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眼科・皮膚科の売却相場|自由診療比率とM&A評価

眼科・皮膚科クリニックのM&A・売却では、自由診療比率が評価に影響することがあります。しかし、自費診療の割合が高いほど売却価格が上がるとは限りません。重要なのは、診療別の利益率や患者基盤、医療機器の価値、院長引退後も収益を維持できる体制です。本記事では、眼科・皮膚科それぞれの評価ポイント、自由診療比率と売却価格の関係、売却前の準備や注意点をわかりやすく解説します。

眼科・皮膚科クリニックのM&A・売却で重視されるポイント

眼科・皮膚科クリニックの売却を検討する際、多くの経営者が気になるのは「自院はいくらで売却できるのか」という点でしょう。

売却価格は年間売上だけでは決まりません。利益、保有資産、患者基盤、診療体制などを確認し、買収後も事業を継続できるかを踏まえて判断されます。

クリニックの売却価格は何によって決まるのか

M&Aでは、主に次の要素を参考に事業価値を評価します。

  • 時価純資産:資産と負債を実態に即して評価した純資産
  • 営業権(のれん):患者基盤や収益力など、帳簿上の資産だけでは表せない価値
  • 実態利益:一時的な費用や院長報酬などを精査し、継続的な収益力を判断するための利益
  • 将来収益:買収後に見込まれる利益や必要な設備投資

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)」では、譲渡額の算定方法として時価純資産法、マルチプル法、DCF法などが紹介されています。

ただし、これらは評価方法の例であり、特定の計算式によって売却価格が確定するわけではありません。医療機関では、開設主体や診療体制なども踏まえて検討する必要があります。

参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

保険診療と自由診療では収益構造が異なる

保険診療では、公的医療保険制度と診療報酬に基づいて収入が決まります。一方、自由診療は原則として医療機関が料金を設定するため、提供するサービスや価格によって収益構造が変わります。

自由診療は高い利益率を確保できる可能性がありますが、広告宣伝費、医療材料費、設備投資などの負担も生じます。

そのため、自由診療比率が高いクリニックでも、必ずしも高い利益を確保できているとは限りません。

買い手が確認する利益・患者基盤・院長依存度

買い手にとって重要なのは、買収後も診療を継続し、収益を維持できるかという点です。

例えば、院長個人の技術や知名度に患者が集中している場合、院長の引退によって売上が減少する可能性があります。

反対に、複数の医師による診療体制が整い、地域の患者が継続的に通院しているクリニックは、事業承継後の運営を検討しやすくなります。

自由診療比率はクリニックの売却価格にどう影響する?

自由診療比率とは、診療収入全体に占める自由診療収入の割合です。

例えば、年間診療収入が1億円で、そのうち自由診療収入が4,000万円の場合、自由診療比率は40%です。

ただし、比率だけで売却価格が決まるわけではなく、その収益の内容を確認することが重要です。

自由診療比率が高いクリニックの評価ポイント

自由診療比率が高いクリニックでは、独自の価格設定や診療メニューによって利益を確保できる可能性があります。

特に、次のような特徴は評価材料となります。

  • 自由診療の利益率が安定している
  • 患者の継続的な来院が見込める
  • 特定の医師だけに依存していない
  • 広告費に見合う収益を確保できている
  • 診療メニューごとの収益が把握されている

例えば、美容皮膚科で複数の施術メニューを提供し、一定のリピート需要と安定した利益がある場合、その収益力が評価につながる可能性があります。

自由診療比率が高くても評価が下がるケース

自由診療比率が高くても、広告費や設備維持費が大きければ、利益は十分に残らない場合があります。

また、院長自身しか提供できない施術に売上が集中している場合、引退後の診療継続が課題になります。

高額な医療機器の更新時期が近い場合や、リース残債が大きい場合にも、買い手は追加負担を考慮することがあります。

自費比率20%・50%・80%の比較例

自由診療比率による収益構造の違いを、仮定のケースで比較します。

自由診療比率想定する特徴買い手の確認点
20%保険診療中心保険診療の安定性、患者基盤
50%保険・自費併用診療別の利益率、医師体制
80%自由診療中心広告費、需要変動、施術の継続性

※上記の比率は説明用の仮定であり、実際の診療科別平均値や売却相場ではありません。

さらに、同じ年間売上1億円のクリニックでも、費用構造が異なれば利益は変わります。

項目AクリニックBクリニック
年間診療収入1億円1億円
自由診療比率80%30%
年間費用9,000万円8,000万円
年間利益1,000万円2,000万円

※金額は収益構造を説明するための架空の数値であり、実際の売却事例、業界平均、評価倍率を示すものではありません。年間利益は比較用に診療収入から年間費用を差し引いた数値です。

