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赤字 介護事業 売却|再生型M&Aという選択肢

「赤字が続いているため、介護事業の売却は難しいのではないか」「借入も多く、廃業するしかないのだろうか」と悩む経営者は少なくありません。しかし、介護事業のM&Aでは、赤字という事実だけで売却の可否が決まるわけではありません。買い手は現在の利益だけでなく、利用者や職員、立地、事業の将来性などを総合的に評価します。本記事では、赤字・債務超過でも売却できるケースや再生型M&Aの考え方、廃業との違い、売却成功のポイントを分かりやすく解説します。

赤字の介護事業でも売却できる可能性はある

結論からいうと、赤字の介護事業でも売却できる可能性はあります。

介護業界では、高齢化に伴う介護ニーズの増加や、新規事業所の立ち上げに必要な人材・利用者確保の難しさから、既存事業を引き継ぐ形で事業拡大を目指す法人も少なくありません。そのため、現在の利益だけではなく、「引き継いだ後に改善できる事業かどうか」が重要な判断材料になります。

実際にM&Aでは、赤字企業の譲渡や事業再生を目的とした案件も行われています。また、中小企業庁では経営改善や事業再生を支援する「中小企業活性化協議会」を設置しており、事業継続を前提とした支援体制も整備されています。

「赤字」「債務超過」「資金繰り悪化」はそれぞれ意味が異なる

「赤字だから売れない」と考えてしまう経営者は多いですが、まずはそれぞれの違いを理解することが重要です。

状態内容M&Aへの影響
赤字一定期間の利益がマイナス改善余地があれば譲渡可能性あり
債務超過負債が資産を上回る状態事業価値によっては譲渡可能
資金繰り悪化現金不足で支払いが厳しい状態早期相談が重要

例えば、新規開設時の設備投資や採用費が先行した結果、一時的に赤字となっているケースでは、将来的な黒字化を見込んで買収を検討する法人もあります。一方、資金繰りが極端に悪化してからでは選択肢が限られるため、早めの相談が重要です。

買い手は利益以外も評価している

介護事業のM&Aでは、買い手は単純に利益だけを見て判断しているわけではありません。むしろ、既存事業との相乗効果(シナジー)が期待できるかどうかを重視するケースが多くあります。

評価項目買い手が重視する理由
利用者数・稼働率売上の安定性を判断できるため
職員の定着率採用コストを抑えられるため
立地既存施設との連携が期待できるため
サービス指定新規開設より早く事業展開できるため
地域での信頼事業継続しやすいため

特に介護業界では、人材不足が慢性化していることから、経験豊富な職員が在籍している事業所は大きな魅力となる場合があります。

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介護事業で買い手が評価するポイント

介護事業のM&Aでは、「赤字かどうか」よりも「引き継いだ後に改善できるか」が重視されます。そのため、次のようなポイントが総合的に評価されます。

利用者数・稼働率

利用者数が安定している事業所は、将来の収益予測が立てやすいため評価されやすくなります。定員に対する稼働率だけでなく、利用者の継続率や地域からの紹介状況なども確認されることがあります。

職員の定着状況

介護人材の確保は業界全体の課題です。介護福祉士やサービス提供責任者など、経験豊富な職員が継続勤務していることは、買い手にとって大きな価値になります。

立地・商圏

人口構成や競合施設の状況、既存施設との距離なども重要な評価項目です。同一エリアで複数施設を運営する「ドミナント戦略」を採る法人では、近隣施設の取得を積極的に検討するケースもあります。

指定・許認可の状況

介護サービスは指定事業であるため、行政からの指定や更新状況も重要です。重大な行政処分や指定取消リスクがないかについては、買い手が必ず確認します。

赤字でも売却しやすいケース・難しいケース

赤字の介護事業と一口にいっても、すべてが同じように評価されるわけではありません。買い手は「なぜ赤字なのか」「改善できる要因はあるか」を重視します。

売却しやすいケース

次のようなケースでは、赤字であっても譲渡できる可能性があります。

  • 新規開設直後で利用者数が増加途中にある
  • 一時的な設備投資や採用費によって利益が圧迫されている
  • 利用者数は安定しているが、本部経費などが重く利益が出ていない
  • 経験豊富な職員が定着している
  • 地域ニーズが高く、今後の利用者増加が期待できる

例えば、介護報酬改定や人件費の上昇によって一時的に赤字となっているケースでも、運営方法の見直しやスケールメリットによって改善できると買い手が判断すれば、M&Aが成立することがあります。

売却が難しいケース

一方で、次のようなケースでは慎重な判断が必要です。

  • 利用者数が長期間減少し続けている
  • 慢性的な職員不足によりサービス提供が困難になっている
  • 重大な行政処分や指定取消リスクがある
  • 不正請求や法令違反が判明している
  • 簿外債務や訴訟リスクなど、買い手が把握しにくい問題を抱えている

このようなケースでは、売却が不可能というわけではありませんが、条件調整や追加の調査が必要となることがあります。重要なのは、問題を隠すのではなく、早い段階で専門家へ相談し、適切な対応策を検討することです。

