売却か閉鎖か?デイサービス経営の岐路で考えること

介護業界において、デイサービス事業の経営者は、経営の継続が難しくなった際に「売却」か「閉鎖」かという重要な判断を迫られます。本記事では、デイサービスの経営が厳しくなる背景や、売却と閉鎖のメリット・デメリット、判断のポイントについて詳しく解説します。
1. デイサービス経営が厳しくなる背景
デイサービス事業の経営が厳しくなる主な要因は以下の通りです。
- 人材不足:介護職員の確保が難しく、採用や定着に苦労する。
- 介護報酬の改定:報酬の引き下げや加算要件の厳格化により、収益が減少する。
- 競合の増加:同一エリアに複数の事業所が存在し、利用者の獲得が困難になる。
- 稼働率の低下:利用者数の減少やキャンセルの増加により、稼働率が下がる。
これらの要因が重なることで、経営の継続が難しくなり、売却や閉鎖を検討するケースが増えています。
2. 売却のメリットとデメリット
メリット
- 事業の継続:買い手が事業を引き継ぐことで、利用者や従業員への影響を最小限に抑えられる。
- 経済的利益:事業の価値に応じた対価を得ることができる。
- 後継者問題の解決:経営者の高齢化や後継者不在の問題を解消できる。
デメリット
- 経営権の喪失:売却後は経営に関与できなくなる。
- 条件交渉の難航:買い手との条件交渉が長引く可能性がある。
- 情報開示の必要性:財務情報や運営状況の開示が求められる。
3. 閉鎖のメリットとデメリット
メリット
- 迅速な対応:経営の継続が困難な場合、早期に事業を終了できる。
- 責任の明確化:事業を終了することで、経営者の責任範囲が明確になる。
デメリット
- 利用者・従業員への影響:サービスの停止や雇用の喪失により、関係者に大きな影響を与える。
- 経済的損失:資産の処分や清算に伴う費用が発生する。
- 社会的信用の低下:閉鎖により、地域社会や取引先からの信用が低下する可能性がある。
4. 売却と閉鎖の判断ポイント
売却と閉鎖の判断には、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 事業の収益性:収益が見込める場合は売却の可能性が高まる。
- 資産の価値:不動産や設備などの資産価値が高い場合、売却による利益が期待できる。
- 買い手の有無:買い手が見つかるかどうかが売却の可否に影響する。
- 従業員・利用者への影響:関係者への影響を最小限に抑える方法を選択する。
5. 売却の手続きと注意点
デイサービス事業の売却には、以下の手続きが必要です。
- 専門家への相談:M&Aの専門家に相談し、売却の可能性を検討する。
- 企業価値の評価:財務状況や資産価値を評価し、適正な価格を設定する。
- 買い手の選定:事業を引き継ぐ意欲と能力のある買い手を探す。
- 契約の締結:売却条件を明確にし、契約を締結する。
- 関係者への説明:従業員や利用者に対して、売却の理由や今後の対応を説明する。
売却を進める際は、関係者への配慮や情報の適切な開示が重要です。
6. 閉鎖の手続きと注意点
事業の閉鎖には、以下の手続きが必要です。
- 関係者への通知:従業員や利用者、取引先に対して、閉鎖の決定をできるだけ早期に伝えます。
- 行政への届出:都道府県や市町村など指定権者へ、指定取消や事業廃止届の提出が必要です。
- 雇用の整理:従業員との雇用契約の終了に関して、適切な手続きを進めます(解雇予告や離職票の発行など)。
- 利用者対応:他の事業所への転所支援やサービス終了までの個別支援を行います。
- 設備・資産の処分:建物や備品、車両などの整理・売却・廃棄処理を進めます。
閉鎖にはコストもかかり、関係者への影響も大きいため、可能な限り代替手段(売却など)を検討するのが望ましいです。
7. デイサービスM&Aの成功事例
事例①:小規模デイの赤字経営からの事業譲渡
稼働率が60%を切り、赤字が続いていた地方の小規模デイサービスが、隣接エリアで展開していた法人に事業譲渡。利用者と職員をそのまま引き継ぎ、譲受法人が本部の業務効率や人材供給によって黒字転換に成功しました。
事例②:高齢の経営者によるM&Aによる引退
70代の個人事業主が運営していたデイサービス。後継者不在のため、M&Aにより法人に売却。職員と利用者の継続を条件に、スムーズな譲渡が実現し、地域内のサービスが途切れずに継続されました。
事例③:閉鎖を予定していたが売却に成功
収益性は低いが好立地にあるため、建物付きの事業として資産価値があり、閉鎖予定から急遽M&Aに切り替えて譲渡が成立。オーナーは撤退しつつも譲渡益を得て、職員も継続雇用される形に。
8. どのようなデイサービスが売却しやすいのか?
以下のような条件を満たしているデイサービスは、M&Aにおいて高評価を得やすく、売却の成功率も高くなります。
- 稼働率が安定している(70%以上が目安)
- 人材が定着している(離職率が低い、リーダー人材がいる)
- 建物や設備が綺麗で管理されている
- 地域密着の評判が良い(利用者・家族からの信頼が厚い)
- 介護報酬請求が適切に行われている(加算や請求トラブルがない)
これらの要素を売却前に整理・改善することで、M&Aの交渉が有利に進みやすくなります。
9. よくある質問と経営者の声
Q. 赤字経営の状態でも売れるのでしょうか?
A. 売れます。ただし、黒字の事業よりは譲渡価格が下がる傾向があります。赤字の要因が「人材不足」や「稼働率の低下」であり、改善可能と判断されれば買い手がつく可能性は十分あります。
Q. 従業員や利用者にはいつ知らせればよいですか?
A. 基本的には最終契約の前後が理想です。早すぎると不安を与える可能性があり、遅すぎると混乱を招きます。専門家のサポートを受けながらタイミングを計ると安心です。
Q. 施設ではなく建物だけを売却することもできますか?
A. はい、可能です。ただし、事業価値を売却した方が高値で評価されやすく、建物のみでは価値が下がる傾向があります。
10. まとめ|経営者が最後に選べる「最善の選択肢」とは?
デイサービスの経営者にとって、売却と閉鎖は決して「逃げ」ではなく、事業と人を守るための戦略的判断です。特に、地域に根付いた施設であればこそ、廃業ではなく売却によってその価値を次に繋ぐ選択肢を検討するべきです。
「誰かに引き継いでもらえたら…」
「閉じるしかないと思っていたが、本当にそうか?」
そう考えたことがある方は、ぜひ一度、専門家による無料の簡易価値査定を受けてみてください。想像以上の価値がつくケースも多くあります。
施設の未来、従業員の未来、そしてご自身の人生設計のために、最善の判断を。
▶ 無料相談・価値査定はこちら
「閉鎖しかない」と思う前に、まずは相談することから始めましょう。