この例では、自費比率の低いBクリニックの方が利益を多く確保しています。ただし、利益が多いことだけでBクリニックの売却価格が高いと決まるわけではありません。

実際の査定では、資産・負債、設備更新費用、収益の継続性なども確認します。

売上よりも利益率と収益の安定性が重要

売却前には、保険診療と自由診療の売上を分け、各部門の費用や利益を確認することが大切です。

特に自由診療では、広告費、材料費、施術者の人件費などを把握し、どの診療メニューが利益に貢献しているかを整理します。

過去数期の推移を説明できれば、一時的な売上増加と継続的な収益を区別しやすくなります。

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眼科クリニックのM&A・売却で評価される特徴

眼科クリニックのM&Aでは、外来患者の基盤に加え、検査設備や手術体制が重要な評価ポイントとなります。

保険診療とICL・レーシックなど自由診療の評価

眼科では、一般外来、緑内障治療、眼底検査、白内障手術などの保険診療が収益基盤となる場合があります。

一方、ICL(眼内コンタクトレンズ)やレーシックなどは、通常、自由診療として提供される治療です。ただし、個別の保険適用の可否は診療内容によって確認が必要です。

自由診療を提供する眼科では、施術件数だけでなく、利益率、設備の稼働状況、術後の診療体制なども確認されます。

検査機器・手術設備の価値と更新コスト

眼科では、OCT(光干渉断層計)などの検査機器や、白内障手術に使用する設備などが経営上の重要な資産となります。

ただし、医療機器は導入価格が高いからといって、売却時に同じ価値が認められるわけではありません。

買い手は、使用年数、保守状況、故障リスク、更新に必要な費用などを確認します。

売却前に設備台帳やリース契約を整理しておくと、買い手との認識違いを防ぎやすくなります。

手術実績と医師・スタッフ体制の引継ぎ

手術収入の割合が大きい眼科では、術者となる医師の確保が重要です。

院長のみが手術を担当している場合、引退後に同じ手術件数を維持できるかが課題になります。

また、視能訓練士や看護師など、専門スタッフが継続して勤務できるかも確認されます。

院長が引退を予定している場合は、後任医師の確保や引継ぎ期間について、早い段階から検討しておくことが望ましいでしょう。

皮膚科クリニックのM&A・売却で評価される特徴

皮膚科クリニックでは、一般皮膚科と美容皮膚科の収益構造を区別して評価することが重要です。

一般皮膚科と美容皮膚科の収益構造の違い

一般皮膚科では、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの保険診療が中心となる場合があります。

地域の患者が継続的に通院している場合、安定した患者基盤が評価材料になります。

一方、美容皮膚科では、医療脱毛、レーザー施術、美容に関する自由診療などが収益の中心となる場合があります。

美容皮膚科では、施術単価だけでなく、医療材料費、広告費、人件費、設備維持費などを差し引いた利益を確認する必要があります。

医療脱毛・美容施術の利益と集客力

美容皮膚科では、新規患者を獲得するための広告宣伝費が経営に影響することがあります。

例えば、SNS広告や検索広告による集客が中心の場合、広告費を継続したときに十分な利益が残るかが評価のポイントになります。

また、院長個人のSNS発信に集客が依存している場合、その影響力を買収後も引き継げるとは限りません。

売却前には、広告媒体別の費用と患者数、再来院率、施術別の売上を整理しておくとよいでしょう。

広告費・前受金・未消化施術への対応

美容皮膚科のM&Aでは、自由診療の前受金や未消化施術契約に注意が必要です。

例えば、複数回の医療脱毛コースについて料金を先に受け取っていても、まだ提供していない施術が残っている場合があります。

この場合、譲渡後に誰が施術を担当するのか、契約上の義務を引き継げるのか、返金が必要となった場合に誰が負担するのかなどを確認しなければなりません。

また、一定の条件を満たす美容医療契約には、特定商取引法の特定継続的役務提供に関する規制が適用される場合があります。契約内容、提供期間、金額、施術方法などによって適用関係が異なるため、個別の確認が必要です。

医療広告についても、厚生労働省の医療広告規制に沿った運用が求められます。買い手は広告内容の適法性や、譲渡後の集客への影響を確認する必要があります。

参考:消費者庁「前受金保全措置等に関する注意喚起」

参考:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」(2026年3月の事例解説書第6版を参照)

眼科・皮膚科クリニックの売却価格を左右する5つの要素

自由診療比率以外にも、クリニックの評価を左右する要素があります。

評価項目主な確認内容
① 実態利益保険・自由診療別の収益、経費、一時的な支出
② 医療機器・設備時価、更新費用、リース契約、保守費用
③ 患者基盤患者数、再来院率、集客経路、地域需要
④ 医師・スタッフ院長依存度、後任医師、従業員の継続勤務
⑤ 立地・競合環境商圏、周辺競合、今後の需要見通し

