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同行援護の売却・M&A|価格と指定・人材の注意点

同行援護の事業所は、M&Aによる売却・事業承継を検討できます。価格を左右するのは売上規模だけでなく、承継後の収益、人材の定着、指定手続き、利用者への支援継続です。行動援護などを併営する場合は、サービスごとの研修・実務経験要件も確認します。本記事では、同行援護の売却価格の考え方、買い手が確認する資料、指定や雇用の注意点、売却までの進め方を解説します。

同行援護の事業所は売却できる?対象事業を整理する

後継者がいない、採用が難しい、経営者が現場から離れられないといった場合、第三者への承継は選択肢になります。ただし、買い手が見つかるか、希望条件で合意できるかは、事業の状態と相手方の判断によって異なります。

同行援護・行動援護・移動支援の違い

外出を支えるサービスでも、制度や必要な人材は同じではありません。売却対象を整理する際は、指定通知や自治体との契約をもとに、運営しているサービスを区別します。

サービス制度・支援の概要売却時の確認
同行援護視覚障害により移動が著しく困難な人への情報提供、移動の援護などを行う障害福祉サービス指定、研修・実務経験、外出支援の体制
行動援護知的・精神障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する人への危険回避などを行う障害福祉サービス指定、研修・実務経験、支援方法の引継ぎ
移動支援市町村の地域生活支援事業として行われる外出支援自治体ごとの対象、従業者要件、登録・契約等

表は概要です。個別の利用要件や支援範囲は、支給決定や自治体の取扱いも確認してください。

複数サービスをまとめるか、一部だけ譲渡するか

居宅介護や重度訪問介護などを併営している場合は、法人全体の承継と、同行援護部分の事業譲渡を比較します。同行援護だけを切り離す場合、担当職員、利用契約、事務所、請求業務をどこまで分離できるかが論点です。

例えば、同じ職員が居宅介護と同行援護を担当している事業所では、同行援護に関係する職員を移すことで、売り手側に残る事業の運営が難しくなる可能性があります。譲渡する側と残る側の双方について、人員と収支を確認します。

同行援護の売却価格・相場はどう考える?

同行援護の売却価格は、売上だけから一律に決められるものではありません。資産・負債、継続的な収益力、類似取引、買い手が見込む事業上の効果などを材料に交渉します。公開案件の譲渡希望額も、実際の成約額とは区別する必要があります。

経営者が離れた後に残る利益を確認する

経営者が管理者やサービス提供責任者、現場の支援者を兼ねている場合、退任後には後任の給与や採用費が必要になることがあります。現在の決算上の利益が、そのまま買い手の利益になるとは限りません。

例えば、経営者が少額の役員報酬で多くの支援を担っている場合、後任を雇うと収益が下がることがあります。一方、一時的な修繕費などは継続費用と分けて検討できます。役員報酬を単純に全額利益へ戻すような計算は避け、実際に必要な業務と費用を確認します。

登録人数より、利用実績と勤務負担を見る

利用者数が同じでも、月ごとの利用時間、キャンセル、支援場所、職員の配置によって収益は変わります。例えば登録者が増えていても、土日に依頼が集中し、対応できる職員が不足していれば、安定した増収につながるとは限りません。

同行援護では、報酬を算定する支援時間と、訪問間の移動・待機などに要する時間を分けて把握することが有用です。厚生労働省の2026年9月24日資料では、ヘルパー自身が自動車を運転して利用者を移送する時間は、報酬算定の対象外と整理されています。移動を伴う支援全般が算定対象外という意味ではありません。

出典:厚生労働省「訪問系サービスに係る報酬・基準について」

提示価格と手元に残る金額を分ける

譲渡価格を比較する際は、仲介手数料、専門家費用、税金、借入金や役員借入金の扱いも確認します。株式譲渡と事業譲渡では、代金を受け取る主体や課税関係が異なります。

「譲渡価格が高いか」だけでなく、支払時期、分割払いの有無、経営者の引継ぎ業務、個人保証への対応を含めて条件を比較しましょう。手取り額は税理士等と個別に試算します。

【無料簡易査定】
同行援護の売却価格を検討する際は、決算書に加え、サービス別の売上や職員体制も整理すると相談を進めやすくなります。まずはM&A承継サポートの無料査定をご利用ください。査定結果は成約価格を保証するものではありません。

