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クリニックM&A相場|医院の価値評価とのれんを解説

クリニック・医院の売却を検討するとき、「自院はいくらで売れるのか」「M&Aの相場はいくらなのか」は気になるポイントです。しかし、クリニックM&Aに全国共通の価格表があるわけではありません。資産・負債だけでなく、収益力や患者基盤、スタッフ体制、院長への依存度などを踏まえて価値を検討し、最終的な譲渡価格は買い手との交渉で決まります。本記事では、医院売却の相場を考えるための価値評価とのれんの仕組みを解説します。

クリニック・医院の売却相場はどのように決まる?

クリニックM&Aに一律の売却相場はない

クリニックの売却では、「売上がこの金額なら〇〇万円」といった全国共通の相場が決められているわけではありません。

同じ診療科、同程度の売上規模であっても、患者数の推移や収益性、立地、スタッフ体制、医療機器の状態、賃貸借条件などが異なれば、買い手から見た事業の価値も変わります。

例えば、現在の利益が同程度の2つの医院があったとしても、一方は患者数が安定しておりスタッフだけでも一定の運営を継続できる、もう一方は患者の多くが院長個人を目当てに来院している、という場合があります。

前者の方が承継後も患者・売上を維持しやすいと買い手が判断すれば、価格交渉でもプラス要素となる可能性があります。

したがって、「平均的な売却価格はいくらか」だけを見るのではなく、「自院には買い手から見てどのような価値があるのか」を整理することが、クリニックM&Aの相場を理解する第一歩です。

企業価値・査定額・譲渡価格は別のもの

クリニックの売却を検討するときは、「企業価値」「査定額」「譲渡価格」を区別して考える必要があります。

項目意味
企業・事業価値財務状況や収益力などを基に一定の評価手法によって算定する価値
査定額M&A支援機関などが資料や事業状況を確認して提示する参考となる金額
譲渡価格条件交渉や調査を経て売り手と買い手が最終的に合意する金額

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)」では、中小M&Aのバリュエーションとして簿価純資産法、時価純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)などが挙げられています。また、案件ごとに適切な方法は異なり、算定された価値がそのまま譲渡額になるとは限らないことも示されています。

つまり、「査定で5,000万円と言われたから5,000万円で売却できる」といった関係ではありません。査定額は交渉を始めるための参考値の一つとして捉えることが大切です。

クリニックの売却価格が決まるまでの流れ

価格は最初の査定だけで確定するものではありません。大まかには次のような段階を経て条件が固まっていきます。

  1. クリニックの経営・財務状況を整理する
  2. 企業・事業価値を算定する
  3. 参考となる査定額や希望条件を整理する
  4. 買い手候補と条件交渉を行う
  5. デューデリジェンス(買収前調査)を実施する
  6. 調査結果などを踏まえて最終条件を調整する
  7. 売り手と買い手が譲渡価格・条件に合意する

中小企業庁も、M&Aの実施プロセスとして企業価値評価・マッチング、基本合意、デューデリジェンスなどの段階を示しています。

そのため「査定額=売却価格」ではなく、査定から交渉、調査を経て最終的な譲渡価格に近づいていくと理解しておくとよいでしょう。

クリニックの価値評価で使われる主な考え方

中小M&Aでは複数の評価方法がある

クリニックM&Aの価値評価について、「時価純資産+のれん」だけで価格が決まると思われることがありますが、実際には評価方法は一つではありません。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、代表的な方法として次のような手法が示されています。

  • 簿価純資産法
  • 時価純資産法
  • 類似会社比較法(マルチプル法)

さらに、収益力を基礎とする考え方などもあり、どの手法が適しているかは案件によって異なります。

クリニックの場合も、資産だけを見るのではなく、今後どの程度安定した診療・収益を引き継げそうかという視点を含めて検討することが重要です。

時価純資産法とは

時価純資産法とは、保有する資産や負債を現在の価値に修正したうえで、資産から負債を差し引いて価値を算定する方法です。

例えば、帳簿に記載されている土地や建物、医療機器などについて、実態に即した価値を検討します。

ただし、クリニックの価値は設備や不動産だけではありません。

長年通院している患者、地域からの認知、スタッフ、診療ノウハウなど、決算書だけでは十分に把握できない経営資源も存在します。

のれん(営業権)とは

こうした帳簿に直接表れにくい価値を説明するときに使われるのが「のれん」という考え方です。

例えば、次のような要素です。

  • 安定した患者基盤がある
  • 地域で長期間診療を続けている
  • 紹介による患者流入がある
  • 一定の収益力を継続している
  • 経験のあるスタッフが定着している
  • 診療や運営の仕組みが整備されている

買い手からすれば、ゼロから新規開業する場合には患者獲得やスタッフ採用、設備準備などが必要になります。

既存クリニックを承継することで、こうした経営資源も引き継げるのであれば、その価値が価格を検討する際の材料になる可能性があります。

なお、「時価純資産+のれん」は中小M&Aにおける価格検討の考え方の一つであり、すべてのクリニックに一律に適用される計算式ではありません。

クリニックM&Aの価格を左右する主な評価ポイント

評価ポイント買い手が確認する視点
患者基盤承継後も患者が継続して来院する可能性
収益性利益が安定しているか、一時的な要因ではないか
立地・診療圏地域ニーズや競合環境に魅力があるか
スタッフ承継後も診療体制を維持できるか
設備取得後に大規模な更新投資が必要にならないか
院長依存度院長交代後も患者・売上を維持できるか

患者数と収益が安定している

患者数や収益が継続的に安定していることは、買い手が事業の将来性を判断する材料になります。

重要なのは、直近1年だけの数字を見るのではなく、その背景まで説明できることです。

例えば、患者数が一時的に減っていても、院長の診療日数を意図的に減らしたことが原因なのか、競合医院への患者流出が続いているのかでは意味が異なります。

査定では数字だけを提出するのではなく、「なぜこの数字になっているのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。

