気です。
1. 障がい者グループホームとは
障がい者グループホームは、障がいのある人が地域で自立した生活を送るための住まい(定員4~10名目安)。支援区分は介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中支援型などがあり、夜勤者配置加算等の制度報酬で売上の約6~7割を占めます。
2. 就労B型と併設するメリット
- 利用者基盤の相互送客:就労B型の通所者をグループホームで受け入れ、昼夜一貫支援を実現。
- 加算最適化:生活支援員と職業指導員を兼務配置し人件費効率をアップ。
- 行政評価:地域生活支援拠点として自治体公募案件で加点。
- PMI容易:同一法人・同一拠点での経費共通化により買手の統合作業が短期化。
3. M&Aマーケット動向
BATONZやTRANBIなど主要プラットフォームには、常時障がい福祉複合施設案件が50件超掲載。想定価格はEBITDA×3〜5倍が中心レンジで、就労B型単独より 0.5〜1倍 高いマルチプルが提示されるケースが多いです。
4. 上場企業のM&A事例
4-1. リネットジャパングループ × アニスピ(2024/09)
リネットジャパングループ(3556
)は子会社アニスピホールディングスの障がい者グループホームFC事業を新設分割+株式譲渡で再編。直営・FC合わせ130棟体制を目標に成長資金を供給しています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
4-2. QLSホールディングス × g-port(2024/06)
医療・介護事業を展開するQLS HDは、就労B型とグループホームをワンサイト併設するブランドg-portを買収。買収後 5 か月で入所率90%→98%へ改善し、モデルケースとして注目されています。
5. 価格算定のキードライバー
評価項目 | 主要KPI | プラス評価の目安 |
---|---|---|
稼働率 | 就労B型:通所率 GH:入居率 | 85%以上 |
平均工賃/利用者 | 月額工賃水準 | 15,000円以上 |
職員定着率 | 1年離職率 | < 20% |
加算取得 | 重度支援/夜勤配置等 | 主要加算100%取得 |
行政監査リスク | 指摘件数 | 直近3年ゼロ |
6. デューデリジェンスで見られるポイント
- 利用者契約の一貫性:就労契約と賃貸借契約が法人横断で整理されているか。
- 工賃算定根拠:実績報告書と支払記録の完全突合。
- BCP(災害・感染症):併設型はクラスター発生リスク評価が厳しい。
- 建物用途変更:グループホーム転用時の建築基準法・消防法適合の証跡。
7. 売手が準備すべき3つのこと
① 事業別PLの分解 → 就労とGHを分け、交付金・家賃収入の実行EBITDAを可視化。
② スタッフのモチベーション施策 → 成約後6か月間の定着ボーナスを提示し離職防止。
③ 自治体折衝のロードマップ → 指定権者変更や工賃支給事業者の名義変更をガントチャート化し買手に共有。
8. まとめ
就労B型とグループホームの併設モデルは「昼の就労 × 夜の住まい」で継続支援を完結できる点が買手に高く評価され、M&Aバリュエーションでもプレミアムが付きやすい領域です。稼働率・工賃・人員体制を磨き込み、行政監査リスクをゼロに近づけることが、EBITDA5倍超のディールを成立させる鍵となります。
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