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医療法人の売却|出資持分あり・なしの違いを解説

医療法人の売却を検討しているものの、「出資持分あり・なしで何が違うのか」「自院ではどのM&Aスキームを選べるのか」と疑問を抱く経営者は少なくありません。医療法人は株式会社とは制度が異なるため、一般企業のような株式譲渡を前提に考えることはできません。まずは自院の法人形態を確認し、それに応じた承継方法を理解することが重要です。本記事では、出資持分あり・なしによる違いを整理し、それぞれで採用される代表的な医療法人M&Aのスキームや注意点を分かりやすく解説します。

医療法人の売却は「出資持分あり・なし」でスキームが変わる

医療法人M&Aでは、「出資持分あり」と「出資持分なし」の違いを理解することが最初のポイントです。

法人形態によって承継方法や手続きが変わるため、売却を検討する際は、まず自院がどちらに該当するのかを確認しましょう。

医療法人は株式会社とは売却方法が異なる

株式会社では、株式を譲渡することで経営権を引き継ぐ「株式譲渡」が代表的なM&A手法です。

一方、医療法人には株式会社のような株式制度はありません。

そのため、医療法人M&Aでは、社員変更や理事・理事長の交代、出資持分の承継(持分あり医療法人の場合)などを組み合わせながら、経営権を引き継ぐケースが一般的です。法人の種類や定款、社員構成によって実際の承継方法は異なります。

まずは自院が「持分あり」か「持分なし」か確認しよう

医療法人の売却では、自院の法人形態を把握することが重要です。

確認項目持分あり持分なし
出資持分ありなし
払戻請求権ありなし
経営権承継持分・社員・役員を総合的に検討社員・役員変更が中心
実務上のポイント権利関係の整理社員構成の整理

平成18年医療法改正により、2007年4月以降に新たに設立される社団医療法人は、原則として「持分の定めのない医療法人」となりました。

一方、それ以前に設立された持分あり医療法人は、経過措置医療法人として現在も存続しています。

売却前セルフチェック

売却を検討し始めたら、まずは次の3点を確認してみましょう。

  • 自院は「持分あり」「持分なし」のどちらか
  • 社員は誰が就任しているか
  • 理事・理事長の交代が可能な体制になっているか

この3点を把握しておくだけでも、相談時にスムーズに状況を整理できます。

出資持分あり医療法人で使われる主な売却スキーム

出資持分あり医療法人では、「出資持分を譲渡すれば売却が完了する」と考えられがちですが、実際にはそれだけでは十分ではありません。

実務では、出資持分の承継に加えて、社員の変更や理事・理事長の交代などを組み合わせながら経営権を引き継ぐケースが一般的です。

出資持分の承継

持分あり医療法人では、出資持分の承継は重要な要素の一つです。

ただし、出資持分は財産権に関する概念であり、持分を承継しただけで経営権が完全に移転するとは限りません。

社員資格や役員構成、定款の内容も確認しながら承継方法を設計することが重要です。

社員変更・理事変更を組み合わせるケース

実際の医療法人M&Aでは、出資持分の承継だけでなく、社員変更や理事・理事長の交代を組み合わせて経営権を引き継ぐケースが多く見られます。

これは、医療法人が株式会社とは異なる非営利法人であり、法人運営に社員総会や理事会が大きく関わるためです。

向いているケース

  • 出資者が少人数である
  • 社員構成が整理されている
  • 後継者候補が決まっている
  • 定款内容を事前に確認できる

反対に、相続によって出資者が増えている場合や、社員構成が不明確な場合は、承継に時間を要することもあります。

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出資持分なし医療法人で使われる主な売却スキーム

持分なし医療法人では、出資持分という概念がないため、社員変更や理事・理事長の交代を中心に経営権を承継します。

出資持分なし医療法人で使われる主な売却スキーム

持分なし医療法人では、出資持分そのものが存在しないため、持分譲渡による承継はできません。

そのため、実務では社員の変更と理事・理事長の交代を組み合わせ、法人格を維持したまま経営権を引き継ぐ方法が一般的です。法人の状況によっては、事業譲渡や合併などのスキームを検討するケースもあります。

社員変更による承継

持分なし医療法人では、社員の交代が承継の中心となります。

医療法人の「社員」は会社員ではなく、社員総会で議決権を持つ構成員です。株式会社の株主とは役割が異なりますが、法人運営に大きな影響を与える存在であるため、M&Aでは社員構成の見直しが重要になります。

理事・理事長の交代

社員変更と並行して、理事・理事長の交代を行うことで経営権を引き継ぎます。

医療法人の理事長は、原則として医師または歯科医師が就任します(一部例外あり)。承継後は役員変更登記や行政への届出なども必要となるため、スケジュールを見据えて準備することが大切です。

事業譲渡

法人そのものではなく、診療所や病院の事業のみを引き継ぐ方法です。

設備や契約、従業員などを個別に承継するため、一部事業のみを譲渡したい場合に選択されることがあります。一方で、契約ごとに承継手続きが必要となる場合もあるため、事前の確認が欠かせません。

