2024年〜2025年における介護事業者の倒産状況と業界再編

2024年〜2025年における介護事業者の倒産状況と業界再編
🚨 2024年度介護事業者倒産の衝撃
📈 2024年倒産状況の全体像
2024年度の介護事業者倒産は、介護保険制度が施行された2000年以降で最悪の数字を記録しました。東京商工リサーチの調査によると、年間倒産件数は179件(前年度比36.6%増)に達し、コロナ禍と大型連鎖倒産が発生した2022年度の144件を大幅に上回りました。
📊 年度別倒産件数推移
特に注目すべきは上半期(1-6月)の倒産件数で、81件という数字は、これまで最多だった2020年同期の58件を大幅に上回っています。この傾向は下半期も続き、年間を通じて介護事業者の経営環境が極めて厳しい状況にあることを示しています。
💡 ポイント
2024年の倒産急増は一時的な現象ではなく、介護業界が抱える構造的問題の表面化であり、2025年以降も続く可能性が高い状況です。
🏥 業種別分析:訪問介護の深刻な状況
業種別倒産件数(2024年上半期)
業種別の分析では、訪問介護事業の倒産が40件と最多を記録し、全体の約半数を占めています。これは前年同期の28件から42.8%の大幅増加で、訪問介護業界の深刻な状況を浮き彫りにしています。
📊 業種別倒産件数構成比(2024年上半期・全81件)
🏢通所・短期入所
• デイサービス・ショートステイ
• 従業員5人未満が52.0%
• 負債1千万円~5千万円が48.0%
🏠有料老人ホーム
• 規模の大きな施設が中心
• 負債1億円以上が55.5%
• 比較的大型の倒産が目立つ
訪問介護の倒産40件を詳しく分析すると、販売不振(売上不振)が34件(85.0%)と圧倒的に多く、従業員数別では10人未満が36件(90.0%)、負債額別では1億円未満が37件(92.5%)と、小規模事業者の売上不振が大半を占めています。
📊 倒産原因の詳細分析(2024年上半期)
販売不振(売上不振)
従業員10人未満
資本金1千万円未満
⚠️ 倒産急増の根本原因
🎯 主要な倒産原因
1. 深刻化する人手不足
介護業界はコロナ前からヘルパーなど介護職員の高齢化と採用難が続いていました。厚生労働省の調査では、今年3月に廃止した訪問介護376事業所のうち、4割強が「人員不足・高齢化等」を理由に挙げており、「利用者不足・経営不振等」(13.3%)を大きく上回っています。
📊人手不足の数値データ
有効求人倍率
離職率
2040年必要人材
2. 他業種との賃金格差拡大
介護職員の処遇改善は進んでいるものの、他業種の賃上げが加速し、介護業界の劣勢が浮き彫りになっています。政府は2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップを目標に掲げていますが、他業種との格差は依然として大きく、人材獲得が困難な状況が続いています。
3. 物価高の直撃
ガソリン代や光熱費、介護用品などの価格上昇を価格転嫁できず、業績が悪化するケースが目立っています。介護報酬は公定価格のため、民間企業のように自由に価格設定ができず、コスト上昇分を吸収しきれない事業者が多くなっています。
📋 介護報酬改定の影響
🔻 2024年度改定の厳しい現実
全体:プラス1.59%の中での訪問介護基本報酬引き下げ
- 身体介護・生活援助ともに約2%の減額
- 訪問介護事業所の約6割が減収(厚労省調査)
- 事業が「赤字」に転落する事業所が続出
2024年度の介護報酬改定では、全体としてはプラス1.59%となったものの、訪問介護については基本報酬が引き下げられました。この改定により、厚生労働省の調査では訪問介護事業所の約6割が減収となっており、多くの事業所が経営に深刻な影響を受けています。
📊 2024年度介護報酬改定の影響比較
全体改定率
訪問介護基本報酬
📊 改定の背景
厚生労働省は「隣接する高齢者施設」中心に訪問を行う事業所への適正化を図る目的で基本報酬を引き下げました。しかし、これが小規模な地域密着型事業所にも大きな打撃を与える結果となっています。
処遇改善加算の一本化
2024年度改定では、従来の処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算が一本化され、新たな「介護職員等処遇改善加算」が創設されました。これにより事務負担の軽減が図られた一方で、加算取得の要件が厳格化され、小規模事業者にとっては取得が困難になるケースも見られます。
🔄 業界再編とM&A動向
📈 M&A件数の急増
レコフデータの調査によると、2024年の介護関連企業のM&A件数は前年比約30%増加し、過去最多を記録しました。これは介護事業者の経営難による売却だけでなく、業界の成長性を見込んだ戦略的な買収も含まれています。
📊 介護業界M&A件数推移
