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介護事業承継の進め方|3つの承継方法と流れ

介護事業を経営する中で、「後継者がいない」「子どもに継ぐ意思がない」「職員へ引き継ぐべきか、それともM&Aを検討すべきか」と悩む経営者は少なくありません。介護事業承継には、親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3つの方法があり、それぞれ適したケースや進め方が異なります。本記事では、介護事業承継の基本から流れ、各承継方法の違い、介護業界ならではの注意点、成功のポイントまでを分かりやすく解説します。

介護事業承継とは

事業承継とは経営資源を次世代へ引き継ぐこと

事業承継とは、経営者が交代するだけではなく、事業を継続するために必要な経営資源を次の経営者へ引き継ぐことを指します。

介護事業では、次のような資産や関係性を引き継ぐことが重要です。

  • 会社・法人の経営権
  • 利用者との契約や信頼関係
  • 介護職員・管理者などの人材
  • 事業所・設備・送迎車両
  • 地域包括支援センターや医療機関との連携
  • 地域で築いてきた信用やブランド

介護サービスは利用者の日常生活を支える社会インフラの一つです。そのため、事業承継では「経営者が変わること」だけでなく、「利用者へ継続してサービスを提供できること」が特に重要になります。

介護事業で承継が重要視される背景

介護業界では経営者の高齢化や後継者不足が課題となっています。一方で、高齢化の進展に伴い介護サービスへの需要は今後も見込まれており、地域に必要な介護サービスを維持するためにも円滑な事業承継が求められています。

また、介護事業では利用者・ご家族・職員・行政・医療機関など多くの関係者と事業が成り立っています。そのため、承継準備が遅れると利用者や職員へ不安を与える可能性があるため、早めに準備を進めることが大切です。

事業承継とM&Aの違い

「事業承継」と「M&A」は混同されることがありますが、同じ意味ではありません。

項目事業承継M&A
意味経営を引き継ぐ方法全般第三者へ引き継ぐ方法の一つ
承継先親族・従業員・第三者第三者企業・個人
目的事業の継続事業継続・成長・経営資源の承継

中小企業庁では、事業承継を「親族承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つに分類しています。

介護事業承継の3つの方法

親族承継

子どもや親族へ経営を引き継ぐ方法です。経営理念や事業への想いを引き継ぎやすく、長期間かけて育成できる点が特徴です。

メリット

  • 理念や経営方針を引き継ぎやすい
  • 計画的に後継者を育成できる
  • 社内外から理解を得られやすい場合がある

デメリット

  • 親族に後継者候補がいないケースが増えている
  • 相続・贈与など税務面の検討が必要になる場合がある

従業員承継

役員や施設長など、社内で経験を積んだ従業員へ経営を引き継ぐ方法です。

介護事業では現場を理解している人材が後継者となることで、利用者や職員も安心して承継を受け入れやすい傾向があります。

メリット

  • 現場への理解が深い
  • 利用者・職員との信頼関係を維持しやすい
  • 経営理念を継承しやすい

デメリット

  • 株式取得資金などの課題が生じる場合がある
  • 経営者としての育成期間が必要になる

第三者承継(M&A)

後継者がいない場合や、事業のさらなる成長を目指す場合には、第三者承継(M&A)が選択肢となります。

譲受企業へ事業を引き継ぐことで、利用者へのサービス継続や職員の雇用維持を図りながら、経営者が引退できる可能性があります。中小企業庁でも、後継者不在時の有効な選択肢として紹介されています。

介護事業承継の選び方

どの承継方法が適しているかは、後継者の有無や経営方針によって異なります。

こんなケース向いている承継方法
子どもが経営を希望している親族承継
信頼できる施設長・役員がいる従業員承継
後継者が見つからない第三者承継(M&A)
早期引退を検討している第三者承継(M&A)
地域の介護サービスを残したい3つの方法を比較して検討

介護事業ならではの承継で確認したいポイント

介護事業は一般企業とは異なり、承継時に確認すべき事項が多くあります。

  • 指定・許認可に関する手続き
  • 利用者との契約やサービス継続
  • 管理者・サービス提供責任者などの人員配置
  • 介護報酬の加算取得状況
  • 地域包括支援センターや医療機関との連携
  • 職員への説明と雇用維持

特に指定や届出は、承継方法や法人形態によって必要となる手続きが異なる場合があります。具体的な手続きは所管自治体へ確認しながら進めることが重要です。

介護事業承継の流れ

介護事業承継は、後継者や譲受企業を決めるだけでは完了しません。利用者へのサービスを継続しながら円滑に引き継ぐためには、段階的に準備を進めることが重要です。

① 現状分析を行う

まずは、自社の現状を整理します。

  • 売上・利益などの財務状況
  • 利用者数・稼働率
  • 職員数・資格保有状況
  • 管理者・サービス提供責任者などの配置状況
  • 介護報酬の加算取得状況
  • 設備・建物・送迎車両の状況
  • 地域での評判や紹介ルート

現状を把握することで、自社に適した承継方法や改善すべき課題が見えてきます。

② 承継方法を決定する

現状分析を踏まえ、親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のどれが適しているかを検討します。

例えば、親族に後継者候補がいる場合でも、本人に経営意思があるか、十分な育成期間を確保できるかを確認することが重要です。一方で、後継者がいない場合は、早い段階から第三者承継も選択肢に入れることで、より多くの可能性を比較できます。

