介護の後継者不足はM&Aで解決|売却の選択肢
介護事業では、経営者の高齢化や後継者不在を理由に、将来の事業継続へ不安を感じる経営者が少なくありません。しかし、「後継者がいない=廃業」というわけではなく、親族承継・従業員承継・M&A(第三者承継)など複数の選択肢があります。特に近年は、介護事業を引き継ぎたい法人や企業とのマッチングにより、利用者へのサービス継続や職員の雇用維持を目指すM&Aが増えています。本記事では、介護事業の後継者不足を解決する方法やM&Aのメリット・注意点を分かりやすく解説します。
介護事業で後継者不足が深刻化している理由
介護業界では高齢化の進展に伴いサービス需要が高まる一方で、経営者自身の高齢化や人材不足などを背景に、事業承継は重要な経営課題となっています。
中小企業白書によると、中小企業全体の後継者不在率は改善傾向にあるものの、経営者の年齢は依然として高い水準にあり、60歳以上の経営者が過半数を占めています。そのため、後継者不足への備えは引き続き重要な課題とされています。
経営者の高齢化が進んでいる
介護事業所の多くは地域密着型で、創業者が長年経営を続けているケースも少なくありません。
引退を考え始めたタイミングで「事業を継いでくれる人がいない」と気付くことも多く、準備期間が十分に確保できないまま承継問題へ直面するケースがあります。
親族・職員への承継が難しくなっている
以前は親族内承継が一般的でしたが、近年では子どもが別の職業を選択するケースも増えています。
また、施設長や管理者など信頼できる職員がいても、株式取得資金や経営責任への不安から承継を希望しないケースもあります。
中小企業庁では、現在の事業承継方法として「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つを代表的な方法として紹介しています。
介護業界ならではの経営課題がある
介護事業は一般企業とは異なり、介護保険制度への対応や人材確保、行政手続きなど、事業承継時に考慮すべき事項が多くあります。
- 介護保険制度への対応
- 慢性的な人材不足
- 地域との信頼関係
- 指定更新や行政対応
- サービス品質の維持
こうした業界特有の事情から、後継者探しが難航し、第三者への承継を検討する事業者も増えています。
後継者がいない介護事業が選べる3つの道
後継者がいない場合でも、選択肢は一つではありません。それぞれの特徴を理解したうえで、自社に合った方法を検討することが大切です。
① 親族へ承継する
創業理念や経営方針を引き継ぎやすい方法ですが、後継候補がいない場合は選択できません。また、経営者として育成する期間も必要になります。
② 従業員へ承継する
現場を理解する管理者や施設長へ引き継ぐ方法です。利用者や職員への安心感がある一方、資金面や経営ノウハウの習得が課題となる場合があります。
③ M&Aで第三者へ承継する
近年増えているのが第三者承継です。
介護事業を拡大したい法人や新規エリアへ進出したい企業などへ事業を引き継ぐことで、利用者へのサービス継続や職員の雇用維持を目指せます。
| 承継方法 | 向いているケース | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 親族承継 | 家族に後継者がいる | 理念を引き継ぎやすい | 育成期間が必要 |
| 従業員承継 | 信頼できる幹部がいる | 現場が安定しやすい | 資金面が課題 |
| M&A | 後継者がいない | 第三者へ承継できる | 買い手選びが重要 |
介護事業は後継者がいなくても売却できる?
