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歯科医院の廃業と売却|閉院コストを比較

歯科医院の廃業と売却を比較するときは、売却価格ではなく、原状回復費、医療機器の処分費、税金などを差し引いた「最終的な手残り」で判断することが重要です。第三者への売却が成立すれば、閉院に伴う支出を抑え、患者やスタッフを後継者へ引き継げる可能性があります。ただし、買い手が見つかる保証はないため、解約や撤去を始める前に売却査定と閉院見積もりを比較しましょう。

歯科医院の廃業と売却はどちらが得なのか

金銭面だけで見れば、第三者への売却が成立した場合は、廃業よりも手残りが多くなる可能性があります。廃業では設備・内装を撤去するために費用が発生しますが、売却では、それらを事業の一部として買い手へ引き継げる場合があるためです。

ただし、売却すれば必ず利益が残るわけではありません。買い手が見つからない場合や、借入金、リース残高、仲介手数料、税金などを差し引くと、想定した手残りにならない場合もあります。

比較項目廃業・閉院売却・第三者承継
医院の事業終了する買い手が継続する
設備・内装売却、撤去または処分条件次第で承継できる
原状回復賃貸借契約に応じて実施貸主の承諾等により回避できる場合がある
スタッフ退職に伴う対応が必要本人同意を前提に雇用承継を協議
患者転院先の案内が必要後継医院で診療を継続できる可能性がある
金銭面撤去・処分などの支出が中心譲渡対価を得られる可能性がある
実行可能性自院の判断で進めやすい買い手との合意が必要

どちらが得かを判断するには、次の2つを個別に試算します。

  • 廃業後に残る資金:設備等の売却収入から、撤去、処分、解約、退職、債務整理等の費用を差し引く
  • 売却後に残る資金:譲渡対価から、仲介手数料、税金、債務整理、引継ぎ等の費用を差し引く

譲渡対価が大きくなくても、原状回復や設備処分を回避できれば、廃業より負担を抑えられることがあります。反対に、売却価格が高くても、借入金や税負担を考慮すると、手残りが少なくなる場合があります。

歯科医院の廃業で発生する主なコスト

閉院費用は、医院の広さ、建物の所有形態、設備数、スタッフ数、賃貸借契約などによって大きく異なります。全国一律の相場を当てはめるのではなく、自院の契約書と現場を確認したうえで見積もることが重要です。

テナントの原状回復・スケルトン工事

賃貸物件の場合は、賃貸借契約で定められた状態へ戻す必要があります。歯科医院には床下配管、X線室、造作壁、看板などが設けられているため、一般的な事務所より工事範囲が広くなる場合があります。

保証金から原状回復費を差し引けるか、指定工事業者が決められているか、退去予告が何か月前かなども確認しましょう。

医療機器・薬品・個人情報書類の処分

歯科ユニット、レントゲン、コンプレッサーなどは、一般の粗大ごみとして処分できない場合があります。医療廃棄物や薬品についても、品目に応じた適切な処理が必要です。

紙カルテや患者情報を含む書類は、保存義務の有無を確認したうえで、保存対象と廃棄対象に分けます。不要になった書類も、個人情報が読み取れない方法で処理しなければなりません。

リース・借入金・各種契約の精算

医療機器、複合機、予約システムなどにリース期間が残っている場合は、中途解約金や残債が発生する可能性があります。ホームページ、電話、警備、廃棄物処理、保守契約なども一覧にして、解約期限と費用を確認します。

スタッフの退職に伴う費用と手続き

閉院する場合は、解雇予告、未消化の有給休暇、退職金規程、社会保険・雇用保険の手続きなどを確認します。就業規則や雇用契約によって対応が異なるため、社会保険労務士などへの確認が必要です。

閉院後の記録保管と専門家費用

閉院後も保存が必要な診療録や会計書類があります。保管場所、管理責任者、患者から照会があった場合の対応を決めなければなりません。

個人開設の廃業、医療法人の診療所廃止、医療法人自体の解散では、必要な手続きが異なります。税理士、行政書士、司法書士などへの報酬も事前に見積もっておきましょう。

歯科医院の売却で発生する費用と確認事項

歯科医院の売却でも費用がまったくかからないわけではありません。主なものは、M&A支援会社への手数料、税理士・弁護士等への報酬、譲渡に伴う税金、契約上の問題を整理する費用です。

