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訪問介護の経営が厳しい時に考える3つの選択肢

少子高齢化の進行と介護報酬の伸び悩み、慢性的な人材不足──訪問介護事業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。「このままでは事業継続が難しい」という声も珍しくありません。しかし、経営が苦しい状況は必ずしも“終わり”を意味するわけではありません。適切な打ち手を検討し、実行することで新たな活路を見出すことができます。

本記事では訪問介護の経営が厳しくなったときに考えるべき3つの選択肢を、事業フェーズ別・経営者の目標別に整理しながら解説します。キーワードは「事業再構築」「外部連携」「M&A(事業譲渡)」です。それぞれのメリット・デメリット、実行ステップ、注意点を具体的に示すことで、次の一手を決めるヒントを提供します。

目次

  1. 選択肢1:事業再構築で収益性を高める
  2. 選択肢2:外部連携でスケールメリットを得る
  3. 選択肢3:M&Aで事業を譲渡・統合する
  4. まとめ:選択肢を比較し最適解を選ぶ手順

選択肢1:事業再構築で収益性を高める

1-1. サービス提供エリアの最適化

訪問介護は移動時間=コストです。赤字要因となる遠方エリアを整理し、片道20分以内を目安にサービス提供エリアを再設定しましょう。Google マップなどの移動分析ツールを活用すると、効率的なルート設計が可能です。

1-2. 高付加価値サービスの導入

介護保険内サービスだけでは利益率が頭打ちになりがちです。自費での生活支援サービス介護予防プログラムを組み合わせ、単価向上を図ります。自費サービスは価格設定の自由度が高く、顧客満足度アップにも寄与します。

1-3. DXによる業務効率化

紙ベースの記録や電話予約は工数を圧迫します。業務支援システムLINE公式アカウントでの予約受付、オンライン勤怠などを導入し、スタッフ1人あたりの生産性を向上させましょう。

メリット:既存リソースを活かしながら黒字化が狙える
デメリット:投資回収までに時間がかかる/組織変革への抵抗感

選択肢2:外部連携でスケールメリットを得る

2-1. 地域密着型の連携ネットワークを構築

同一エリアの訪問看護ステーションやデイサービスと提携し、共同で送迎車両・人材をシェアすることでコストを圧縮できます。自治体の地域包括ケア会議を活用すると連携先が見つかりやすいです。

2-2. フランチャイズ・共同事業化

大手介護事業者のフランチャイズに加盟する、または複数社で共同持株会社を設立し、購買や採用を一本化する方法もあります。規模が拡大すれば介護報酬以外の事業(物販・住宅改修など)を展開しやすくなります。

メリット:投資負担を抑えながら経営安定化が図れる
デメリット:意思決定スピードが遅くなる/ブランド自由度が制限される

選択肢3:M&Aで事業を譲渡・統合する

3-1. M&Aを検討するタイミング

以下に該当する場合は、早期に専門家へ相談すると好条件での譲渡が期待できます。

  • キャッシュフローがプラスのうちに売却したい
  • 後継者不在で5年以内に事業承継が必要
  • 競合が激化し単独ではスケールが難しい

3-2. 譲渡スキームと価格の目安

訪問介護の譲渡価格はEBITDAの2〜4倍が目安です。予実管理体制が整っているほどバリュエーションは高まります。資産譲渡・株式譲渡のどちらが適切かは、許認可スタッフ継続雇用の観点で決まります。

3-3. 譲渡後のスタッフ・利用者フォロー

買収側との統合計画(PMI)を策定し、3カ月前からスタッフ説明会、1カ月前から利用者説明会を行うと混乱を最小化できます。

メリット:短期間で資金回収・リスクオフが可能
デメリット:事業喪失への心理的抵抗/譲渡後の競業避止義務

まとめ:選択肢を比較し最適解を選ぶ手順

経営が厳しい状況に陥ったとき、最も避けるべきは“現状維持”です。まずは資金繰り3カ月先の見通しを立て、再構築・連携・M&Aのいずれが自社に適するか試算しましょう。具体的には次の順序で検討すると効果的です。

  1. 損益シミュレーションで再建可能性を数字で把握
  2. 連携候補・譲渡候補の打診を並行して実施
  3. 3カ月以内に方向性を決定し、6カ月以内に施策を実行

訪問介護は地域インフラとして重要な役割を担っています。経営判断を先送りせず、選択肢を柔軟に検討することで、スタッフと利用者を守りながら価値を最大化する道がひらけるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. M&Aを検討する場合、いつから情報開示を進めるべき?

A. 最低でも決算期の直後から準備を始めると、最新の財務情報をもとに交渉できます。ノンネーム資料の作成と秘密保持契約(NDA)の締結は専門家に依頼しましょう。

Q2. 再構築や連携で黒字化した後に再び赤字化しないか不安です。

A. 単月黒字=ゴールではありません。月次でKPIをモニタリングし、稼働率80%・離職率10%以内などの運営指標を維持する仕組みを設けることが重要です。

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