結論からいうと、後継者がいなくてもM&Aによって売却できる可能性があります。ただし、すべての事業所が同じ条件で売却できるわけではありません。
売却しやすいケース
- 利用者数・稼働率が安定している
- 職員の定着率が高い
- 管理者体制が整っている
- 地域で一定の認知度がある
- 行政指導など大きな問題がない
売却が難しくなるケース
- 利用者数が大きく減少している
- 特定職員へ業務が集中している
- 慢性的な赤字が続いている
- 法令違反や行政処分歴がある
なお、赤字だから必ず売却できないというわけではありません。立地や地域シェア、人材、サービス内容などが評価され、買い手が見つかるケースもあります。
後継者不足をM&Aで解決するメリット
利用者へのサービス継続を目指せる
廃業すると利用者は他事業所への変更を余儀なくされる可能性があります。一方、M&Aでは事業そのものを引き継ぐため、サービスを継続できる可能性があります。
職員の雇用維持につながる可能性がある
買い手企業の多くは、介護サービスを継続するために職員の雇用維持を重視する傾向があります。ただし、雇用条件は契約内容によって異なるため、事前確認が重要です。
経営者は計画的な引退を目指せる
M&Aでは、一定期間の引継ぎを経て経営から退くケースも多くあります。急な廃業ではなく、利用者や職員への影響に配慮しながら計画的に事業を承継できる点は、大きなメリットの一つです。
買い手の経営資源を活用できる場合がある
M&Aでは、買い手企業が持つ採用力や教育体制、経営ノウハウなどを活用できる場合があります。経営者が交代するだけでなく、事業運営の安定やサービス品質の維持・向上につながる可能性があります。
無料相談・無料簡易査定受付中
「まだ売却すると決めていない」という段階でもご相談いただけます。現在の相場感や承継方法を知ることは、今後の経営判断にも役立ちます。
介護事業のM&Aで買い手が重視するポイント
M&Aでは売上や利益だけではなく、「事業を引き継いだ後も安定して運営できるか」という視点で評価されます。
- 利用者数・稼働率が安定しているか
- 職員の定着率が高いか
- 施設長や管理者など運営体制が整っているか
- 地域で一定の認知度や信頼があるか
- 法令違反や重大な行政処分歴がないか
一時的な赤字であっても、地域性や人材、将来性が評価されるケースもあります。そのため、「赤字だから売却できない」と判断する前に、一度専門家へ相談することが大切です。
介護事業のM&Aで注意したいポイント
売却できるとは限らない
介護サービスの需要は高いものの、すべての事業所に買い手が見つかるわけではありません。収益性だけでなく、人材や運営体制なども総合的に評価されます。
承継方法によって必要な手続きが異なる
介護事業は行政指定を受けて運営しています。
株式譲渡では法人自体は変わらないため、指定を引き継げるケースがあります。一方、事業譲渡では新たな指定申請などが必要になる場合があるため、承継方法に応じた手続きを事前に確認することが重要です。
職員・利用者への説明時期は慎重に判断する
M&Aの情報が早期に広まると、職員や利用者に不安を与える可能性があります。そのため、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで交渉を進め、適切なタイミングで説明することが一般的です。
後継者不足でM&Aを検討するタイミング
黒字のうちから相談するメリット
経営状況が安定している段階から準備を始めることで、買い手候補の選択肢が広がる可能性があります。引退予定が数年先であっても、相場や市場動向を把握しておくことは経営判断に役立ちます。
赤字でも相談できるケースがある
人材不足や一時的な収益悪化で赤字となっている場合でも、立地や利用者基盤、職員体制などが評価され、M&Aが成立するケースがあります。
廃業を決める前に相談することが大切
廃業後は利用者や職員、地域とのつながりを維持することが難しくなります。後継者がいないという理由だけで廃業を決断する前に、第三者承継という選択肢も検討してみましょう。
よくある質問
後継者がいなくても介護事業は売却できますか?
可能です。M&Aによって第三者へ事業を承継できるケースがあります。ただし、事業内容や経営状況によって異なります。
赤字でもM&Aはできますか?
赤字でも成立するケースがあります。利用者基盤や地域性、人材などを総合的に評価して判断されます。
従業員にはいつ伝えるべきですか?
交渉状況や契約内容を踏まえ、適切な時期に説明することが一般的です。
相談だけでも利用できますか?
はい。売却を決めていない段階でも、相場や承継方法について相談することが可能です。
まとめ
介護事業の後継者不足は、多くの経営者が直面する課題です。しかし、後継者がいないからといって廃業しか選択肢がないわけではありません。
親族承継や従業員承継に加え、第三者へ事業を引き継ぐM&Aという方法もあります。利用者へのサービス継続や職員の雇用維持を目指せる可能性があるため、早い段階から選択肢を比較・検討することが重要です。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務・法務・介護保険制度・行政手続き等は個別事情によって異なるため、実際の判断や手続きは税理士・弁護士・行政書士などの専門家へご相談ください。
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