買い手が確認する資料と運営上のポイント

買い手によるデューデリジェンスとは、価格や契約条件を判断するために事業の実態を調べることです。資料の有無だけでなく、記載内容と実際の運営が一致しているかが確認されます。

確認分野用意する資料の例整理したい内容
財務・利用実績決算書、月次収支、サービス別売上・利用時間継続的な利益、特定利用者への売上集中
人員・資格勤務表、雇用契約、研修修了証、実務経験証明書配置、兼務、退職予定、後任候補
指定・行政対応指定通知、変更届、運営指導結果、改善報告届出漏れ、未改善事項、更新時期
請求・支援記録サービス提供記録、国保連請求、加算届請求根拠、返戻・過誤・返還の状況
契約・支援継続利用契約、賃貸借契約、支援手順、緊急連絡体制契約切替、担当変更、事故・苦情への対応

人数ではなく、勤務実態と要件を確認する

同行援護・行動援護では、従業者について原則として常勤換算2.5人以上の配置が求められます。常勤換算は、在籍人数を数える方法ではありません。勤務時間や兼務の扱いを確認し、事業規模に応じたサービス提供責任者の配置も点検します。

複数サービスを一体的に運営している場合は、人員配置の取扱いを指定権者へ確認してください。同じ職員をそれぞれのサービスで自由に重複計上できると考えるのは危険です。

請求と記録の不一致は、改善状況まで説明する

加算の届出があっても、算定期間中に要件を満たしていたかは別の確認です。勤務記録、研修記録、支援記録を請求内容と照合します。返戻・過誤・返還も、原因と対応を分けて整理します。

運営指導で指摘された事項がある場合は、指摘内容、対応日、改善を確認できる資料をまとめます。未解決の問題を伏せたまま交渉すると、調査後の条件変更や契約上の争いにつながりかねません。

調査の全体像は、デューデリジェンスの種類と流れも参考にしてください。

同行援護・行動援護の研修要件と経過措置

同行援護は資格名だけで配置を判断しない

同行援護では、従業者とサービス提供責任者の要件を分けて確認します。一般課程・応用課程の修了状況、保有資格、実務経験などを職員ごとに整理してください。

2025年4月からは、一般課程の修了と視覚障害者の介護等の実務経験3年以上に加え、応用課程の修了を組み合わせるサービス提供責任者の要件が追加されています。「一般課程と経験があれば足りる」とは扱わず、応用課程の受講時期や適用される課程も確認します。

実務経験は、勤続年数だけで判断できません。対象となる業務、従事期間、実際の従事日数を証明書で確認します。

行動援護は研修と直接支援の経験を確認する

行動援護の基本的な要件は、行動援護従業者養成研修等の修了に加え、知的障害児者・精神障害者への直接支援の実務経験です。サービス提供責任者は3年以上、従業者は1年以上が基本となり、従事日数の確認も必要です。

強度行動障害支援者養成研修による要件確認では、基礎研修と実践研修の修了状況を確認します。研修名が似ていることだけを理由に、他サービスの研修で代替できるとは判断しないでください。

経過措置の延長案を前提に人員計画を立てない

行動援護には、一定の資格・実務経験等の条件を満たす人を対象とする、2027年3月31日までの経過措置があります。適用の判定では、2021年3月31日時点の要件充足状況も確認が必要です。

2026年9月24日の厚生労働省資料には、対象者を限定し、減算措置を設けたうえで3年間延長する検討案が示されています。ただし、同資料は制度決定を示すものではありません。売却準備では受講予定と後任候補を整理し、実行時点の告示・通知を確認します。

出典:徳島県「訪問系事業所向け情報」、兵庫県の指定申請関係資料、厚生労働省の報酬改定検討資料

株式譲渡と事業譲渡で指定・雇用の扱いが変わる

項目株式譲渡事業譲渡
運営法人同じ株式会社が存続する譲受法人へ対象事業を移す
指定法人は変わらないが、代表者等の変更手続きを確認する原則として譲受法人による新規指定が必要
雇用雇用主は原則として変わらない労働契約の承継には職員の個別承諾が必要
契約・債務原則として法人に残る対象範囲と必要な承諾等を個別に整理する

