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歯科M&Aの流れ・進め方|売却手順を解説

歯科医院のM&Aは、「売却を決めたらすぐ契約する」というものではありません。相談・準備から買い手探し、契約、そして保険医療機関の引き継ぎまで、複数の工程を順番に進める必要があります。

特に歯科医院では、一般企業のM&Aにはない行政手続きや保険医療機関の指定に関する対応も重要です。事前に全体の流れを理解しておくことで、スムーズな承継につながります。

この記事では、歯科医院M&Aの流れを時系列で分かりやすく解説するとともに、各段階で院長が準備しておきたいことや注意点についても紹介します。

歯科医院売却の流れ|まずは全体像を把握しよう

歯科医院M&Aは、一般的に次の流れで進みます。

STEP内容目的
STEP1相談・売却準備売却方針を整理する
STEP2買い手探し・マッチング承継先を見つける
STEP3基本合意・デューデリジェンス条件やリスクを確認する
STEP4最終契約・クロージング正式に譲渡する
STEP5行政手続き・保険医療機関の引き継ぎ保険診療を継続する
STEP6スタッフ・患者への引き継ぎ円滑な事業承継を行う

M&Aに要する期間は、医院の規模や買い手との交渉状況、行政手続きなどによって異なります。比較的短期間で成約するケースもあれば、慎重な調整を重ねることで長期間となるケースもあります。そのため、引退時期が決まっている場合は、余裕を持って準備を始めることが大切です。

まずは全体像を理解することが重要

「何から始めればいいのか分からない」という院長は少なくありません。

しかし、最初から売却を決断している必要はありません。

まずは現在の医院の状況を整理し、どのような承継方法があるのかを把握することが第一歩です。

院長が最初に整理しておきたいこと

  • いつ頃まで診療を続けたいか
  • 後継者候補の有無
  • スタッフの雇用をどう考えるか
  • 地域医療をどのように引き継ぎたいか
  • 売却後も勤務を希望するか

これらを整理しておくことで、自院に合った承継方法を検討しやすくなります。

歯科医院売却の流れ① 相談・売却準備

売却目的を整理する

歯科医院M&Aでは、「なぜ売却したいのか」を明確にすることが重要です。

  • 後継者がいない
  • 高齢のため引退したい
  • 経営負担を軽減したい
  • 地域医療を次世代へ引き継ぎたい
  • スタッフの雇用を守りたい

目的によって、選ぶべき買い手や契約条件は変わります。

M&A仲介会社へ相談する

目的が整理できたら、医療業界や歯科医院の承継に詳しいM&A仲介会社へ相談します。

相談時点では売却を決めている必要はありません。

医院の現状や希望を共有することで、売却以外の選択肢も含めた提案を受けられる場合があります。

相談前に準備しておきたい資料

  • 決算書
  • 確定申告書
  • 医院概要
  • スタッフ構成
  • 医療機器一覧
  • 賃貸借契約書
  • 診療内容

この段階で院長がやること

  • 売却理由を整理する
  • 希望する引退時期を考える
  • 医院資料をまとめる
  • 専門家へ相談する

歯科医院売却の流れ② 買い手探し・マッチング

ノンネームシートを作成する

医院名を伏せた概要資料(ノンネームシート)を作成し、買い手候補へ案内します。

所在地や診療科目、売上規模などは記載しますが、医院名や院長名など特定につながる情報は掲載しません。

これにより、スタッフや患者へ情報が広がるリスクを抑えながら買い手を探すことができます。

秘密保持契約(NDA)を締結する

詳細資料を開示する前に、買い手候補とは秘密保持契約(NDA)を締結します。

医院の経営情報や患者数、スタッフ情報などは重要な情報です。秘密保持契約を締結したうえで交渉を進めることで、情報漏えいのリスクを抑えやすくなります。

トップ面談を行う

条件が合いそうな買い手とは、院長同士で面談を行います。

譲渡価格だけでなく、医院理念や診療方針、スタッフの雇用継続などについても確認することが重要です。

この段階で院長がやること

  • 買い手候補との面談
  • 承継後の診療方針を確認する
  • スタッフの雇用条件を整理する

歯科医院売却の流れ③ 基本合意・デューデリジェンス

基本合意書を締結する

条件がおおむねまとまると、基本合意書を締結します。

ここでは譲渡価格や独占交渉期間、今後のスケジュールなどを整理します。

なお、この時点で最終契約が成立するわけではありません。

デューデリジェンス(DD)とは

デューデリジェンス(DD)は、買い手が医院の状況を詳細に調査する工程です。

  • 財務状況
  • 診療実績
  • 医療機器
  • スタッフとの契約
  • 賃貸借契約
  • 法令遵守状況

想定外のリスクが見つかった場合には、価格や契約条件が見直されることもあります。そのため、事前に資料を整理し、正確な情報を共有することが重要です。

この段階で院長がやること

  • DDで求められる資料を準備する
  • 質問事項へ回答する
  • 契約内容を確認する

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「自院がどのくらいの評価になるのか知りたい」「まだ売却を決めてはいないが相場感を把握したい」という場合は、早めに専門家へ相談することも選択肢の一つです。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい分野に特化したM&A成約実績を持つメンバーが、着手金・中間金無料の完全成功報酬制でご相談を承っています。

