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訪問入浴の売却・M&A|価格相場と流れを解説

訪問入浴介護事業は、後継者不足や人材確保、車両・設備の更新負担などを背景に、M&Aによる第三者承継を検討できます。売却価格は利益だけで決まるものではなく、看護・介護職員、利用者基盤、紹介網、訪問効率、設備の状態なども重要です。本記事では、訪問入浴の売却・M&Aで買い手が確認するポイント、価格の考え方、注意点、売却の流れをわかりやすく解説します。

訪問入浴介護事業は売却・M&Aできる

訪問入浴介護事業は、株式譲渡や事業譲渡などによって第三者へ承継することが可能です。後継者がいない場合だけでなく、人員確保が難しくなった場合や、経営者が現場管理から退きたい場合、他の介護事業へ経営資源を集中したい場合などにもM&Aが選択肢となります。

訪問入浴介護とは

訪問入浴介護は、利用者の居宅で入浴を支援し、身体の清潔保持や心身機能の維持等を図る介護保険サービスです。指定基準では、事業所ごとに看護師または准看護師1人以上、介護職員2人以上を置き、訪問入浴介護従業者のうち1人以上を常勤とすることが求められています。さらに管理者についても、原則として専らその職務に従事する常勤の管理者を置く必要があります。

1回のサービス提供は、原則として看護職員1人と介護職員2人で行います。ただし、利用者の身体状況が安定していることなどから支障がないと認められ、主治医の意見を確認した場合には、看護職員に代えて介護職員を充てることができます。

設備基準では、事業運営に必要な専用区画のほか、サービス提供に必要な浴槽等の設備・備品を備えることが求められています。なお、「入浴車そのもの」が省令上の必須設備として明記されているわけではありませんが、実際の訪問入浴事業では車両や給排水機器等が事業運営やM&A後の設備投資に大きく関わります。

訪問入浴介護事業所は減少傾向

厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査」によると、2024年10月1日時点の訪問入浴介護事業所は1,641事業所で、前年の1,665事業所から24事業所、1.4%減少しました。2026年8月時点で確認できる厚生労働省の最新公表概況では、この2024年調査が最新値です。

事業所数が減少していることだけを理由にM&A需要が高いと断定することはできません。ただし、人員や利用者、営業エリアなどを一から構築するより、既存事業を承継する方が買い手の事業戦略に合うケースはあります。

訪問入浴の売却を検討する主なケース

  • 経営者が高齢となり、後継者が決まっていない
  • 看護職員・介護職員の採用や定着が難しくなっている
  • 車両や浴槽、関連設備の修繕・更新負担が大きい
  • 利用者数や月間訪問件数が減少している
  • 訪問介護や施設事業など別の事業へ集中したい
  • 赤字が続き、廃業とM&Aの双方を検討している

廃業を決める前にM&Aを検討する意味

廃業する場合、利用者の受け入れ先調整、従業員への対応、車両や設備の処分などが必要です。一方、M&Aでは条件が整えば、人員、利用者との関係、設備、地域の営業基盤などをまとめて承継できる可能性があります。

比較項目廃業M&A
利用者他事業所への移行調整が必要サービスを継続できる可能性がある
従業員雇用終了となる場合がある雇用継続を交渉できる
設備売却・廃棄等を検討譲渡対象にできる場合がある
営業基盤原則として終了買い手が承継できる場合がある
経営者廃業費用が生じる場合がある条件次第で譲渡対価を得られる

訪問入浴介護事業の売却価格・相場はどう決まる?

訪問入浴介護に一律の売却相場はない

訪問入浴介護事業について、公的機関が示す「売上の○倍」「利益の○年分」といった一律の売却相場は確認できません。公開されているM&A案件の希望価格があっても、それは成約価格とは限らないため、そのまま自社の相場として使用するのは適切ではありません。

実際の査定では、財務状況に加えて、人員、利用者、紹介経路、営業エリア、設備の状態、将来必要となる投資などを確認し、個別に企業価値・事業価値を検討します。

企業価値・株式価値・事業価値の違いについては、関連記事「企業価値・株式価値・事業価値の違い」への内部リンクを設置すると理解しやすくなります。

訪問入浴の売却価格を左右する主な項目

評価項目買い手が確認する内容
収益売上、営業利益、直近の増減、固定費
利用状況利用者数、月間訪問件数、新規・終了件数
人員資格、勤続年数、雇用形態、退職予定、管理者
紹介経路居宅介護支援事業所等からの紹介状況
訪問効率営業エリア、移動時間、1日当たり訪問件数
設備車両、浴槽、給排水機器等の状態と更新予定
コンプライアンス人員基準、報酬請求、行政指導、自主返還等

