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介護M&Aの許認可|指定承継の手続きを解説

介護事業のM&Aでは、「指定(許認可)は引き継げるのか」という疑問を持つ経営者の方が少なくありません。結論から言うと、指定(許認可)の取扱いはM&Aの手法によって異なります。株式譲渡では法人格が変わらないため指定が継続するのが一般的ですが、事業譲渡では原則として新たな指定申請が必要です。本記事では、介護M&Aにおける指定(許認可)の基本的な考え方から、行政手続き、実務上の注意点まで、初めてM&Aを検討する方にも分かりやすく解説します。

介護事業の指定(許認可)はM&Aで引き継げる?

介護事業では、売買価格や譲渡条件だけでなく、「指定(許認可)がどのように扱われるのか」が事業継続を左右する重要なポイントになります。

介護保険サービスは、介護保険法に基づき都道府県または市町村から指定を受けることで提供できます。そのため、M&A後も継続してサービスを提供するためには、指定の取扱いを正しく理解しておく必要があります。

特に事業譲渡では、指定手続きのスケジュールによってサービス開始時期や介護報酬請求へ影響する場合もあります。契約締結後に慌てないよう、M&Aの初期段階から確認しておきましょう。

介護事業における指定制度とは

訪問介護、通所介護、居宅介護支援などの介護保険サービスを提供するには、介護保険法に基づく指定を受ける必要があります。

指定を受ける際には、人員基準・設備基準・運営基準などを満たすことが求められます。また、指定後もこれらの基準を継続して満たす必要があり、代表者や管理者の変更、本店所在地の変更など一定の場合には変更届の提出が必要になります。

つまり、介護事業は一般企業とは異なり、「行政からの指定」が事業運営の前提となる業種です。そのため、M&Aでは財務や契約だけでなく、指定に関する実務も重要になります。

「法人」と「事業所」の違いを理解することが重要

指定(許認可)の取扱いを理解するためには、「法人」と「事業所」の違いを押さえておくことが大切です。

  • 法人:株式会社・合同会社・社会福祉法人など、事業を運営する主体
  • 事業所:デイサービス、訪問介護事業所、グループホームなど、実際に介護サービスを提供する拠点

株式譲渡では法人そのものは存続し、株主だけが変わります。一方、事業譲渡では事業を別法人へ移転するため、指定の取扱いも変わります。この違いを理解することが、介護M&Aを検討する第一歩です。

結論:M&A手法によって指定(許認可)の取扱いは異なる

介護事業の指定(許認可)は、一律に承継されるわけではありません。M&Aスキームごとに必要な手続きが異なります。

M&A手法指定(許認可)の取扱い主な行政手続き
株式譲渡法人格が維持されるため、指定は継続するのが一般的変更届など(必要に応じて)
事業譲渡原則として指定は承継されず、新たな指定が必要新規指定申請・廃止届など
合併・会社分割法人形態や承継方法によって異なる行政への事前確認が必要

なお、具体的な取扱いや必要書類は自治体によって異なる場合があります。契約締結後ではなく、基本合意やデューデリジェンスの段階から所轄自治体へ相談しておくと、手続きを円滑に進めやすくなります。

M&A手法ごとの指定(許認可)の違い

介護M&Aで多く利用される「株式譲渡」と「事業譲渡」では、指定(許認可)の取扱いが大きく異なります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

株式譲渡の場合

株式譲渡は、介護M&Aで最も多く採用されるスキームの一つです。

株式譲渡では法人格が変わらず、株主のみが変更されます。そのため、介護事業者として受けている指定や契約、資産・負債なども原則としてそのまま引き継がれます。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、株式譲渡では許認可等は原則存続すると示されています。

一方で、代表者や役員、管理者の変更などがある場合は、自治体への変更届が必要になるケースがあります。また、過去の行政指導や運営上の課題も承継されるため、デューデリジェンスで十分に確認することが重要です。

事業譲渡の場合

事業譲渡では、介護事業だけを別法人へ移転します。

この場合、指定は自動的には引き継がれず、譲受法人が新たに指定を受けることが原則です。売り手側では廃止届、買い手側では新規指定申請などが必要となるため、行政手続きのスケジュール管理が重要になります。

また、事業譲渡では利用契約の主体も変わるため、利用者やご家族への説明、契約の再締結が必要になる場合があります。厚生労働省の「合併・事業譲渡等マニュアル」でも、利用者への事前説明と同意の重要性が示されています。

合併・会社分割の場合

合併や会社分割では、法人の承継方法や法人形態によって指定の取扱いが異なります。

必要な手続きや承継の可否は個別事情によって異なるため、契約前の段階から所轄自治体へ確認することが重要です。特に複数事業所や複数自治体にまたがるケースでは、早期の相談が円滑な承継につながります。

指定承継で必要になる行政手続き

介護M&Aでは、契約締結や価格交渉だけでなく、行政手続きを適切なタイミングで進めることが重要です。特に事業譲渡では、指定(許認可)の取得時期がサービス開始日に直結するため、行政手続きを考慮したスケジュールを組む必要があります。

また、中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、M&Aの手法によって許認可の承継可否が異なるため、早い段階で確認することが重要とされています。