医療法人M&Aで採用される代表的なスキームを比較

医療法人M&Aでは、法人形態や承継目的によって採用されるスキームが異なります。

スキーム概要主な対象特徴
出資持分承継出資持分を承継する持分あり医療法人社員・役員変更を組み合わせることが多い
社員変更社員を入れ替えて経営権を承継持分なし医療法人最も一般的な方法の一つ
理事・理事長交代役員体制を変更する両法人経営権承継で併用される
事業譲渡事業のみを譲渡する両法人一部事業のみ承継したい場合
合併法人同士を統合する医療法人同士グループ再編などで活用
分割【要確認】事業の一部を承継する要件を満たす医療法人適用条件の確認が必要

なお、分割制度は医療法に規定されていますが、適用要件や利用できる法人形態には条件があります。そのため、実際に利用できるかどうかは個別に確認する必要があります。

出資持分あり・なしの違いを比較

比較項目持分あり持分なし
出資持分あるない
財産権あるない
代表的な承継方法出資持分承継+社員変更+役員変更社員変更+役員変更
主な確認事項出資者・社員・定款社員・理事・定款
注意点権利関係の整理社員構成の整理

「持分ありの方が売却しやすい」「持分なしでは売却できない」といった考え方は正確ではありません。

重要なのは、法人形態に応じて適切なスキームを設計することです。どちらの法人形態でも、事前準備を行うことで円滑な第三者承継につながる可能性があります。

医療法人売却の流れ

医療法人M&Aは、一般的に次の流れで進みます。

  1. 無料相談・現状整理
  2. 企業価値評価・売却方針の検討
  3. 買い手候補の選定・交渉
  4. 基本合意・デューデリジェンス
  5. 最終契約・クロージング・行政手続き

案件によって進め方は異なりますが、早い段階から法人形態や定款、社員構成などを確認しておくことで、スムーズに準備を進めやすくなります。

医療法人売却で失敗しないためのポイント

① 法人形態を確認する

持分あり・持分なしの違いは、承継方法に大きく影響します。まずは定款などで法人形態を確認しましょう。

② 定款・社員構成を整理する

社員の選任方法や議決要件は定款で定められています。事前に確認しておくことで、承継手続きを進めやすくなります。

③ 行政手続きを見据えて準備する

役員変更や登記、都道府県への届出など、契約後にも必要な手続きがあります。全体のスケジュールを見据えて準備を進めることが重要です。

④ 専門家へ早めに相談する

医療法人M&Aでは、医療法・税務・法務・行政手続きが複雑に関係します。売却を決めていない段階でも相談することで、選択肢を把握しやすくなります。

まとめ

医療法人の売却では、まず「出資持分あり」と「出資持分なし」のどちらに該当するかを確認することが重要です。

株式会社とは異なり、医療法人には株式制度がないため、出資持分の承継だけでなく、社員変更や理事・理事長の交代などを組み合わせながら経営権を承継するケースが多く見られます。また、法人の種類や定款、社員構成によって採用できるスキームは異なるため、「どの方法が使えるか」ではなく、「自院に適した方法は何か」という視点で検討することが大切です。医療法人制度は医療法に基づいて運用されており、手続きや届出も含めた総合的な検討が求められます。

後継者不在や将来的な経営に不安を感じている場合は、早めに情報収集を始めることで選択肢を広げやすくなります。

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よくある質問(FAQ)

Q. 出資持分なし医療法人でも第三者へ承継できますか?

はい。持分なし医療法人でも、社員変更や理事・理事長の交代などを組み合わせることで第三者承継が行われています。法人の状況や定款の内容によって適切な方法は異なります。

Q. 出資持分あり医療法人の方が売却しやすいのでしょうか?

一概にはいえません。持分あり医療法人では出資持分の整理が必要になる一方、持分なし医療法人では社員構成や役員体制の整理が重要になります。それぞれに確認すべきポイントがあります。

Q. 医療法人でも株式会社のような株式譲渡はできますか?

できません。医療法人には株式制度がないため、株式会社の株式譲渡とは異なる承継方法を採用します。医療法や定款に基づき、社員や役員の変更などを進めることになります。

Q. 売却前に確認しておくべきことは何ですか?

出資持分の有無、定款、社員構成、役員構成、行政への届出事項などを整理しておくと、その後の検討が進めやすくなります。

Q. 売却をまだ決めていなくても相談できますか?

もちろん可能です。売却の可否を判断する前に、現在の状況整理や相場の目安を把握するための相談から始める方も多くいらっしゃいます。

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の税務・法務・会計・行政手続きに関する助言を行うものではありません。制度改正や各都道府県の運用により取扱いが異なる場合があります。実際のM&Aや事業承継をご検討の際は、最新の法令・行政通知をご確認のうえ、弁護士・税理士・公認会計士などの専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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