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のれん代とは?医療介護M&Aでの計算方法を解説

のれん代(営業権)とは、企業が持つ「目に見えない価値」を金額で表したものです。M&Aでは、建物や設備などの資産だけでなく、ブランド力や利用者・患者との信頼関係、人材、ノウハウなども企業価値として評価されるため、純資産を上回る価格で取引されることがあります。本記事では、のれん代とは何か、営業権との違い、計算方法、医療・介護・障がい福祉・歯科M&Aで評価されるポイントをわかりやすく解説します。

のれん代(営業権)とは?

のれん代とは、企業が持つ帳簿には表れない価値(無形資産)を評価したものです。

企業には、建物や設備、現金などの資産だけではなく、長年培ってきた信用やブランド、人材、顧客基盤など、将来の利益につながる価値があります。M&Aでは、こうした目に見えない価値も企業価値に含めて評価されることがあります。

のれん代とは目に見えない企業価値

例えば、次のようなものは帳簿には金額として表れませんが、買い手にとって価値のある資産となる場合があります。

  • 地域で築いた信頼やブランド
  • 利用者・患者との継続的な関係
  • 優秀な職員や教育体制
  • 独自のノウハウ
  • 紹介ルートやネットワーク
  • 安定した収益力

これらが将来も利益を生み出すと期待される場合、その価値が「のれん」として企業価値に反映されます。

営業権との違い

中小企業M&Aの実務では、「営業権」と「のれん」がほぼ同じ意味で使われることがあります。

一方で、会計や税務では両者の定義や取り扱いが異なる場合があるため、契約書や会計処理では専門家へ確認することが重要です。

項目概要
のれんM&Aで買収価格が純資産を上回ることで生じる差額を指す会計上の概念
営業権実務や税務で用いられることがある用語で、企業の営業上の価値を表す場合がある

のれん代が発生する理由

企業価値は、保有している資産だけでは決まりません。

買い手は「将来どれだけ利益を生み出せるか」という点も重視して企業を評価します。そのため、純資産以上の価格で譲渡される場合、その差額がのれんとして評価されることがあります。

有形資産だけでは企業価値を表せないため

例えば、どちらも時価純資産が3,000万円の会社があったとしても、片方は毎年安定した利益を生み出し、もう片方は赤字が続いている場合、両社を同じ価値として評価することは一般的ではありません。

利益を継続的に生み出せる会社ほど、買い手は純資産以上の価格で取得する価値があると判断する場合があります。

代表的なのれんの例

  • 地域でのブランド力
  • 利用者・患者との信頼関係
  • 紹介ネットワーク
  • 優秀な人材
  • 高い稼働率・患者数
  • 教育体制や業務マニュアル

これらは帳簿には記載されませんが、将来の利益につながる可能性があるため、M&Aでは重要な評価対象になります。

のれん代(営業権)の計算方法

のれん代には法律で決められた計算式はありません。

企業価値の算定方法には、時価純資産法、DCF法、マルチプル法など複数の手法があり、案件の内容に応じて使い分けられます。

そのうえで、一般的な考え方としては、企業価値から時価純資産を差し引いた金額を「のれん」と考えることが多くあります。

項目内容
企業価値買収価格(評価額)
時価純資産資産と負債を時価評価した価値
のれん代企業価値 − 時価純資産

計算例

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

項目金額
企業価値(譲渡価格)4,500万円
時価純資産3,000万円
のれん代1,500万円

この場合、買い手は建物や設備だけでなく、将来の収益力やブランド、人材などの価値も含めて評価していると考えられます。

のれん代は誰が決める?

「のれん代はいくらになるのか」は、売り手だけでも買い手だけでも決められるものではありません。

企業価値評価の結果を参考にしながら、売り手・買い手双方が交渉を行い、最終的な譲渡価格が決定されます。

そのため、「利益の○年分だから必ずこの金額になる」といった決まりはなく、業績や将来性、業界動向、買い手とのシナジーなどを踏まえて総合的に判断されます。中小企業庁でも、バリュエーション(企業価値評価)は複数の手法を用いて実施し、前提条件や評価方法について十分な説明を行うことが望ましいとしています。

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医療・介護・障がい福祉・歯科M&Aでは何が「のれん」として評価される?