再生型M&Aとは

「赤字だから廃業しかない」と考えてしまう経営者もいますが、近年では再生型M&Aという選択肢が注目されています。

再生型M&Aとは、財務面に課題を抱える企業でも、事業そのものに価値がある場合に、買い手の資金力や経営ノウハウを活用して事業の継続を目指す手法です。

通常のM&Aとの違い

項目通常のM&A再生型M&A
対象企業黒字・成長企業が中心赤字・債務超過企業も対象
目的事業拡大・成長事業再生・事業継続
重視される点現在の収益力将来の改善可能性

介護事業では、地域に根付いた利用者基盤や職員体制などが評価され、現在は赤字でも将来的な収益改善が期待できる場合があります。

スポンサー型M&Aという考え方

再生型M&Aでは、スポンサー企業が事業を引き継ぎ、経営改善を図るケースがあります。

例えば、複数の介護施設を運営する法人であれば、人材配置の最適化や本部機能の統合、購買コストの削減などにより、単独では赤字だった事業所でも収益改善が見込める場合があります。

また、中小企業活性化協議会では、収益力改善・事業再生・再チャレンジに向けた支援を行っており、必要に応じて金融機関や専門家と連携しながら再生計画の策定を支援しています。経営状況によっては、こうした公的支援とM&Aを組み合わせて検討するケースもあります。

再生型M&Aが向いているケース

  • 利用者数や地域ニーズは維持できている
  • 人材は確保できているが財務面に課題がある
  • 後継者不在と経営悪化が重なっている
  • 借入負担が重く、単独での改善が難しい

このようなケースでは、廃業だけでなく再生型M&Aという選択肢も視野に入れることで、利用者や職員への影響を抑えながら事業を承継できる可能性があります。

廃業とM&Aはどちらを選ぶべき?

経営が厳しくなると、「廃業するべきか、それとも売却を目指すべきか」で悩む経営者は少なくありません。それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。

比較項目廃業M&A
利用者他事業所への移行が必要継続利用できる可能性がある
職員退職となる場合が多い雇用継続の可能性がある
設備・備品処分・売却が必要そのまま引き継げる場合がある
譲渡対価原則なし受け取れる可能性がある

もちろん、すべての事業がM&Aに適しているわけではありません。しかし、廃業を決断した後では選択肢が大きく狭まるため、まずは売却可能性を確認したうえで判断することをおすすめします。

売却成功率を高めるために経営者ができること

赤字の介護事業でも、売却に向けた準備を進めることで、買い手からの評価が高まる可能性があります。重要なのは、経営が行き詰まってから動くのではなく、「まだ選択肢がある段階」で準備を始めることです。

決算書や運営資料を整理しておく

買い手は決算書だけではなく、利用者数の推移、介護報酬の実績、人員配置、賃貸借契約、設備の状況なども確認します。必要書類を整理しておくことで、デューデリジェンス(買収監査)がスムーズに進み、買い手の安心感にもつながります。

利用者・職員の維持を最優先にする

介護事業の価値は、建物や設備だけではありません。継続して利用する利用者や、経験を積んだ職員がいることが大きな価値になります。売却を検討している間も、サービス品質を維持し、離職や利用者減少を防ぐ取り組みが重要です。

資金繰りが悪化する前に相談する

資金繰りが限界に近づいてからでは、買い手探しや交渉に十分な時間を確保できない場合があります。中小企業活性化協議会でも「事業再生は早期相談が重要」と案内されています。赤字が続いている段階でも、早めに専門家へ相談することで、より多くの選択肢を検討できます。

まとめ

赤字や債務超過だからといって、介護事業の売却を諦める必要はありません。

  • 赤字でも将来性が評価されれば売却できる可能性がある
  • 買い手は利益だけでなく、人材・利用者・立地・指定なども評価している
  • 再生型M&Aによって事業を継続できるケースもある
  • 廃業を決断する前に売却可能性を確認することが重要
  • 経営状況が悪化する前に相談するほど選択肢は広がりやすい

介護事業は地域の利用者や職員の生活を支える社会的な役割を担っています。「赤字だから終わり」と決めつけるのではなく、事業を未来につなぐ方法としてM&Aを検討することも一つの選択肢です。

よくある質問

赤字でも介護事業を売却できますか?

はい。赤字だけを理由に売却できないとは限りません。利用者数や職員体制、立地、今後の改善可能性などを総合的に評価して判断されます。

債務超過でもM&Aは可能ですか?

可能なケースがあります。事業価値や将来性、買い手との相乗効果などを踏まえて検討されます。

赤字だと売却価格はゼロになりますか?

必ずしもそうではありません。将来の収益改善が期待できる場合には、譲渡対価が設定されるケースもあります。

職員や利用者にはいつ伝えるべきですか?

一般的には、基本合意や最終契約などの進捗を踏まえ、専門家と相談しながら適切なタイミングで説明することが望ましいとされています。

相談だけでも利用できますか?

はい。売却を決めていない段階でも、事業価値や市場動向を確認する目的で相談することが可能です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務・会計・行政手続きに関する助言を行うものではありません。具体的な判断については、税理士・弁護士などの専門家へご相談ください。

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松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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