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介護タクシー売却・M&A|相場と手続きを解説

介護タクシーの売却は、車両1台の個人事業や赤字事業でも検討できる場合があります。ただし、一般に「介護タクシー」と呼ばれる事業には、許可制の福祉タクシー、登録制の福祉有償運送、訪問介護の通院等乗降介助が含まれます。まず自社の制度区分と譲渡対象を整理し、予約・請求・行政手続きに空白を生じさせない承継計画を立てることが重要です。

介護タクシーは売却・M&Aできる

介護タクシー事業は、株式譲渡や事業譲渡によって第三者へ承継できる可能性があります。後継者不在、経営者の体力面、乗務員の採用難、福祉車両の更新負担などを理由に、廃業前の選択肢としてM&Aを検討することも可能です。

ただし、売買契約を締結すれば、翌日から買い手が同じ条件で運行できるとは限りません。運送事業の許可、福祉有償運送の登録、訪問介護の指定はそれぞれ別の制度であり、法人・事業の譲渡方法によって必要な手続きが変わります。

売却を検討する際は、次の4つの台帳を作ると、自社の譲渡対象と課題を把握しやすくなります。

整理する台帳主な内容M&Aで確認すること
制度台帳許可、登録、指定、運送区域、運賃誰が、どの手続きで引き継ぐか
運行台帳車両、車庫、乗務員、保険、整備成約後も同じ体制で運行できるか
収益台帳運賃、介助料、介護報酬、保険外収入サービス別の採算と継続性
関係者台帳利用者、家族、病院、施設、ケアマネジャー契約・予約・紹介関係をどう引き継ぐか

介護タクシーと福祉有償運送は制度が異なる

許可制の福祉タクシー

国土交通省の案内では、福祉タクシー事業の正式名称は「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」です。事業開始には国土交通大臣の許可が必要で、申請は営業所を置く地域の運輸支局へ行います。

一般乗用旅客自動車運送事業の譲渡譲受、合併、分割などには認可等が必要です。事業譲渡では、契約上の成約日だけでなく、行政上の認可を受けて運行主体を変更できる日を確認しなければなりません。

登録制の福祉有償運送

福祉有償運送は、タクシー等による十分な輸送サービスを確保しにくい地域において、単独で公共交通機関を利用することが難しい登録会員を対象に行われる自家用有償旅客運送です。

道路運送法令に定める市町村やNPO法人、社会福祉法人等の非営利団体が実施主体となり、運輸支局長等の登録に加え、地域公共交通会議や運営協議会等における協議が必要です。国土交通省の案内では、株式会社・有限会社などの一般的な営利法人や個人は、この福祉有償運送制度の実施主体とは区別されています。

したがって、福祉有償運送を株式会社へ単純に売却し、既存の登録をそのまま使うことを前提にはできません。譲受候補の法人形態、登録の取扱い、地域での再協議の要否を自治体と管轄運輸支局へ確認してください。

訪問介護の通院等乗降介助

介護保険の「通院等乗降介助」を提供している場合は、運送事業だけでなく、指定訪問介護事業所としての指定、人員配置、ケアプラン、利用契約、介護報酬請求も確認します。

事業譲渡によって指定を受けている法人が変わる場合、譲受法人側で新たな指定申請等が必要になることがあります。自治体ごとに事前相談期限や必要書類が設定されている場合があるため、指定権者への確認が必要です。

介護サービスの指定承継については、関連記事「介護M&Aの許認可|指定承継の手続きを解説」もご参照ください。

介護タクシーの売却方法

項目株式譲渡事業譲渡
譲渡対象運営会社の株式契約で定めた資産・事業
運営法人同じ法人が存続譲受法人へ変更
許可・指定許可名義は同じ法人。ただし変更事項を確認譲渡譲受認可や新規指定等を確認
契約原則として法人内に残る相手方の承諾や再契約が必要になる場合がある
従業員雇用主となる法人は原則変わらない労働契約の承継には原則として本人の承諾が必要
負債・リスク法人内に残る引き継ぐ範囲を契約で定める

