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介護M&Aのスキーム比較|株式譲渡・事業譲渡

介護事業のM&Aでは、「株式譲渡」と「事業譲渡」が代表的な手法として知られています。しかし、実際には「会社分割」や「合併」といった組織再編の手法が選択されるケースもあり、どのスキームを選ぶかによって、引き継ぐ対象や必要な手続き、利用者・職員への影響が変わります。

介護事業は、介護保険法に基づく指定や利用者との契約、職員の雇用など、一般的な事業とは異なる要素が多くあります。そのため、「どの方法が一般的か」ではなく、「自社の状況に合った方法はどれか」という視点で検討することが重要です。

この記事では、介護M&Aで利用される4つのスキームの特徴や違いを比較し、それぞれが向いているケースや選び方のポイントを分かりやすく解説します。

介護M&Aで使われる4つのスキームとは

M&A(企業の合併・買収)には複数の手法があり、譲渡する範囲や目的によって適したスキームは異なります。

中小企業庁が公表している「中小M&Aガイドライン(第3版)」や「事業承継ガイドライン」でも、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併などが代表的な手法として紹介されています。

スキーム概要向いているケース
株式譲渡会社(法人)ごと承継する方法法人全体を第三者へ引き継ぎたい
事業譲渡特定の事業のみを譲渡する方法一部事業だけ売却したい
会社分割事業を切り出して別法人へ承継する方法事業再編を行いたい
合併複数法人を一つへ統合する方法法人を一本化したい

一見すると似ているように見えますが、引き継ぐ対象や手続きの内容は大きく異なります。特に介護事業では、行政指定や利用者契約への影響も考慮する必要があるため、スキーム選びはM&A成功の重要なポイントになります。

株式譲渡

株式譲渡とは、会社の株式を買い手へ譲渡することで、経営権そのものを引き継ぐ方法です。

法人格はそのまま存続するため、会社が保有する資産や負債、契約関係なども原則として引き継がれます。この特徴から、中小企業のM&Aでは採用されるケースが多く見られます。

主なメリット

  • 法人格を維持したまま承継しやすい
  • 利用者や取引先との契約を継続しやすい
  • 会社全体を一括で承継できる

注意したいポイント

  • 負債や潜在的なリスクも引き継ぐ可能性がある
  • 買い手によるデューデリジェンス(買収監査)が重要になる

例えば、デイサービス・訪問介護・居宅介護支援など複数の介護サービスを運営している法人を、そのまま第三者へ承継したい場合には、株式譲渡が有力な選択肢となります。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社全体ではなく、特定の事業だけを買い手へ引き継ぐスキームです。例えば、「デイサービス事業のみを譲渡したい」「訪問介護事業だけを売却したい」といったケースで活用されます。

会社自体は存続するため、売却後も他の事業を継続できる点が大きな特徴です。一方で、譲渡する資産や契約を個別に引き継ぐ必要がある場合があり、株式譲渡よりも手続きが複雑になることがあります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、株式譲渡とは異なる特徴を持つ代表的なスキームとして紹介されています。

主なメリット

  • 必要な事業だけを売却できる
  • 法人はそのまま残せる
  • 事業の整理や経営資源の集中につなげやすい

注意したいポイント

  • 契約や資産を個別に承継する必要がある場合がある
  • 介護事業では行政への届出や手続きが必要となるケースがある
  • 利用者や取引先への説明・調整が必要になる場合がある

会社分割

会社分割は、会社の一部事業を切り出し、別会社へ承継する組織再編の手法です。介護事業のみを独立させて売却したい場合や、複数事業を整理したい場合などに検討されることがあります。

事業譲渡と似ていますが、承継の仕組みや法的な手続きが異なるため、税務・法務を含めた専門的な検討が必要です。

合併

合併は、複数の法人を一つの法人へ統合する方法です。一般的な介護事業会社で利用されるケースは多くありませんが、グループ会社の再編や社会福祉法人の統合などで選択されることがあります。厚生労働省でも、社会福祉法人の合併や事業譲渡に関する手引きが公表されています。

株式譲渡と事業譲渡の違いを比較

介護M&Aで最も比較されるのが、「株式譲渡」と「事業譲渡」です。どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらが優れているというものではありません。重要なのは、自社の目的や状況に合ったスキームを選ぶことです。