株式譲渡では変更届が必要になる場合がある

株式譲渡では法人格が変わらないため、介護事業者としての指定は継続するのが一般的です。

ただし、代表者・役員・管理者・法人所在地などに変更が生じる場合は、介護保険法に基づく変更届の提出が必要になるケースがあります。

変更事項や提出期限、必要書類は自治体によって異なるため、クロージング後ではなく、M&A実行前から所轄自治体へ確認しておくことが重要です。

事業譲渡では新規指定申請が必要

事業譲渡では、事業を別法人へ移転するため、介護事業者としての指定は原則として承継されません。

そのため、譲受法人では新たな指定申請を行い、譲渡法人では廃止届などの手続きを行うことになります。必要書類や審査期間は自治体によって異なるため、希望する承継日から逆算して準備を進めることが重要です。

また、指定取得が完了する前に事業を開始することはできないため、行政手続きをM&Aスケジュールの中心に据えて計画を立てる必要があります。

行政への事前相談が成功のポイント

介護事業の指定制度は自治体が所管しているため、M&Aでは行政との事前相談が欠かせません。

特に以下の内容は、早い段階で確認しておくことをおすすめします。

  • 採用予定のM&Aスキーム
  • 承継予定日
  • 必要となる届出・申請書類
  • 指定番号の取扱い
  • 介護報酬請求への影響
  • 利用者との契約手続き

厚生労働省の「合併・事業譲渡等マニュアル」でも、行政との十分なコミュニケーションを図りながら進めることが推奨されています。

スケジュール管理が重要な理由

介護M&Aでは、「契約締結日」よりも「指定取得日」の方が重要になるケースもあります。

指定取得が予定より遅れると、サービス開始や介護報酬請求に影響する可能性があります。そのため、行政手続きだけでなく、利用者説明や職員への周知、システム変更なども含めてスケジュールを管理することが大切です。

特に事業譲渡では、契約締結後ではなく基本合意の段階から行政手続きを見据えて準備を始めることで、円滑な承継につながりやすくなります。

無料相談・無料簡易査定
「自社ではどのような行政手続きが必要なのか分からない」「指定申請のスケジュールを相談したい」という方は、M&A承継サポートへお気軽にご相談ください。介護・医療・障がい福祉分野に特化したアドバイザーが、事業内容に応じた進め方をご案内いたします。

利用者・職員への影響と対応

介護M&Aでは、指定(許認可)の手続きだけでなく、利用者や職員への対応も重要な実務です。特に事業譲渡では契約主体が変更されるため、事前準備が欠かせません。

利用者・ご家族への説明

利用者やご家族が最も気になるのは、「これまでどおりサービスを利用できるのか」という点です。

株式譲渡ではサービス内容に大きな変更がないケースも多い一方、事業譲渡では契約主体が変わるため、契約の再締結や説明が必要になる場合があります。

説明のタイミングや方法については、行政や買い手企業とも相談しながら進めることが望ましいでしょう。

ケアマネジャー・関係機関との連携

居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、医療機関などの関係機関とも、適切なタイミングで情報共有を行うことが重要です。

サービス提供体制や連絡先の変更などを早めに共有することで、利用者への影響を最小限に抑えやすくなります。

職員の雇用

介護事業では、人材が事業価値そのものと言っても過言ではありません。

そのため、給与や勤務条件、組織体制などに変更がある場合は、できるだけ早い段階で丁寧に説明し、不安を軽減することが大切です。

厚生労働省の「事業譲渡等指針」でも、事業譲渡では労働者への十分な説明や手続きを行うことが求められています。

介護M&Aで失敗しやすいポイント

行政への相談が遅れる

契約締結後に行政へ相談した結果、予定していたスケジュールで指定を取得できないケースがあります。

指定更新時期を確認していない

指定更新とM&Aの時期が重なると、提出書類や行政との調整が増える可能性があります。更新時期は早めに確認しておきましょう。

指定関係のデューデリジェンスが不十分

財務だけでなく、行政指導履歴や人員基準、運営基準の遵守状況なども確認することが重要です。

自治体ごとの運用差を考慮していない

介護保険制度は全国共通ですが、提出書類や運用方法は自治体によって異なる場合があります。「他の自治体では問題なかった」という理由だけで判断せず、所轄自治体へ確認しましょう。

介護M&A前に確認したいチェックリスト

  • □ M&Aスキームを決定した
  • □ 所轄自治体へ事前相談した
  • □ 指定更新時期を確認した
  • □ 必要な届出・指定申請を整理した
  • □ 利用者・職員への説明時期を決めた
  • □ デューデリジェンスで指定関係資料を確認した

これらを事前に整理しておくことで、指定手続きの漏れやスケジュール遅延のリスクを抑えやすくなります。

まとめ

介護事業の指定(許認可)は、M&Aを行えば自動的に引き継がれるものではありません。特に重要なのは、採用するM&Aスキームによって必要な行政手続きが異なる点です。

M&Aスキーム指定(許認可)の取扱い
株式譲渡法人格が変わらないため、指定は継続するのが一般的
事業譲渡原則として新たな指定申請が必要
合併・会社分割ケースごとに行政への確認が必要

また、指定(許認可)の承継だけでなく、利用者・ご家族への説明、職員対応、介護報酬請求、行政との調整なども含めて準備を進めることが、円滑な事業承継につながります。

介護M&Aでは、契約締結後ではなく、検討段階から行政や専門家へ相談することで、スケジュールの遅延や手続き漏れを防ぎやすくなります。

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の税務・法務・会計・行政手続きに関する助言を行うものではありません。実際の指定(許認可)の取扱いや必要手続きは、M&Aスキームや法人形態、サービス種別、所轄自治体の運用によって異なる場合があります。具体的な対応については、所轄行政機関または専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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