法人は株式譲渡を検討できる

株式会社が介護タクシーを運営している場合、株式譲渡によって法人格を維持したまま経営権を移す方法があります。法人が変わらないため、事業譲渡と比べて契約関係を維持しやすい傾向があります。

ただし、代表者、役員、名称、所在地、営業所、車庫、車両数などに変更があれば、届出や認可が必要になることがあります。また、過去の行政対応、債務、労務問題なども法人内に残るため、買い手はデューデリジェンスで内容を確認します。

個人事業は事業譲渡を中心に検討する

個人事業では株式が存在しないため、福祉車両、屋号、電話番号、予約方法、取引関係などを選んで譲渡する方法を検討します。介護タクシー事業の譲渡譲受認可の可否や買い手側の要件は、管轄運輸支局への事前相談が必要です。

M&Aの全体的な手順は「介護M&Aの流れ|相談から成約まで徹底解説」で詳しく解説しています。

介護タクシーの売却価格は何で決まるか

介護タクシーの売却価格について、すべての事業へ当てはめられる公的な相場や一律の倍率はありません。一般的には、車両などの資産と負債を時価に近づけて確認したうえで、譲渡後に期待できる収益や利用基盤などを考慮し、買い手との交渉で価格を決めます。

評価項目確認する内容
収益力一時的な支出や私的経費を調整した後の利益
車両年式、走行距離、福祉装備、整備履歴、ローン残高
利用実績定期利用の件数、利用頻度、予約の継続見込み
紹介経路病院、施設、ケアマネジャー等からの紹介状況
運行効率待機時間、空車回送、時間帯別・車両別の採算
人員乗務員や有資格者の継続勤務、代表者への依存度
追加投資車両更新、修繕、採用、システム導入に必要な費用

例えば、売上が同じ2社でも、定期予約を複数の乗務員で担当できる事業と、すべての利用者対応を代表者一人に依存する事業では、買い手から見た承継の難易度が異なります。売上高だけでなく、「現在の利益を誰が、どの設備で再現できるか」を説明できる状態にすることが重要です。

どのような買い手が想定されるか

  • 営業地域を広げたい介護タクシー・タクシー事業者
  • 通院支援との連携を検討する訪問介護事業者
  • 送迎や外出支援を強化したい介護・医療法人
  • 既存の車両・人員を活用したい地域交通事業者
  • 福祉有償運送の実施主体となる要件を満たす非営利団体

福祉有償運送を含む場合は、提示価格だけで買い手を選べません。譲受候補が実施主体の要件を満たすか、地域の移動支援を継続できるかを先に確認する必要があります。

介護タクシーの売却を決める前でも、制度区分、車両、収益、定期利用を整理することで、評価されやすい点と承継上の課題を確認できます。M&A承継サポートでは、秘密厳守で無料相談・無料簡易査定を受け付けています。

売却前に準備する資料

財務・車両資料

  • 直近数期分の決算書または確定申告書
  • 月別・サービス別・車両別の売上
  • 借入金、ローン、リース契約の一覧
  • 車検証、整備記録、事故・修理履歴
  • 燃料費、保険料、外注費などの内訳

許可・運行資料

  • 許可書、登録証、指定通知書
  • 事業計画、運賃関係の認可資料
  • 営業所・車庫の賃貸借契約書
  • 運行・点呼・安全管理関係の記録
  • 輸送実績報告書と行政への届出控え

利用・人員資料

  • 利用者数、地域、利用頻度の匿名集計
  • 定期予約の曜日・時間帯別一覧
  • 病院、施設、自治体等との契約
  • 従業員の勤務条件、保有資格、担当業務
  • 訪問介護を併設する場合の請求・運営指導資料

買い手が確認する内容は「介護M&AのDD|報酬返還・人員基準を解説」も参考になります。

介護タクシー売却の流れ

  1. 初期相談:売却理由、希望時期、譲れない条件を整理します。
  2. 簡易査定:財務、車両、制度区分、利用実績から評価の目安を検討します。
  3. 匿名での打診:社名や利用者を特定できない資料で買い手候補を探します。
  4. 面談・条件交渉:価格、雇用、車両、屋号、引継ぎ期間を協議します。
  5. 基本合意・調査:買い手が財務、法務、労務、許認可、運行状況を調査します。
  6. 行政手続きの確定:運輸支局、自治体、指定権者と必要な申請・届出を確認します。
  7. 最終契約・引継ぎ:行政上の条件を確認したうえで、決済と事業の引継ぎを行います。