③ 後継者または譲受企業を選定する

親族承継や従業員承継では、経営理念や事業方針を共有しながら後継者育成を進めます。

第三者承継では、譲渡価格だけでなく、介護事業への理解や職員・利用者を大切にする姿勢、将来的な事業方針なども重要な判断材料になります。

④ 企業価値を把握する

事業承継では、自社の企業価値を把握することが欠かせません。

介護事業では、売上や利益だけではなく、次のような要素も評価対象になることがあります。

  • 利用者数・稼働率
  • 介護報酬加算の取得状況
  • 管理者や有資格者の配置状況
  • 職員の定着率・離職率
  • 地域での認知度や紹介実績
  • 今後の事業拡大が期待できる立地

企業価値を把握することで、適切な条件で交渉しやすくなり、自社の強みや改善点も明確になります。

⑤ 条件交渉・契約締結

後継者や譲受企業が決まったら、譲渡価格だけでなく、引継ぎ期間や経営者の退任時期、従業員の雇用、利用者対応などについて協議します。

介護事業では、サービスを止めないことが最も重要です。契約締結後も一定期間、旧経営者が引継ぎをサポートするケースもあります。

⑥ 行政手続き・各種届出

介護事業では、指定権者への届出など行政手続きが必要となる場合があります。

必要な手続きは、株式譲渡・事業譲渡などの承継方法や法人形態、サービス種別によって異なります。そのため、事前に所管自治体や専門家へ確認しながら進めることが重要です。

⑦ 利用者・職員への引継ぎ

承継が決まった後は、利用者やご家族、職員、関係機関へ適切なタイミングで説明を行います。

「サービスは継続されるのか」「担当職員は変わるのか」「雇用は維持されるのか」といった不安を解消できるよう、丁寧な情報共有を心掛けましょう。

無料相談・無料簡易査定
「親族承継とM&Aのどちらが自社に適しているのか分からない」「まずは事業価値や相場感だけ知りたい」という方も、お気軽にご相談ください。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい福祉分野に特化した経験をもとに、それぞれの状況に応じた選択肢をご提案します。

介護事業承継で失敗しやすいポイント

準備開始が遅れる

事業承継には、後継者育成や経営改善、関係者との調整など多くの準備が必要です。中小企業庁でも、早い段階から計画的に準備を進めることの重要性が紹介されています。

後継者育成が十分でない

介護現場の経験が豊富でも、経営者として必要な財務・人材・組織運営の知識は別に身につける必要があります。引継ぎ期間を確保し、段階的に経営を学べる環境を整えることが重要です。

利用者・職員への説明不足

情報共有が遅れると、不安から職員の離職や利用者離れにつながる可能性があります。秘密保持とのバランスを取りながら、適切な時期に説明することが大切です。

企業価値を把握しないまま進める

十分な準備をせずに交渉を始めると、自社の価値を正しく伝えられず、納得できる条件で承継できない可能性があります。第三者の視点で企業価値を確認しておくと、交渉も進めやすくなります。

介護事業承継を成功させるポイント

  • できるだけ早い段階から承継を意識する
  • 親族・従業員・第三者承継を比較検討する
  • 介護業界特有の指定・人員配置・加算状況を整理する
  • 企業価値を把握してから承継方法を決める
  • 介護業界に詳しい専門家へ相談する

まとめ

介護事業承継には、親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3つの方法があり、それぞれ適したケースが異なります。

特に介護事業では、経営権だけでなく、利用者へのサービス継続や職員の雇用、指定・許認可、人員配置など、業界特有の確認事項が数多くあります。そのため、自社の状況を整理し、複数の承継方法を比較したうえで進めることが重要です。

また、事業承継は準備を始める時期が早いほど選択肢が広がります。後継者が決まっていない場合でも、第三者承継(M&A)という選択肢がありますので、一人で悩まず専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。中小企業庁でも、親族内承継・従業員承継・M&Aのいずれの場合も、早めの準備と専門家への相談が重要と案内されています。

よくある質問

介護事業承継はいつから準備を始めるべきですか?

事業承継は後継者育成や経営課題の整理などに時間を要するため、できるだけ早い段階から準備を進めることが望ましいとされています。

後継者がいなくても介護事業を引き継ぐことはできますか?

はい。親族や従業員に適任者がいない場合でも、第三者承継(M&A)によって事業を引き継げる可能性があります。

介護事業承継とM&Aは同じ意味ですか?

事業承継は経営を引き継ぐ方法全般を指し、M&Aはその中の第三者承継の一つです。親族承継や従業員承継も事業承継に含まれます。

介護事業ではどのような行政手続きが必要ですか?

必要な届出や手続きは、承継方法や法人形態、サービス種別によって異なります。指定権者への届出等が必要になる場合があるため、事前に所管自治体や専門家へ確認しましょう。

第三者承継(M&A)では職員の雇用は維持されますか?

個別の契約内容によりますが、多くのケースでは事業継続を前提に職員の雇用維持が検討されます。具体的な条件は譲受企業との協議によって決まります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・法務・会計・行政手続きに関する個別の助言を行うものではありません。具体的な手続きについては、税理士・弁護士・行政書士などの専門家や所管行政機関へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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