【福祉業界のM&A】法人格ごと売却する?事業譲渡との違い

福祉業界では、高齢化社会の進展に伴う需要の増加と同時に、経営者の高齢化・後継者不在などの問題から、M&A(企業の合併・買収)が活発化しています。その際に必ず検討すべきなのが、「法人格ごと売却するのか(株式譲渡)」、あるいは「事業のみを譲渡するのか(事業譲渡)」というスキームの選択です。
本記事では、それぞれの違いと、福祉業界における具体的なM&A事例を紹介しながら、経営者の皆様が後悔しないためのポイントを徹底解説します。
目次
- 福祉業界におけるM&Aとは?
- 株式譲渡と事業譲渡の基本的な違い
- 【株式譲渡型】福祉業界M&Aの事例と特徴
- 【事業譲渡型】福祉業界M&Aの事例と特徴
- スキーム選択時のポイントと注意点
- まとめ|最適な売却スキームを選ぶために
1. 福祉業界におけるM&Aとは?
福祉業界におけるM&Aとは、介護施設、障がい者支援施設、児童福祉事業所(放課後等デイサービス・児童発達支援)などを対象に行われる事業承継・売却・買収のことを指します。
近年、次のような理由でM&Aを選択する福祉事業者が増えています:
- 経営者の高齢化と後継者問題
- 人材確保難による経営負担増大
- 制度改正による経営環境の変化
- 地域包括ケアシステムへの適応
- 事業ポートフォリオの再編
売却によって資産化を図ったり、事業拡大・効率化を目的に買収を進める動きが活発になっています。
2. 株式譲渡と事業譲渡の基本的な違い
項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
---|---|---|
対象 | 法人格ごと売却 | 特定の事業・資産のみ売却 |
許認可 | 原則、引き継ぎ可能 | 再取得・変更手続きが必要 |
従業員の扱い | 自動的に承継 | 個別に再雇用契約が必要 |
債務リスク | 過去の負債・問題も承継 | 負債は原則引き継がない |
スピード感 | 比較的早い | 手続きに時間がかかる |
どちらを選ぶかは、法人の状況、リスク、買い手の意向によって異なります。
3. 【株式譲渡型】福祉業界M&Aの事例と特徴
株式譲渡は、法人ごと引き継ぐため、許認可・スタッフ・契約関係を変更せずにスムーズに事業承継できるメリットがあります。
事例①:訪問介護事業所の株式譲渡
地域密着型の訪問介護事業所を、大手介護事業者が買収。許認可を維持しつつ、ブランド統合とエリア戦略を進めた。
事例②:障がい者グループホームの譲渡
複数のグループホームを運営する法人が株式譲渡で売却。従業員雇用・入居者支援をそのまま継続できたため、地域から高く評価された。
事例③:デイサービスチェーンの統合
複数拠点展開していたデイサービス法人を株式ごと買収し、運営効率化とシナジー効果を生み出した。
事例④:小規模多機能型居宅介護事業の売却
独自ノウハウを持つ小規模多機能型居宅介護事業をそのまま引き継ぎ、地域展開を強化。
事例⑤:放課後等デイサービス法人の買収
児童福祉事業強化を狙った大手法人による、放デイ専門法人の株式取得。
株式譲渡は「一体承継」がメリットですが、過去の債務リスクも承継するため、事前のデューデリジェンスが非常に重要です。
4. 【事業譲渡型】福祉業界M&Aの事例と特徴
事業譲渡は、売却対象を「特定の事業」に限定できるため、リスク管理がしやすい特徴があります。
事例①:福祉用具貸与事業の事業譲渡
福祉用具部門のみを譲渡し、訪問介護部門は維持。経営資源を再集中した。
事例②:障がい者就労支援B型事業の売却
地方都市で運営していたB型事業のみを譲渡。買い手はエリア内で事業拡大中の法人。
事例③:サ高住内の介護サービス事業譲渡
サービス付き高齢者向け住宅の付帯サービス部分だけを譲渡し、建物運営は継続。
事例④:特養の一部事業譲渡
特別養護老人ホーム運営法人が、デイサービス部門だけを売却し、本体に注力。
事例⑤:短期入所生活介護(ショートステイ)部門の譲渡
稼働率改善が見込めないショートステイ部門のみ切り離し譲渡。
事業譲渡は「売りたいものだけ売れる」柔軟性が強みですが、許認可の再取得や顧客契約の再締結が必要なため、時間とコストがかかることを考慮する必要があります。
5. スキーム選択時のポイントと注意点
どちらのスキームを選択するかは、次の視点で総合判断しましょう。
- 法人の資産・負債のバランス
- 人材の承継希望の有無
- 顧客契約の数・再締結リスク
- 許認可の重要度
- 買い手側の希望スキーム
また、売り手・買い手双方にとって「譲渡後の運営が安定するか」が最も重要です。価格だけでなく、承継後のビジョンまで考慮して決定しましょう。
6. まとめ|最適な売却スキームを選ぶために
福祉業界のM&Aでは、「法人格ごと売却する株式譲渡」も、「事業のみ売却する事業譲渡」も、それぞれにメリットと注意点があります。
自社の状況、譲渡後に望む姿、買い手側の希望を総合的に整理し、専門家と相談しながら最適なスキームを選択することが、成功への近道です。
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