M&A支援会社の手数料

料金体系は支援会社によって異なります。着手金、中間金、月額報酬、成功報酬、最低報酬、別途実費の有無を確認してください。

「完全成功報酬」と記載されていても、どの時点を成約とするか、成功報酬を何に対して計算するか、専門家費用が含まれるかは契約によって異なります。

譲渡に伴う税金

税務上の取扱いは、個人開設か医療法人か、設備、棚卸資産、営業上の権利、土地・建物など、何を譲渡するかによって変わります。医療法人についても、出資持分の有無や採用する承継方法によって課税関係が異なります。

譲渡価格をそのまま手残りと考えず、契約締結前に税理士へ税額試算を依頼してください。

借入金・リース・賃貸借契約

事業譲渡では、借入金や契約が自動的に買い手へ移るとは限りません。リース会社や貸主の承諾、買い手による審査、新規契約が必要になる場合があります。

売却が成立しても原状回復義務が残る契約であれば、売り手に費用が発生します。「事業を売却すること」と「退去費用を免れること」は分けて確認しましょう。

行政上の閉院手続きと事業の廃業は同じではない

歯科医院を売却しても、現在の開設手続きや保険医療機関指定を、そのまま買い手へ移せるとは限りません。特に個人開設の歯科医院で開設者が変わる場合は、売り手側の廃止と、買い手側の開設・保険医療機関指定に関する手続きが必要になることがあります。

行政上の廃止届を提出しても、患者、スタッフ、設備、診療体制などが後継者へ引き継がれるのであれば、事業を誰にも引き継がず終了する廃業とは意味が異なります。

個人開設の歯科医院

個人開設では、設備、在庫、契約関係、営業上の権利などを選別して引き継ぐ事業譲渡が主な選択肢になります。買い手は新しい開設者として必要な手続きを行います。

個人歯科医院の事業譲渡については、個人歯科医院の売却・事業譲渡の進め方もあわせてご覧ください。

医療法人が運営する歯科医院

医療法人では、法人を存続させて社員・役員等を変更する方法、事業譲渡、合併などが検討されます。ただし、法人形態、出資持分、基金、定款、社員構成、所管行政庁の手続きによって選択肢が異なります。

一般企業の株式譲渡と同じ感覚で進めることはできないため、医療法人制度に詳しい専門家への確認が必要です。

廃止・開設の日程を管轄機関と調整する

2026年8月時点の自治体案内では、歯科診療所を廃止した場合、廃止後10日以内の届出が案内されています。また、保険医療機関の廃止は、管轄する地方厚生局への届出が必要です。

歯科用X線装置を廃止する場合も、所管保健所への届出が必要になります。提出書類や取扱いは所在地・承継方法によって異なるため、売り手と買い手の手続きを一つの工程表にまとめ、管轄保健所・地方厚生局へ事前に確認してください。

廃業前に確認したい歯科医院の売却可能性

確認項目主な確認内容
立地・診療圏アクセス、人口動態、競合医院、駐車場
収益性売上・利益の推移、保険診療と自費診療の構成
診療の継続性再来状況、定期管理、訪問診療、院長依存度
スタッフ職種、人数、勤続年数、雇用条件、継続意向
設備年式、保守履歴、所有・リースの別、残債
物件家賃、契約期間、原状回復条件、貸主の意向
引継ぎ院長が診療や患者説明に協力できる期間

赤字でも売却を検討できる場合がある

赤字だから直ちに売却できないと決まるわけではありません。一時的な設備投資や院長報酬を調整すると実質的な収益が見込める場合、立地やスタッフ体制などが評価される場合は、買い手候補が見つかる可能性があります。

ただし、赤字の原因が継続的な患者減少、高額な家賃、人材不足、重大な法令・契約上の問題にある場合は、承継の難易度が上がります。赤字を伏せるのではなく、原因と改善可能性を資料で説明することが重要です。

設備が古くても検討対象になる場合がある

設備が古くても、買い手が初期投資を抑えられると判断すれば、居抜きでの承継を検討する場合があります。一方、修理履歴が不明、リース残高が大きい、更新費用が高額になる場合は、譲渡条件の調整が必要です。

売却前に設備を更新しても、その投資額が譲渡価格へ反映されるとは限りません。高額な更新や撤去を行う前に、買い手側の需要を確認しましょう。

閉院費用を支払う前に、売却可能性を確認してみませんか。
「赤字でも相談できるか」「廃業と売却のどちらが手元に残るか分からない」という段階でも、無料簡易査定をご利用いただけます。情報の開示範囲や匿名概要での買い手打診についても、初回相談時にご確認ください。