株式譲渡は株式会社を前提とした方法です。合同会社やNPO法人などでは法人形態に応じた承継方法を検討します。

指定手続きの簡素化は、自動承継ではない

厚生労働省等の2024年6月21日付事務連絡では、事業譲渡等で別法人が事業所を引き継ぐ場合の新規指定と、実質的に継続運営される場合の手続き簡素化・報酬上の実績通算が整理されています。簡素化が適用されても、新規指定が不要になるわけではありません。

売却を具体化する段階で、指定権者に譲渡方法、人員・設備の変更予定、希望日程を伝えます。新規指定日、旧事業所の廃止日、加算届や請求の切替を調整し、支援が途切れない日程を組みます。

出典:吸収合併等に伴う事務の簡素化について、障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン

職員への説明・協議に必要な時間を確保する

事業譲渡で労働契約を承継する場合、職員本人の個別承諾が必要です。秘密保持に配慮しながら、買い手の運営方針、給与、勤務場所、担当業務を説明し、検討と協議の時間を確保します。最終契約後に一律に通知するだけでは不十分になり得ます。

出典:厚生労働省「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」

同行援護の売却を進める流れと支援の引継ぎ

  1. 売却理由、希望時期、職員の雇用や支援継続に関する条件を整理する
  2. 秘密保持の取決めを行い、資料整理と簡易査定を進める
  3. 譲渡方法を検討し、行政手続きの見通しを早期に確認する
  4. 匿名情報で候補を探し、面談・条件交渉・基本合意へ進む
  5. 買い手による調査を受け、価格と契約条件を詰める
  6. 職員との協議、利用者への説明、指定申請等を日程に沿って進める
  7. 最終契約で定めた条件を確認して譲渡を実行し、運営を引き継ぐ

実際の順序は案件によって異なり、行政相談や職員対応を並行して進める場合があります。契約締結と譲渡実行は別の日になることもあり、新規指定などを実行条件として整理します。

担当者が変わっても支援できる状態をつくる

同行援護では、利用者の希望、情報の伝え方、慣れた経路、休憩の取り方など、担当者が蓄積している情報があります。行動援護を併営している場合は、不安が強まる場面や落ち着いて過ごせる関わり方も、支援手順として共有することが大切です。

利用者・家族には、運営法人、担当者、連絡先、契約や支援内容の変更点を説明します。買い手への資料開示は必要性に応じて段階的に行い、個人情報を含む記録の提供・管理方法も確認します。

例えば承継前後の初回支援について、同行する職員、緊急連絡先、記録の保管先を決めておくと、現場での確認漏れを減らせます。価格交渉と並行して、こうした運営の引継ぎ内容を具体化しましょう。

関連する注意点は、障がい福祉M&Aの注意点と想定トラブルでも解説しています。

同行援護の売却に関するよくある質問

赤字や小規模の事業所でも売却できますか?

検討は可能です。人材、支援体制、地域での関係性などを買い手が評価する場合があります。ただし、成約は保証されません。赤字の原因と承継後の改善可能性を説明できるようにします。

同行援護だけを切り離して売却できますか?

事業譲渡などで検討できます。ただし、職員や事務所を他サービスと共用している場合は、分離後も双方の人員・運営体制が成り立つか確認が必要です。

現在の指定を、そのまま買い手へ渡せますか?

別法人への事業譲渡では、原則として譲受法人の新規指定が必要です。手続き簡素化や実績通算の適用は、具体的な承継内容を示して指定権者へ確認します。

職員にはいつ売却を伝えるべきですか?

譲渡方法と必要な手続きに応じて計画します。特に事業譲渡では、雇用条件等を説明し、労働契約の承継について本人が検討・協議できる時間を確保します。

査定前に何を用意すればよいですか?

直近の決算書・月次収支、サービス別売上、職員体制、指定通知などが出発点になります。利用時間、資格・研修資料、借入状況も整理し、不足資料は相談先に確認してください。

まとめ|同行援護の売却は承継後の運営から考える

同行援護の売却では、価格だけでなく、経営者が離れた後の収益、人員要件、指定手続き、利用者への支援継続を確認します。まずはサービス別収支と職員の要件を整理し、引継ぎに必要な期間を把握することが出発点です。

※本記事は2026年10月7日時点で確認した公表資料に基づく一般的な情報提供です。個別の法務・税務・労務・指定申請に関する助言や、売却成立・譲渡価格を保証するものではありません。制度改正、研修要件、指定・請求の取扱いは、取引実行時点の資料と指定権者の案内を確認し、必要に応じて弁護士・税理士・社会保険労務士等へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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