① 保険診療・自由診療別の実態利益

診療別の売上と費用を整理することで、買収後の収益を見通しやすくなります。院長報酬などを調整する場合も、買収後に必要な医師人件費を考慮する必要があります。

② 医療機器・設備とリース契約

設備の種類、状態、残存価値に加え、買収後に必要となる更新費用を確認します。リース契約を引き継げるかどうかも重要です。

③ 患者数・リピート率・集客経路

継続患者が多いのか、広告による新規集客が中心なのかによって収益の安定性は異なります。広告費と患者獲得の関係も整理しましょう。

④ 院長への依存度と後任医師の確保

院長の退任後も診療を続けられるかは、売却条件に影響する場合があります。後任医師の確保やスタッフの継続勤務について検討が必要です。

⑤ 立地・競合環境と将来の収益見通し

駅からの距離、周辺人口、競合クリニックの状況などを確認します。美容皮膚科では、類似サービスの増加による価格競争も考慮する必要があります。

眼科・皮膚科クリニックを売却する前に準備したいこと

売却を円滑に進めるには、経営状況を説明できる資料と、事業承継に必要な情報を整理しておくことが重要です。

保険診療・自由診療の売上と利益を整理する

主に次の資料を準備しましょう。

  • 直近数期の決算書・確定申告書
  • 保険診療・自由診療別の売上資料
  • 診療メニュー別の収益資料
  • 患者数・再来院率の集計資料
  • 広告宣伝費や集客経路の資料
  • 医師・スタッフの雇用状況がわかる資料

個人情報や患者情報の取扱いには十分配慮し、買い手への開示範囲を段階的に検討する必要があります。

医療機器・リース・前受金などを確認する

医療機器の設備台帳、リース契約、借入金、保守契約などを整理しましょう。

美容皮膚科では、施術契約の未消化分と前受金残高の確認も重要です。

どの資産・負債・契約を引き継ぐかは、取引スキームと個別契約の内容に応じて判断する必要があります。

個人開設と医療法人で異なる譲渡方法を確認する

クリニックのM&Aでは、開設主体によって利用できる取引方法や必要な手続きが異なります。

個人開設のクリニックでは、設備や事業資産などを譲渡する事業譲渡が選択肢となります。

医療法人では、法人形態や出資持分の有無に応じて、社員・役員の変更、持分の譲渡、事業譲渡などの方法を検討することがあります。

ただし、医療法人は株式会社と同じ仕組みではなく、すべての法人で出資持分を譲渡できるわけではありません。

また、保険医療機関の開設者が変更となる場合、従前の医療機関の廃止と新たな開設、保険医療機関の指定申請などが必要になることがあります。一定の条件では例外的な遡及指定が認められる場合もありますが、適用条件や手続き時期については事前確認が必要です。

実際の売却では、所管の保健所、地方厚生局、医療法務に詳しい専門家などに確認し、診療を継続できるスケジュールを検討しましょう。

参考:東海北陸厚生局「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて」(2026年8月6日掲載、9月1日からの変更)

秘密を守りながら買い手候補を探す

売却を検討していることが早期にスタッフや患者へ伝わると、不安を招く可能性があります。

そのため、買い手候補との情報共有では、秘密保持契約や開示範囲の調整が重要です。

また、買い手の資金力や運営体制を確認し、売却価格だけでなく、従業員の雇用継続や診療方針なども含めて条件を検討する必要があります。

中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版では、不適切な買い手への対応、経営者保証、仲介手数料の説明などについても注意事項が示されています。

眼科・皮膚科クリニックのM&Aでよくある質問(FAQ)

Q1. 自由診療比率が低くてもクリニックは売却できますか?

はい。自由診療比率が低くても売却を検討できます。保険診療中心であっても、安定した患者基盤や利益、診療体制などが評価される可能性があります。

Q2. 赤字の眼科・皮膚科クリニックでも売却できますか?

赤字でも売却を検討できる場合があります。立地、医療機器、患者基盤などに価値が認められれば、買い手が関心を持つ可能性があります。ただし、売却の成立や希望価格での譲渡が保証されるものではありません。

Q3. 院長が引退する場合も売却できますか?

院長の引退を前提とした売却も検討できます。ただし、診療を継続するためには後任医師の確保が重要です。必要に応じて引継ぎ期間を設けることも検討します。

Q4. 美容医療機器にリース残債があっても売却できますか?

リース残債がある場合も売却を検討できます。ただし、契約の承継や精算方法は個別の契約条件によって異なります。事前にリース会社へ確認することが重要です。

まとめ|自由診療比率だけでなく、承継後の収益力が重要

眼科・皮膚科クリニックのM&A・売却では、自由診療比率が評価に影響する場合があります。しかし、その割合だけで売却価格が決まるわけではありません。

利益率、医療機器、患者基盤、医師・スタッフ体制、買収後の事業継続性などを総合的に確認する必要があります。

特に院長の引退を考えている場合は、経営資料の整理や後任医師の確保など、早い段階から準備を進めることが望ましいでしょう。

【免責事項】本記事は、眼科・皮膚科クリニックのM&A・売却に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・税務・行政手続きに関する助言ではありません。具体的な譲渡スキーム、税務上の取扱い、必要な許認可・届出、患者契約の承継については、弁護士、税理士、所管行政機関などの専門家にご確認ください。制度や法令は改正される場合があります。

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松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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