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医療M&Aの許認可・名義変更|保健所・厚生局への届出

医療M&Aでは、売買契約や法人内部の手続きだけでなく、保健所・都道府県等への医療法上の手続きや、地方厚生(支)局への保険医療機関に関する申請・届出を確認する必要があります。特に重要なのが「M&A後に医療機関の開設者が変わるか」という点です。本記事では、医療M&Aの許認可・名義変更について、2026年の制度変更も踏まえてわかりやすく解説します。

医療M&Aでは許認可・名義変更の確認が重要

病院や診療所をM&Aで承継する場合、M&A契約が成立しただけですべての行政手続きが完了するわけではありません。

医療機関については医療法上の開設・変更・廃止等の手続きがあり、保険診療を行う場合には、健康保険法上の保険医療機関の指定に関する手続きも関係します。

まず確認したいのは、次の3点です。

  • M&A後も医療機関の開設者は同じか
  • 理事長・代表者・管理者など誰が変わるのか
  • 事業譲渡などによって開設主体そのものが変わるのか

「名義変更」という言葉だけで判断せず、実際にどの主体・人物・届出事項が変わるのかを整理することが出発点になります。

「代表者変更」と「開設者変更」は異なる

たとえば、医療法人が開設する診療所で理事長が交代しても、開設者である医療法人そのものは同じというケースがあります。

一方、事業譲渡によってA医療法人が運営していた診療所をB医療法人が引き継ぐ場合は、開設主体そのものが変わります。

地方厚生(支)局では、保険医療機関の名称や法人開設者の代表者、管理者等に変更が生じた場合について、届出事項変更(異動)届による手続きが案内されています。

これに対して開設者自体が変わる場合は、保険医療機関としての廃止・新たな指定申請等が関係することがあります。

医療M&Aで関係する主な行政機関

医療M&Aの行政手続きは、「どの行政機関が何を扱っているのか」を分けると理解しやすくなります。

行政機関主な確認事項M&Aで確認する例
保健所・都道府県等医療法上の開設・変更・廃止等開設者、管理者、名称、病床等
地方厚生(支)局保険医療機関の指定・変更等開設者変更、代表者変更、管理者変更等
都道府県等医療法人に関する手続き役員・理事長、定款、登記事項等

上表は一般的な整理です。実際の窓口・必要書類・提出時期は、医療機関の所在地や種類、法人形態、M&Aスキーム等によって異なります。

保健所・都道府県等への手続き

医療法上、病院や診療所については開設・変更・廃止等に関する手続きがあります。

特に事業譲渡などによって開設者が変わる場合は、旧開設者側と新開設者側でどの手続きが必要になるのかを確認することが重要です。

病院か診療所か、個人開設か法人開設かなどによっても手続きは異なるため、管轄保健所・都道府県等への事前相談をおすすめします。

地方厚生(支)局への手続き

保険診療を行っている医療機関では、保険医療機関の指定に関する手続きも確認します。

名称、法人開設者の代表者、管理者等の変更は、地方厚生(支)局への変更届の対象となる場合があります。

一方、開設者自体が変わる場合は、保険医療機関としての廃止届と新たな指定申請等が必要になることがあります。

医療法上の手続きと保険医療機関指定の手続きは別の制度であるため、片方だけを確認して終わらせないことが大切です。

医療法人としての手続きも確認する

医療法人のM&Aでは、医療機関に関する手続きとは別に、医療法人の役員・理事長・定款・登記事項などに関する手続きが生じる場合があります。

たとえば愛知県では、医療法人の役員を変更する場合の役員変更届を案内しており、理事長変更については登記事項の変更も関係します。

そのため、「医療機関」「保険医療機関」「医療法人」という3つの観点から手続きを洗い出すと、漏れを防ぎやすくなります。

医療M&Aの許認可・名義変更はスキームで変わる

法人を維持したまま経営体制を変更する場合

医療機関を開設している法人自体を維持し、理事長・役員などを変更するケースでは、開設者そのものが別法人になるケースとは区別して考えます。

ただし、法人が同じでも代表者、管理者、医療機関名称、診療体制などを変更すれば、それぞれ必要な届出が生じる可能性があります。

「法人が残るから行政手続きは不要」と判断せず、M&A後に変わる事項を一覧化しましょう。

事業譲渡で医療機関を引き継ぐ場合

事業譲渡では、特定の医療機関の事業を譲渡側から譲受側へ移します。

厚生労働省の医療法人M&Aに関する調査研究でも、事業譲渡について、医療機関の物的・人的資源の基本的同一性を維持しながら、開設者を譲渡側医療法人から譲受側医療法人へ入れ替えるスキームが整理されています。