スタッフが承継後も働ける体制になっている

看護師や歯科衛生士、受付スタッフなどが安定して勤務している医院では、買い手が取得後の運営をイメージしやすくなります。

特に採用難の地域では、既存スタッフを引き継げること自体が事業上の魅力となる場合があります。

ただし、雇用契約や労働条件などについては譲渡方法によって扱いが異なるため、個別案件では専門家への確認が必要です。

院長への依存度が低い

クリニック特有のポイントとして重視したいのが「院長依存度」です。

例えば、次のような状態では承継後の事業継続について慎重に見られる可能性があります。

  • 患者の多くが院長個人を指名している
  • 自由診療の大部分を院長だけが担当している
  • 紹介患者が院長個人の人脈に依存している
  • SNSやWeb集客が院長個人のブランドだけに依存している
  • スタッフが院長の判断なしでは業務を進められない

反対に、診療手順や院内業務が標準化され、スタッフや勤務医へ役割が分散されていれば、院長交代後の不確実性を抑える材料になります。

まずは現在の相場感を確認したい方へ
査定を受けたからといって、その時点で売却を決める必要はありません。「数年後に承継を考えている」「現在の企業・事業価値の参考値だけ把握しておきたい」という段階でも検討できます。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい分野に特化し、M&A成約100件以上の実績を持つメンバーが無料相談・無料簡易査定に対応しています。着手金・中間金無料の完全成功報酬制です。

評価が下がる可能性があるケース

クリニックの価値は、収益だけで決まるものではありません。買い手が承継後のリスクを大きいと判断した場合には、価格交渉に影響する可能性があります。

患者数が継続的に減少している

患者数の減少が一時的なものではなく、中長期的な傾向となっている場合は、その要因を確認されることがあります。

ただし、患者数が減っているだけで直ちに価値が低くなるわけではありません。診療時間の短縮や院長の体調、診療体制の見直しなど、一時的な事情による減少であれば、背景を丁寧に説明することで買い手の理解につながる場合もあります。

院長への依存度が極めて高い

「院長だから通っている」という患者が多い場合は、承継後の患者維持について慎重に検討されることがあります。

そのため、勤務医との連携やスタッフ主体の運営、診療マニュアルの整備など、医院として継続できる体制づくりは将来的な事業承継にも役立ちます。

設備更新が必要な状態になっている

老朽化した医療機器や院内設備は、買い手が取得後に追加投資を行う必要があるため、条件交渉で考慮されることがあります。

一方で、設備が最新であることだけが重要ではありません。定期的な点検やメンテナンス履歴が整理されていることも、安心材料になる場合があります。

経営資料が整理されていない

M&Aでは、デューデリジェンス(買収監査)を通じて財務や契約、運営状況などが確認されます。

決算書や契約書類、患者数推移などの資料が整理されていないと、確認作業に時間を要し、結果としてスケジュールや交渉へ影響することがあります。中小M&Aガイドラインでも、適切な情報開示や資料整備の重要性が示されています。

査定前に準備しておきたい資料

査定を依頼する前に、次のような資料を整理しておくと、クリニックの状況をより正確に把握してもらいやすくなります。

  • 直近数期分の決算書・試算表
  • 患者数やレセプト件数などの推移
  • 医療機器・設備一覧
  • 賃貸借契約書など不動産関連資料
  • スタッフ構成・雇用状況
  • 診療科目別の売上構成

数字だけでなく、「地域でどのような役割を担っているか」「紹介患者が多い理由」「スタッフが長く定着している背景」なども整理しておくと、自院の強みを伝えやすくなります。

よくある質問

Q. クリニックの売却相場はいくらですか?

A. 一律の相場はありません。財務状況や患者基盤、収益力、設備、スタッフ体制などを踏まえて企業・事業価値を検討し、その後の交渉を経て最終的な譲渡価格が決まります。

Q. 赤字のクリニックでも売却できますか?

A. 赤字であっても売却できる可能性はあります。地域ニーズや患者基盤、設備、診療体制などが評価されるケースもあるため、まずは個別に査定を受けることをおすすめします。

Q. のれんが付かないことはありますか?

A. はい。将来の収益性が見込みにくい場合や院長への依存度が高い場合などは、のれんが十分に考慮されないケースがあります。一方で、安定した患者基盤や地域での信頼、スタッフ体制などが買い手から評価されれば、無形の価値として価格交渉の材料になることがあります。

Q. 査定だけ依頼することはできますか?

A. 可能です。査定を受けたからといって売却を決める必要はありません。現在の価値を把握し、今後の事業承継の選択肢を検討するために利用する経営者も多くいます。

Q. 売却までどのくらいの期間がかかりますか?

A. 案件によって異なります。買い手探しや条件交渉、デューデリジェンスなどの進み具合によって期間は変動するため、余裕を持って準備を始めることが大切です。

まとめ

クリニック・医院のM&Aには「全国共通の売却相場」はありません。

企業・事業価値は複数の評価手法を用いて検討され、患者基盤や収益力、スタッフ体制、院長依存度などの要素も踏まえて総合的に判断されます。そして、最終的な譲渡価格は売り手・買い手双方の交渉によって決まります。

そのため、「平均相場」だけを参考にするのではなく、自院の強みや改善点を整理したうえで査定を受けることが重要です。

現在の価値を知ることは、今すぐ売却するためだけではなく、数年後の事業承継や経営戦略を考えるうえでも有効な情報になります。

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・法務・会計・行政手続等に関する個別具体的な助言を行うものではありません。実際のM&Aや税務・法務上の判断については、税理士・公認会計士・弁護士などの専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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