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介護、ヘルスケア事業の売却先としての選択肢となるファンドとは?ビジネスモデルとメリット

介護・ヘルスケア業界におけるM&Aは、近年ますます活発化しています。特に注目を集めているのが、売却先としての「ファンド」の存在です。これまでファンドというと製造業やIT企業の成長投資先というイメージが強かったかもしれませんが、現在では福祉・医療・介護分野の事業にも積極的に関与しています。

本記事では、介護・医療・福祉事業の売却を検討している経営者の方に向けて、ファンドのビジネスモデルや売却先としてのメリット・注意点、具体的な事例などを詳しく解説します。


1. ファンドとは?M&Aにおける役割と注目の背景

ファンドとは、複数の投資家から資金を集めて特定の目的で投資・運用を行う機関のことです。介護・ヘルスケア領域においては、「事業会社ではない第三者買収主体」としてM&Aの現場で存在感を高めています。

特に日本では、次のような背景からファンドによる買収が増えています:

  • 事業承継難による売却ニーズの高まり
  • ヘルスケア業界の将来的成長性(高齢化・医療費増加)
  • 介護報酬など制度収入の安定性に対する評価
  • 事業再生・再構築のノウハウを活かせる分野

2. なぜ今、介護・ヘルスケア分野でファンドが注目されているのか?

ファンドがこの領域に注目する理由は大きく3つあります。

2-1. 社会的インフラとしての安定性

介護・医療・福祉事業は公共性が高く、景気の波に左右されにくいため、安定した収益が期待できる領域です。

2-2. 小規模法人の乱立と再編ニーズ

とくに介護・障がい福祉では小規模事業者が多く、M&Aによる統合・運営効率化により、ファンドが付加価値を生み出しやすい状況にあります。

2-3. 政策的な後押し

国も地域包括ケアシステムの実現や医療・介護連携の推進を支援しており、事業統合や再編は政策的にも歓迎されやすい傾向です。


3. ファンドのビジネスモデルと買収戦略

ファンドには主に以下のような類型があります:

  • バイアウトファンド:企業の全株式を取得し経営権を掌握し、価値を高めて数年後に売却
  • グロースファンド:成長企業に資金を投資し、上場や再売却を狙う
  • ターンアラウンドファンド:経営不振の企業を再建して再成長を図る

福祉・医療業界では、バイアウトファンドがM&Aによく使われます。以下は典型的な戦略の流れです:

  1. 法人を買収(株式譲渡)
  2. 現経営陣の一部を残して支援体制を構築
  3. 経営効率化(人材・システム・資金調達)
  4. 拠点拡大または他法人を追加買収(ロールアップ)
  5. 3〜5年後に再売却またはIPO

4. ファンドが好む介護・医療・福祉事業の特徴とは?

ファンドが特に好むのは次のような法人です:

  • 黒字経営が継続している
  • 拠点が複数あり、スケーラブルである
  • 優秀な中間管理職層がいる
  • 高稼働率の施設や利用者定着がある
  • 法令順守や行政対応が問題ない

反対に、単独施設で将来拡張性が乏しい法人や、ガバナンス面に懸念がある場合は評価されにくくなります。


5. ファンドに売却する5つのメリット

1. 高めのバリュエーションが期待できる

将来的な企業価値の上昇を見込んで買収するため、一般の買い手よりも高い評価額がつくことも珍しくありません。

2. 雇用やサービスの維持方針が明確

既存体制を一定期間維持しつつ改善を図るため、従業員の雇用や利用者への影響が抑えられる傾向があります。

3. 経営者が残る・段階的な承継が可能

経営者が一定期間残って組織を引き継ぐ「エグジットプラン付きM&A」が多く、柔軟な承継が可能です。

4. 成長戦略の実行力

資本やネットワークを活用して施設増設や人材強化などの積極的な成長支援が期待できます。

5. 再売却時に共同出資者になるケースも

中には売却後も出資者として残る形でリターンを得られる契約も存在します。


6. 過去のファンドによるM&A事例(国内)

事例①:訪問介護事業者の再編

地域で7拠点を展開する訪問介護法人をファンドが買収し、周辺事業者と統合。人材育成・システム連携により稼働率改善を達成。

事例②:住宅型有料老人ホームを複数買収

全国で展開するファンドが、不動産と介護運営を一体化させるスキームで買収。建物資産と収益をセットで評価。

事例③:障がい者グループホームのロールアップ

複数の小規模法人を同一ブランドに統合し、管理体制を整備。介護保険外の分野でも規模メリットを実現。

事例④:調剤薬局チェーンの再編

複数薬局をM&Aで取得し、業界再編の一翼を担った。既存スタッフと連携したブランド刷新にも成功。


7. ファンド売却時の注意点と交渉のポイント

  • 希望条件を明確にしておく(価格・引き継ぎ体制)
  • デューデリジェンス対応の準備(法務・財務・人事)
  • 買収後の経営方針をすり合わせる
  • 自法人の魅力を客観的に提示できるよう整理する
  • 専門家のサポートを活用する

ファンドは合理的に判断しますが、感情や理念を無視するわけではありません。対話を通じて双方の理解を深めることが成功の鍵となります。


8. まとめ|ファンド売却は、出口戦略の有力な選択肢

介護・医療・福祉事業を展開してきた経営者にとって、ファンドへの売却は「安定性」「成長性」「柔軟な承継」が揃った選択肢です。

もちろん、相手先との相性や将来方針のすり合わせが必要ですが、これからの時代においてファンド売却は事業とスタッフ、地域を守る“攻めの承継”として広がっています。

あなたの事業の価値は、想像以上に評価されるかもしれません。


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