歯科医院売却の流れ④ 最終契約・クロージング

最終譲渡契約を締結する

デューデリジェンス(DD)の結果を踏まえ、双方が最終的な条件に合意すると、譲渡契約を締結します。

契約書には、譲渡価格だけでなく、引き渡し日や譲渡対象となる資産・設備、スタッフの雇用、競業避止義務など、承継後の運営に関わる内容が盛り込まれます。

締結後に契約内容を変更することは容易ではありません。疑問点は契約前に確認し、必要に応じて弁護士や税理士などの専門家へ相談しながら進めましょう。

クロージングで医院を引き継ぐ

契約締結後は、譲渡代金の決済と医院の引き渡し(クロージング)を行います。

この段階では、診療設備や備品、電子カルテ、賃貸借契約など、契約で定められた資産や権利を引き継ぎます。

個人開設の歯科医院では、資産や契約を個別に引き継ぐ「事業譲渡」が一般的です。

一方、医療法人では承継方法が異なる場合があります。開設形態によって必要な手続きが変わるため、事前に確認しておきましょう。

この段階で院長がやること

  • 契約内容を最終確認する
  • 譲渡対象資産を整理する
  • 引き渡しスケジュールを確認する
  • 関係者との役割分担を整理する

歯科医院売却の流れ⑤ 保険医療機関・行政手続きの引き継ぎ

歯科医院M&Aでは、契約が終わればすべて完了するわけではありません。

保険診療を継続するためには、保険医療機関の指定や各種行政手続きが必要になります。一般企業のM&Aとは異なる重要な工程です。

個人開設と医療法人では手続きが異なる

開設形態主な手続き
個人開設保健所への届出、地方厚生局への保険医療機関指定申請など
医療法人法人関連の変更手続き、届出など

必要となる手続きは、開設形態や地域、案件内容によって異なります。実際の届出については、管轄の保健所や地方厚生局へ確認しながら進めることが重要です。

保健所への届出

個人開設の歯科医院では、旧開設者による廃止届や、新たな開設者による開設届などが必要になる場合があります。

また、エックス線装置などを設置している場合には、関連する届出が必要となるケースもあります。

必要書類や提出期限は自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

地方厚生局での保険医療機関指定

保険診療を継続するためには、地方厚生局への指定申請が必要です。

新たに保険医療機関の指定を受ける場合は、通常は申請後に指定日が決まりますが、一定の要件を満たす場合には、例外的に遡及指定が認められることがあります。制度の適用には事前相談や必要書類の提出などが求められるため、最新の運用を確認しながら進めることが重要です。

その他の届出も確認する

医院によっては、公費負担医療や施設基準、労災指定医療機関などに関する届出が必要になる場合もあります。

届出漏れがあると診療へ影響する可能性もあるため、チェックリストを作成しながら進めると安心です。

この段階で院長がやること

  • 保健所への届出内容を確認する
  • 地方厚生局へ事前相談する
  • 必要書類を準備する
  • 行政手続きのスケジュールを確認する

歯科医院売却の流れ⑥ スタッフ・患者への引き継ぎ

スタッフへの説明はタイミングが重要

スタッフへの説明はタイミングが重要です。

早すぎると情報漏えいにつながる可能性があり、遅すぎると不安を与えてしまうことがあります。

一般的には、契約条件や承継時期がある程度固まった段階で、買い手と説明方法を調整しながら進めます。

患者への案内も忘れずに

患者にとって重要なのは、「これまでどおり診療を受けられるか」という点です。

  • 診療体制は継続すること
  • 予約方法の変更有無
  • 担当医の変更有無
  • 問い合わせ先

こうした内容を丁寧に伝えることで、不安の軽減につながります。

院長が一定期間残るケースもある

承継後すぐに退任するのではなく、一定期間勤務医として残り、患者やスタッフへの引き継ぎを行うケースもあります。

このような対応は、地域医療の継続や患者との信頼関係を維持することにつながる可能性があります。

この段階で院長がやること

  • スタッフへの説明時期を調整する
  • 患者への案内方法を決める
  • 引き継ぎ期間を買い手と相談する

まとめ

歯科医院M&Aは、相談・準備から契約、保険医療機関の引き継ぎ、スタッフ・患者への説明まで、複数の工程を計画的に進めることが大切です。

特に行政手続きは、開設形態や地域によって必要となる内容が異なる場合があります。余裕を持って準備を進めることで、円滑な事業承継や地域医療の継続につながる可能性があります。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務・行政手続きについて助言するものではありません。実際の手続きについては、管轄の行政機関や専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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