比較項目株式譲渡事業譲渡
譲渡対象会社(法人)全体特定の事業のみ
法人格そのまま存続売り手法人は存続
契約原則として継続個別承継が必要な場合がある
負債原則として引き継ぐ対象を個別に定める
手続き比較的シンプル比較的多い
向いているケース法人ごと承継したい一部事業のみ売却したい

介護M&Aスキーム早見表

目的検討しやすいスキーム
法人全体を引き継ぎたい株式譲渡
デイサービスだけ売却したい事業譲渡
介護事業だけ切り離したい会社分割
複数法人を一本化したい合併

例えば、デイサービス・訪問介護・居宅介護支援事業を運営している法人が、そのうちデイサービスだけを譲渡したい場合には事業譲渡が選択肢になります。一方、法人そのものを後継者へ承継したい場合には株式譲渡が検討されるケースが多く見られます。実際のスキーム選択は、税務や法務だけでなく、行政手続きや買い手の意向も踏まえて総合的に判断することが重要です。

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介護M&Aでスキーム選びが重要な理由

介護M&Aでは、売却価格だけでなく、事業を円滑に引き継げるかという視点も欠かせません。介護事業は、利用者への継続的なサービス提供や職員の確保、行政指定などが事業運営の基盤となるため、スキームによって影響を受ける項目を事前に確認しておくことが大切です。

行政指定・届出への影響

介護サービス事業所は、介護保険法に基づく指定を受けて運営されています。M&Aのスキームによっては、変更届や新たな指定申請などの手続きが必要となる場合があります。必要な手続きはサービス種別や自治体によって異なるため、早い段階で確認しておくことが重要です。

利用者との契約

利用者に安心してサービスを継続していただくためには、契約関係への影響や説明のタイミングも重要になります。スキームによって契約の取り扱いが異なる場合があるため、利用者やご家族への丁寧な説明を心掛けましょう。

職員の雇用

介護事業では、職員の継続勤務が事業価値に大きく影響します。M&A後の処遇や勤務条件について十分な説明と調整を行うことで、不安の軽減や離職防止につながります。

介護M&Aのスキーム選択でよくある失敗例

税務だけを基準に決めてしまう

税務面は重要な判断材料ですが、それだけでスキームを決めると、行政手続きや契約関係への影響を見落としてしまう可能性があります。

行政手続きを後回しにする

介護事業では、行政への届出や指定に関する確認が必要になるケースがあります。準備が遅れると、スケジュールに影響する可能性もあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

職員・利用者への説明が遅れる

情報共有のタイミングを誤ると、不安から離職や利用控えにつながるおそれがあります。開示時期については、買い手や専門家と相談しながら慎重に進めることが大切です。

自社に合うスキームの選び方

こんな場合検討しやすいスキーム
法人全体を第三者へ承継したい株式譲渡
デイサービスだけ売却したい事業譲渡
介護事業のみ切り出したい会社分割
複数法人を一本化したい合併

実際には、税務・法務・行政手続きだけでなく、買い手の希望や将来の経営方針も踏まえて総合的に判断します。そのため、「どのスキームが一番良い」というものではなく、自社の状況に応じた選択が重要です。

スキーム選択で失敗しないためのポイント

  • 価格だけで判断しない
  • 行政手続きを事前に確認する
  • 契約関係を整理しておく
  • 職員や利用者への説明計画を立てる
  • 介護業界に詳しいM&A支援会社へ相談する

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まとめ

介護M&Aには、株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併といった複数のスキームがあり、それぞれ特徴や適したケースが異なります。

特に介護事業では、行政指定や利用者との契約、職員の雇用など、一般企業とは異なる視点が求められます。そのため、価格だけではなく、事業を円滑に引き継げる方法かどうかを含めて検討することが大切です。

「自社にはどのスキームが合っているのか分からない」「まずは売却の可能性や相場を知りたい」という場合は、介護業界に精通した専門家へ早めに相談することで、より納得感のある事業承継につながるでしょう。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、税務・法務・会計・行政手続きに関する個別の助言を行うものではありません。実際のM&Aにあたっては、税理士・弁護士・公認会計士・行政書士などの専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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