買い手が見る訪問入浴ならではの事業価値

1.看護職員・介護職員を安定して確保できているか

訪問入浴では、サービス提供に複数の職員が必要です。指定基準だけを満たしているかではなく、M&A後も勤務を継続できる人員がどれだけいるかが重要になります。

特に、管理者や特定の看護職員が退職するとシフトを組めなくなるなど、少数のキーパーソンに依存している場合は承継リスクとなります。職員数だけではなく、常勤・非常勤構成、資格、勤続年数、業務分担まで整理しておきましょう。

2.利用者基盤と紹介経路が再現できるか

買い手が知りたいのは「現在何人利用しているか」だけではありません。既存利用者の終了後も新規利用につながる仕組みがあるかが重要です。

居宅介護支援事業所などの紹介元別に、新規相談や利用開始の実績を整理しておくと、事業基盤を説明しやすくなります。特定の紹介元に大きく依存している場合は、M&A後もその関係を維持できるかが確認ポイントになります。

3.訪問ルートに無理がないか

同じ月間100件の訪問でも、狭いエリアを効率良く回れる事業所と、長距離移動が多い事業所では、人件費や燃料費、車両負担が異なります。

売却準備では、「月間訪問件数」だけでなく、「1日当たり訪問件数」「主な営業エリア」「平均的な移動時間」なども整理すると、買い手が承継後の運営をイメージしやすくなります。

4.車両・設備の更新費用がどの程度か

車両や浴槽等が老朽化していれば、買い手は買収価格だけでなく、M&A後に必要な設備投資も考慮します。

車両台数、車齢、走行距離、車検、修繕履歴、浴槽や給排水関連機器の購入時期などを一覧化しておくと、将来費用を判断しやすくなります。

買い手が承継後の収益を確認する4つの指標

訪問入浴介護のM&Aでは、単年度の利益だけではなく、「現在の収益を新しい経営者でも再現できるか」という視点が重要です。売り手側でも、次の4項目を整理しておくと事業の強みと弱みを説明しやすくなります。

  1. 1日当たり訪問件数:職員・車両がどの程度効率的に稼働しているか
  2. 紹介元の集中度:特定の居宅介護支援事業所等への依存が大きくないか
  3. キーパーソン依存度:経営者や特定職員が抜けても運営できるか
  4. 設備更新予定:数年以内に大きな車両・機器投資が必要か

利益が同じ2つの事業所であっても、こうした承継リスクの違いによって買い手の評価は変わる可能性があります。

2026年度の介護報酬も売却前に確認する

令和8年6月改定後の厚生労働省「介護報酬の算定構造」では、訪問入浴介護費の基本部分は1回1,266単位です。これは令和6年度改定で設定された基本報酬が現在も続いているものです。

一方、2026年度には令和9年度の介護報酬改定を待たず期中改定が行われ、介護職員等処遇改善加算が拡充されました。訪問入浴介護についても、2026年6月から新しい加算区分・加算率が適用されています。

M&Aの財務調査では、過去の決算数値だけでなく、売却時点で取得している加算、算定要件、今後の人件費への影響も確認する必要があります。

訪問入浴介護を売却する前の注意点

株式譲渡と事業譲渡では引継ぎ方が異なる

項目株式譲渡事業譲渡
法人法人自体は原則継続対象事業を買い手へ移転
資産・負債原則法人内に残る譲渡対象を個別に決める
従業員雇用主である法人は原則同じ労働契約承継について個別対応が必要
契約原則法人に残る契約ごとの確認が必要
介護事業者指定変更届等の要否を確認新規指定等が必要となる場合がある【要確認】

事業譲渡では職員の同意が重要

厚生労働省の事業譲渡等指針は2026年5月25日から改正後の内容が適用されています。事業譲渡によって雇用主が変わる場合、労働契約の承継には個々の労働者から承諾を得る必要があります。

「従業員もまとめて売却できる」と考えるのではなく、雇用条件や今後の勤務について適切な時期に説明し、承継手続きを進めることが重要です。

指定手続きは管轄自治体へ早めに確認する

事業譲渡の場合、介護事業者指定について廃止・新規指定等の手続きが必要となるケースがあります。手続き方法や期限は指定権者によって異なるため、個別確認が必要です。

例えば横浜市では、事業譲渡および吸収合併・分割による廃止・新規の場合、事業開始予定月の3か月前の月末までに相談するよう案内しています。これは横浜市の取扱いであり、全国一律の期限ではありません。

職員への情報開示はタイミングを決めておく

M&Aの初期段階から情報を広げると、情報漏えいや職員の不安につながる可能性があります。一方、承継直前になって突然説明すると、買い手に対する不信感を招くこともあります。

誰に、いつ、どの段階で説明するのかを仲介会社や買い手と事前に整理しておくことが大切です。

赤字・小規模な訪問入浴事業でも売却できる?