この場合は、売り手側の廃止関係手続きと、買い手側の開設・保険医療機関指定等の手続きを連動させることが重要です。

個人医院から法人へ承継する場合

個人開設の診療所から法人開設へ変わるケースも、単なる代表者名の変更とは異なります。

地方厚生(支)局では、保険医療機関の開設者が個人から法人、または法人から個人へ変更されるケースについて、遡及指定の対象となり得る事例として示しています。

個人医院のM&Aでは、設備や従業員等の承継だけでなく、医療法上の開設手続きと保険医療機関指定をどのようにつなぐかまで確認する必要があります。

2026年の医療M&Aで特に確認したい制度変更

2026年9月1日から遡及指定の取扱いが変更

厚生労働省は2026年6月5日、「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて」を通知しました。これを受け、2026年9月1日から保険医療機関等の遡及指定・機能移転の取扱いが変更されます。

遡及指定とは、一定の要件を満たす場合に、通常の指定日より前の日に遡って保険医療機関等の指定を受ける取扱いです。

M&Aや事業承継では、開設者変更等に伴って旧医療機関と新医療機関の間に保険診療上の空白が生じないよう検討されることがあります。

2026年9月からの新しい取扱いでは、遡及指定について3つの類型に整理して手続きが示されています。そのうち「その他の場合」に該当するケースでは、原則として遡及指定を希望する日の3か月前までに予定届出書を提出する必要があります。

すべての医療M&Aで「3か月前」が適用されるわけではないため、自院のケースがどの類型に該当するかを管轄地方厚生(支)局へ確認することが重要です。

施設基準も併せて確認する

保険医療機関の指定だけでなく、現在届け出ている施設基準についても確認が必要です。

遡及指定が認められた場合でも、施設基準に係る点数を引き続き算定するために必要な届出があります。

売り手側では、現在届け出ている施設基準を一覧化して買い手側と共有し、承継後に必要となる手続きを確認しておくとよいでしょう。

2026年4月から保険医療機関の管理者要件にも注意

2026年4月1日から、保険医療機関の管理者について新たな要件が設けられています。

厚生労働省は、保険医療機関の管理者について、保険医として一定期間診療に従事した経験など複数の要件を示しています。

M&Aに伴って院長・管理者を変更する場合は、「後任の医師・歯科医師が管理者になれるか」という点も早い段階で確認しておきましょう。

管理者の要件には複数の類型・例外等があるため、具体的な人選については最新の厚生労働省・地方厚生(支)局の情報を確認してください。

医療M&Aはクロージングから逆算して行政手続きを進める

医療M&Aでは、売買条件だけでクロージング日を決めるのではなく、必要な行政手続きから逆算してスケジュールを設計することが重要です。

  1. M&Aスキームを検討する
  2. M&A前後の開設者を確認する
  3. 代表者・管理者・名称等の変更事項を洗い出す
  4. 保健所・都道府県等へ事前相談する
  5. 地方厚生(支)局へ必要な手続きを確認する
  6. 必要書類・提出時期を確認する
  7. 最終契約・クロージング日を調整する
  8. 開設・廃止・指定・変更等の必要な手続きを行う
  9. 施設基準やその他の指定・届出も確認する

実際の順序や必要期間は案件によって異なります。特に開設者変更を伴う場合は、最終契約直前ではなく、M&Aスキームが具体化した段階で行政機関への相談を始めることが重要です。