引継ぎ日は、経営者の希望だけで決めず、定期通院、透析送迎、月末請求、自治体券の精算、車検、保険更新などの日程から逆算します。許可や指定に関する条件が整わなかった場合に備え、契約ではクロージングの前提条件や延期時の対応も確認します。

従業員・利用者情報を引き継ぐ際の注意点

事業譲渡によって従業員の労働契約を買い手へ移す場合は、原則として対象従業員の承諾が必要です。給与、勤務時間、勤務地、有給休暇、退職金、譲渡後の責任者などを整理してから説明します。

詳しくは「介護M&Aで従業員の雇用はどうなる?承継実務」をご参照ください。

利用者に関する個人データは、M&Aの交渉や事業承継に伴って提供できる場合があります。ただし、必要な範囲に限定し、秘密保持契約、目的外利用の禁止、安全管理、不成立時の返還・消去などを定めることが重要です。承継後も、従前の利用目的を超えて個人情報を利用する場合には、原則として本人同意が必要です。

初期段階では、氏名や住所を開示せず、利用地域、頻度、曜日、車いす対応の有無などを集計した資料を用いると、利用者のプライバシーに配慮しながら事業性を説明できます。

売却と廃業を比較する

項目売却・M&A廃業
利用者予約や利用契約を引き継げる可能性がある代替事業者の案内が必要
従業員雇用承継を交渉できる退職・解雇手続きが必要
車両事業の一部として評価される可能性がある個別に売却・処分する
経営者保証金融機関との解除交渉が必要借入金の返済・整理が必要
費用専門家費用・M&A手数料等原状回復、処分、清算等の費用

株式を売却しても、経営者保証が自動的に解除されるとは限りません。借入金がある場合は「個人保証解除はできる?介護M&Aの借入金と経営者保証」も確認してください。

介護タクシーの売却に関するFAQ

個人経営の介護タクシーでも売却できますか?

福祉車両、屋号、電話番号、予約関係などを対象とした事業譲渡を検討できます。ただし、買い手が運行を始めるための認可等について、管轄運輸支局への確認が必要です。

許可だけを買い手へ売ることはできますか?

許可を一般的な資産のように単独で売買することを前提にはできません。事業の譲渡譲受として認可要件を満たす必要があるため、車両、営業所、車庫、運行体制を含めて確認します。

福祉有償運送を株式会社へ譲渡できますか?

福祉有償運送は、道路運送法令で定められた非営利団体等を実施主体とする制度です。株式会社が既存登録をそのまま引き継ぐことを前提にはできないため、自治体と管轄運輸支局へ確認してください。【要確認】

車両1台や赤字の事業でも売却できますか?

定期利用、紹介経路、車両状態、営業地域、改善可能性などによっては検討できます。ただし、買い手が見つかることや希望価格での成約を保証するものではありません。

訪問介護と介護タクシーをまとめて売却できますか?

一体での譲渡を検討できますが、運送事業の許可と訪問介護事業所の指定は別制度です。譲渡範囲、人員配置、利用契約、介護報酬請求を分けて確認します。

まとめ|介護タクシー売却は譲渡対象の棚卸しから始める

介護タクシーの売却では、最初に許可制の福祉タクシー、登録制の福祉有償運送、訪問介護の通院等乗降介助を区別します。そのうえで、制度・運行・収益・関係者の4つの台帳を作り、買い手へ渡せるものと再手続きが必要なものを整理しましょう。

参考資料

本記事は2026年9月時点の公表資料をもとにした一般的な情報提供であり、個別の法務、税務、労務、許認可、介護保険、行政手続きに関する助言ではありません。必要な手続きは、法人形態、地域、事業内容、取引方法によって異なります。管轄運輸支局、自治体、指定権者および弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士等へ個別にご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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