赤字や小規模だからという理由だけで、M&Aが不可能と決まるわけではありません。買い手が既存拠点と統合することで管理コストを抑えられる場合や、欲しい営業エリア・人員・利用者基盤を確保できる場合には、売り手単独の利益とは異なる評価がなされることがあります。

一方で、赤字であれば必ず買い手が見つかるという意味ではありません。資金繰りの悪化、職員の大量退職、利用者減少、重大な報酬請求上の問題などが進めば、選択できる条件が限られる場合があります。

赤字介護事業のM&Aについて詳しく解説した関連記事への内部リンクを、ここに配置すると検索回遊にもつながります。

【無料相談・無料簡易査定】
訪問入浴介護事業の廃業を検討している場合でも、職員・利用者・営業基盤・設備などに承継価値が残っている可能性があります。M&A承継サポートは介護・医療・障がい分野に特化し、M&A成約100件以上の実績メンバーが対応。着手金・中間金無料の完全成功報酬制で、2年以内に買収実績のある買い手200社以上のリストを活用しています。まだ売却を決めていない段階でも、まずは無料簡易査定で相場感を確認できます。

訪問入浴介護事業を売却する流れ

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、中小企業M&Aの進め方や、仲介者・FAなど支援機関に求められる対応が整理されています。

  1. 仲介会社へ相談・簡易査定
    売却理由、希望時期、財務状況などを整理します。
  2. 資料を準備
    決算書、利用実績、職員、車両、加算等の資料をまとめます。
  3. 買い手候補を選定
    秘密保持に配慮しながら候補企業へ情報を開示します。
  4. トップ面談・条件交渉
    価格だけでなく、職員雇用や事業所の継続方針を確認します。
  5. 基本合意・デューデリジェンス
    財務、法務、労務、介護報酬請求等を調査します。
  6. 最終契約
    譲渡価格、支払条件、引継ぎ内容等を決定します。
  7. 行政手続き・引継ぎ
    譲渡方法に応じて指定手続きや職員・利用者等への説明を進めます。

売却前に準備しておきたい資料

  • 直近3期程度の決算書・申告書
  • 直近の試算表
  • 借入金・リース契約一覧
  • 利用者数・月間訪問件数の推移
  • 紹介元別の新規利用実績
  • 職員一覧、資格、雇用形態、給与、勤続年数
  • 入浴関連車両の一覧、車検証、修繕履歴
  • 浴槽・給排水機器等の設備一覧
  • 介護事業者指定、変更届、加算届
  • 運営規程、重要事項説明書、利用契約書
  • 行政指導や自主返還がある場合の関連資料

すべての資料がそろってからでなければ相談できないわけではありません。まず決算書など手元の資料で簡易査定を行い、その後に必要資料を追加していく方法もあります。

まとめ|訪問入浴の売却は廃業を決める前に相場感を確認する

訪問入浴介護事業のM&Aでは、売上・利益だけではなく、看護・介護職員、利用者基盤、紹介経路、訪問効率、車両・設備などが重要な確認項目になります。

特に売り手側では、「1日当たり訪問件数」「紹介元の集中度」「キーパーソンへの依存」「今後の設備更新」の4点を整理しておくことで、買い手に事業の継続性を説明しやすくなります。

また、株式譲渡と事業譲渡では、雇用や契約、介護事業者指定の取扱いが異なります。行政手続きについては管轄自治体によって対応が異なるため、売却時期を決める前に確認しておきましょう。

訪問入浴介護の売却・M&Aに関するよくある質問

Q1.赤字の訪問入浴介護事業所でも売却できますか?

赤字だから一律に売却できないわけではありません。人員、利用者基盤、営業エリア、設備、紹介経路、買い手との相乗効果などを含めて判断されます。ただし、売却成立や価格を保証するものではありません。

Q2.小規模な訪問入浴介護事業所でもM&Aできますか?

可能性はあります。利用者数だけでなく、月間訪問件数、職員構成、紹介経路、営業エリア、買い手の既存拠点との相乗効果などが評価材料になります。

Q3.入浴に使用する車両が古くても売却できますか?

車両が古いことだけで売却できなくなるとは限りません。ただし、走行距離、修繕履歴、今後必要となる更新費用などは買い手が確認する可能性があります。

Q4.事業譲渡すると職員の雇用も自動的に引き継がれますか?

自動的に承継されるわけではありません。事業譲渡で雇用主が変わる場合、労働契約の承継には個々の労働者の承諾が必要です。

Q5.事業譲渡なら介護事業者指定もそのまま引き継げますか?

事業譲渡では、新規指定等の手続きが必要となる場合があります。手続きや期限は指定権者によって異なるため、管轄自治体へ事前に確認してください。

※本記事は、訪問入浴介護事業のM&A・事業承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務・労務・行政手続きに関する助言ではありません。介護事業者指定、行政手続き、税務・法務上の取扱いは、法人形態、譲渡方法、自治体、案件内容等によって異なります。具体的な手続きについては、管轄自治体、税理士、弁護士、社会保険労務士等の専門家へご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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