スタッフと患者情報の引継ぎで注意すること

事業譲渡ではスタッフの個別同意が重要

事業譲渡では、スタッフの労働契約が当然に買い手へ移るわけではありません。買い手側の労働条件、勤務場所、業務内容などを説明し、承継予定者から個別に同意を得るなど、適切な手続きが必要です。

厚生労働省の事業譲渡等指針は2026年5月25日から改正内容が適用されています。実際の説明方法や解雇・再雇用の取扱いは、社会保険労務士や弁護士へ確認してください。

患者情報は事業承継後も目的外利用できない

個人情報保護法上、合併その他の事由による事業承継に伴って個人データが提供される場合、提供先が「第三者」に該当しない取扱いがあります。ただし、承継後も、承継前の利用目的の範囲内で個人データを取り扱うことが原則です。

患者情報を単なる売買対象として扱うのではなく、診療継続に必要な情報として、安全管理、アクセス権限、患者への案内、問い合わせ窓口などを整備する必要があります。

診療録の保存義務を確認する

歯科医師法第23条では、診療録について5年間の保存が定められています。閉院しただけで保存義務がなくなるわけではありません。

ただし、X線画像、技工関連書類、会計書類などは、それぞれ根拠法令や必要な保存期間が異なる場合があります。「すべて5年間」と一括せず、記録の種類ごとに保存期間、管理責任者、保存場所を整理してください。

売却と計画閉院を並行して進める手順

  1. 閉院した場合の費用を見積もる
    原状回復、設備処分、リース解約、スタッフ対応、記録保管などを一覧にします。
  2. 売却した場合の査定と費用を確認する
    譲渡対価だけでなく、仲介手数料、税金、債務整理費用を含めて試算します。
  3. 賃貸借契約から期限を逆算する
    退去予告期間、契約満了日、原状回復工事に必要な期間を確認します。
  4. 買い手を探す期限を決める
    期限までに具体的な候補が見つからなければ、計画閉院へ切り替えられるよう準備します。
  5. 患者・スタッフへの説明計画を作る
    売却成立時と閉院時の両方について、告知時期と対応内容を整理します。

早い段階で廃業か売却かを一つに決める必要はありません。売却活動に期限を設け、その間に閉院準備も進めることで、買い手が見つからなかった場合の混乱を抑えやすくなります。

歯科医院の廃業と売却に関するよくある質問

赤字の歯科医院でも売却できますか?

赤字でも、立地、スタッフ、物件条件、診療の継続性などが評価され、買い手候補が見つかる可能性があります。ただし、赤字の原因や債務状況によって難易度は異なり、成約を保証するものではありません。

医療機器にリースが残っていても売却できますか?

売却の検討は可能ですが、リース契約を買い手へ移すにはリース会社の承諾が必要になる場合があります。買い手による承継、売り手による精算、機器の返却などを個別に調整します。

売却価格はどのように決まりますか?

収益性、資産・負債、診療の継続性、立地、設備、スタッフ体制、院長への依存度などを総合して検討します。最終的な価格は、買い手の評価と条件交渉によって決まります。

患者やスタッフにはいつ伝えるべきですか?

買い手との条件が固まり、承継の実現可能性が高まった段階で説明する方法が考えられます。ただし、雇用や継続診療への影響を踏まえ、医院ごとに告知時期と順序を設計する必要があります。

買い手が見つからなかった場合はどうなりますか?

設定した期限までに買い手が見つからなければ、設備の個別売却、居抜き物件としての募集、患者の転院案内、計画閉院へ切り替えます。売却活動を始める段階で代替案も準備しておくことが重要です。

まとめ|歯科医院の廃業前に売却可能性を比較しよう

歯科医院の廃業では、原状回復、医療機器の処分、リース解約、スタッフ対応、記録保管など、複数の費用と手続きが発生します。売却が成立すれば、それらの負担を一部抑えながら、診療体制を後継者へ引き継げる可能性があります。

ただし、売却の可否は、収益性だけでなく、立地、診療の継続性、スタッフ、物件契約、設備、引継ぎ期間などによって変わります。テナントの解約、設備撤去、閉院告知を始める前に、売却査定と閉院見積もりを同じ条件で比較してください。

後継者不在時の選択肢を詳しく知りたい方は、後継者がいない歯科医院の第三者承継と廃院の比較も参考にしてください。

本記事は2026年8月時点の公表情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の税務・法務・労務・行政手続きに関する助言ではありません。必要な手続きや税務上の取扱いは、所在地、開設形態、契約内容などによって異なります。税理士、弁護士、社会保険労務士、行政書士および管轄する保健所・地方厚生局等へご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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