売り手がM&A前に確認しておきたいチェックリスト

  • 現在の開設者は個人か法人か
  • M&A後も開設者は同じか
  • 医療法人の理事長・役員を変更するか
  • 管理者を変更するか
  • 後任管理者が最新の要件を満たすか
  • 医療機関名称を変更するか
  • 診療科・診療時間を変更するか
  • 病床や設備等に変更があるか
  • 保険医療機関の指定状況を確認したか
  • 届出済みの施設基準を一覧化したか
  • その他の指定・公費等を確認したか
  • 管轄保健所・都道府県等を確認したか
  • 管轄地方厚生(支)局を確認したか
  • 行政手続きから逆算してクロージング日を検討したか

【無料相談】
医療M&Aでは、売却価格だけでなく、どのスキームで承継するかによって必要となる行政手続きも変わります。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい分野のM&Aに対応しています。「自院の場合はどのような承継方法が考えられるのか」「売却する場合の相場感をまず知りたい」という段階でも、無料相談・無料簡易査定をご利用いただけます。

医療M&Aの許認可・名義変更で注意したいポイント

M&A契約だけで行政手続きも完了すると考えない

事業や設備等を譲渡できても、医療法上の手続きや保険医療機関指定について別途対応が必要になる場合があります。

理事長変更と開設者変更を混同しない

法人の理事長が変わるケースと、医療機関を開設する法人自体が変わるケースでは、必要となる行政手続きが異なります。

「誰が院長になるか」だけでなく、M&A前後で開設者となる個人・法人が同一かを確認しましょう。

保健所だけでなく地方厚生(支)局も確認する

医療法上の開設等の手続きと、保険医療機関指定に関する手続きは別に確認する必要があります。

さらに医療法人の場合は、役員・定款・登記事項など法人側の手続きが生じる可能性もあります。

医療M&Aの許認可は早い段階から確認しよう

医療M&Aの許認可・名義変更を整理するときは、まず「M&A後に医療機関の開設者が変わるのか」を確認することが重要です。

開設者が同じで代表者や管理者だけが変わるケースと、事業譲渡などによって開設主体そのものが変わるケースでは、必要となる手続きが異なります。

また、2026年9月1日からは保険医療機関等の遡及指定・機能移転の取扱いが変更され、2026年4月からは保険医療機関の管理者に関する要件も設けられています。

売却条件やクロージング日だけを先に決めず、保健所・都道府県等、地方厚生(支)局への確認を含めてM&Aスケジュールを組むことが大切です。

医療M&Aの許認可・名義変更に関するよくある質問

Q1. 医療法人をM&Aした場合、許認可はそのまま引き継げますか?

一律には判断できません。開設法人自体が維持され代表者等だけが変更されるケースと、事業譲渡などで開設者自体が変わるケースでは必要な手続きが異なります。M&Aスキームと変更事項を整理し、管轄行政機関へ確認してください。

Q2. 医療機関の開設者が変わる場合は名義変更だけで済みますか?

単なる名義変更では済まない場合があります。医療法上の開設・廃止等に加え、保険医療機関としての廃止・新たな指定申請等が必要になる可能性があるため、保健所等と地方厚生(支)局の双方へ確認しましょう。

Q3. 理事長が変わると保険医療機関の指定を取り直す必要がありますか?

開設法人自体が同一で法人代表者のみ変更する場合は、地方厚生(支)局では届出事項変更(異動)届が案内されています。ただし、同時に開設者・所在地など別の事項を変更する場合は追加手続きが必要となる可能性があります。

Q4. 医療M&Aでは保健所と厚生局の両方に確認が必要ですか?

案件によりますが、医療法上の開設・変更等と保険医療機関指定に関する手続きは別制度のため、それぞれ確認することが重要です。

Q5. 医療M&Aの行政手続きはいつから準備すべきですか?

M&Aスキームが具体化した段階から確認するのが望ましいでしょう。特に2026年9月以降の遡及指定については新しい取扱いが適用されるため、管轄地方厚生(支)局への早めの事前相談が重要です。

免責事項:本記事は2026年8月時点で公表されている情報を基に、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別案件における法務・税務・行政手続き等の助言を行うものではありません。医療M&Aに必要な許認可・届出・指定等は、医療機関の所在地・種類・法人形態・M&Aスキーム等によって異なります。具体的な手続きについては、管轄の保健所・都道府県・地方厚生(支)局および弁護士・税理士・行政書士等の専門家へご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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