大型M&A事例
🏆 日本生命によるニチイ買収
買収額:
完了日:
売上高:
狙い:
保険×介護のシナジー創出
背景:
人口減少による保険市場縮小
影響:
生保による異業種大型買収の先駆け
📊 介護業界売上高ランキング(2024年)
🏢 異業種参入の背景
2024年は大手企業による介護業界への参入と撤退が相次ぎました。東京電力ホールディングスや積水化学工業などが事業売却を行う一方で、日本生命のような金融機関による大型買収も見られました。
参入企業の狙い
📈 成長市場への期待
- 2025年に11兆円超の市場規模
- 高齢者人口の継続的増加
- 介護サービス需要の拡大
🔄 事業ポートフォリオの多様化
- 既存事業の成長限界
- 安定的な収益源の確保
- 社会貢献事業としての価値
撤退企業の背景
一方で、東京電力HDや積水化学工業のような大手企業が介護事業から撤退している背景には、以下のような要因があります:
- 人材確保の困難さ:専門性の高い介護職員の確保が困難
- 収益性の課題:公定価格制度による利益率の制約
- 規制の複雑さ:介護保険制度や各種基準への対応負担
- 本業への集中:コア事業への経営資源集中
市場規模と将来性
2023年度の介護費用総額は11兆5,139億円で過去最高を更新し、前年度比2.9%増となっています。2025年には介護保険費用だけでも約14.2兆円に達すると予測されており、この巨大市場への参入を狙う企業が後を絶ちません。
📊 介護費用総額の推移
🔮 2025年以降の展望
🎯 2025年度の重要施策
処遇改善の継続
政府は2025年度も介護職員の処遇改善を継続し、2.0%のベースアップを目標に掲げています。しかし、他業種との賃金格差は依然として大きく、根本的な人材不足の解決には時間がかかると予想されます。
💰処遇改善の具体的効果
2024年度目標
2025年度目標
累積効果
技術革新による効率化
AI・IoT技術の導入による業務効率化や、ロボット介護機器の普及により、人手不足の解決策として期待されています。2025年度からは、こうした技術導入に対する補助金制度も拡充される予定です。
地域包括ケアシステムの完成
2025年は「地域包括ケアシステム」の完成目標年次とされており、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制の構築が求められています。これにより、事業者には従来以上の連携能力が要求されることになります。
🚨 予想される課題
- 小規模事業者の淘汰加速:規模の経済を活かせない事業者の退場
- 地域格差の拡大:都市部と地方の介護サービス格差
- 財政負担の増大:介護保険財政の持続可能性
- 質の確保:量的拡大と質的向上の両立
事業者に求められる対応
2025年以降を見据えて、介護事業者には以下のような対応が求められます:
📊 経営基盤の強化
- 財務体質の改善
- 多角化による収益安定化
- デジタル化による効率化
👥 人材戦略の見直し
- 処遇改善の継続
- 働きやすい職場環境の整備
- 外国人材の活用
🤝 連携体制の構築
- 医療機関との連携強化
- 地域包括ケアへの参画
- 他事業者との協働
🔮 2025年以降の業界展望
✅ 処遇改善による人材確保
2.0%ベースアップで賃金水準向上
✅ DX化による効率化
AI・IoT技術で業務効率向上
✅ 業界再編の継続
大手による中小事業者統合
✅ 地域包括ケア完成
医療・介護・予防の一体提供
📝 まとめ
2024年の介護事業者倒産179件という数字は、業界が直面する構造的課題の深刻さを物語っています。訪問介護の基本報酬引き下げ、慢性的な人手不足、物価高による経営圧迫など、複合的な要因が小規模事業者を追い詰めています。
一方で、日本生命によるニチイ買収に代表される大型M&Aや異業種参入により、業界再編は加速しています。東京電力ホールディングスや積水化学工業などが事業売却を行う中、介護業界は新たな局面を迎えています。
🔍 重要な数字で振り返る2024年
2025年以降は、生き残りをかけた更なる統合が進む中で、質の高いサービス提供と持続可能な経営の両立が求められる転換期となるでしょう。高齢化社会の進展により介護需要は今後も拡大が続く見込みですが、技術革新と人材育成、そして適切な報酬体系の確立により、より安定した介護業界の構築が期待されます。
👀今後の注目ポイント
📈 市場動向
2025年14.2兆円市場への成長
🔄 業界再編
大手による中小統合の加速
💰 処遇改善
2025年度2.0%賃上げ目標
🤖 技術革新
AI・IoT活用による効率化
※ 本記事のデータについて
東京商工リサーチ、厚生労働省などの各種報道資料等を基に作成しています。
数値は公表時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。