医療・介護・障がい福祉・歯科のM&Aでは、建物や設備などの有形資産だけではなく、事業を継続することで将来も利益を生み出せる「目に見えない価値」が重視されます。

ただし、評価されるポイントは業種によって異なります。以下は代表的な例です。

業種評価されやすい要素
介護稼働率、職員定着率、ケアマネジャーとの関係、地域での認知度
障がい福祉利用者の継続率、支援体制、地域連携、職員配置
医療患者数、紹介患者、診療圏での信頼、医療スタッフ体制
歯科定期メンテナンス患者、自費診療比率、歯科衛生士体制、医院ブランド

このような要素は貸借対照表には表れませんが、将来も安定した収益につながると期待される場合、企業価値の一部として評価されることがあります。

介護事業で評価されやすいポイント

介護事業では、人材確保が経営課題となるケースが多いため、職員が定着していること自体が大きな強みになる場合があります。

  • 高い入居率・利用率を維持している
  • 介護職員の離職率が低い
  • ケアマネジャーや地域包括支援センターとの信頼関係がある
  • 行政指導が少なく、適切な運営体制が整っている
  • 地域での評判が良い

これらは、買収後も安定した事業運営が期待できる要素として評価されやすい傾向があります。

障がい福祉事業で評価されやすいポイント

障がい福祉事業では、利用者との継続的な関係や支援体制の充実が重要視されます。

  • 利用者の継続率が高い
  • 相談支援事業所との連携がある
  • 支援記録や運営マニュアルが整備されている
  • 経験豊富な職員が在籍している

なお、障がい福祉サービスの指定そのものを売買することはできません。M&Aでは、事業承継に伴う手続きを経て事業を継続することが前提となるため、必要な行政手続きは自治体へ確認することが重要です。

医療機関で評価されやすいポイント

医療法人やクリニックでは、患者基盤や地域での信頼が企業価値に影響することがあります。

  • 継続して通院する患者が多い
  • 紹介患者が安定している
  • 地域で高い認知度がある
  • 医師・看護師などの体制が整っている
  • 設備投資が適切に行われている

診療科目や立地条件、競合状況なども評価要素の一つになります。

歯科医院で評価されやすいポイント

歯科医院では、自費診療だけでなく、継続的に来院する患者の多さも重要な評価要素になります。

  • 定期メンテナンス患者が多い
  • 自費診療比率が高い
  • 歯科衛生士が定着している
  • 院長以外でも診療体制を維持できる
  • 口コミや地域での知名度が高い

一方で、院長個人への依存度が高い場合は、承継後の患者離れが懸念されるため、評価に影響することがあります。

のれん代が評価されやすい会社・評価が低くなりやすい会社

評価されやすい傾向評価が低くなりやすい傾向
利益が安定している利益の変動が大きい
利用者・患者が定着している利用者・患者数が減少している
職員の定着率が高い離職率が高い
業務マニュアルが整備されている属人的な運営になっている
代表者が不在でも運営できる代表者への依存度が高い

もちろん、これらに当てはまるからといって必ず高く評価されるわけではありません。最終的な譲渡価格は、企業価値評価に加え、買い手との交渉や市場環境なども踏まえて決定されます。

のれん代に関する注意点

のれん代が付かないケースもある

すべてのM&Aでのれん代が発生するわけではありません。

将来の収益性が見込めない場合や、設備更新など多額の投資が必要な場合には、時価純資産を基準とした価格で譲渡されるケースもあります。

「負ののれん」が発生することもある

企業価値が時価純資産を下回る価格で譲渡されるケースでは、「負ののれん」と呼ばれることがあります。

赤字だから必ず負ののれんになるわけではなく、今後の収益性や再建可能性などを含めて総合的に判断されます。

のれん代だけで譲渡価格は決まらない

譲渡価格は、のれん代だけで決定されるものではありません。

  • 時価純資産
  • 収益力
  • 将来性
  • 市場環境
  • 買い手とのシナジー
  • 交渉結果

これらを総合的に考慮したうえで、売り手・買い手双方が合意した価格が最終的な譲渡価格となります。

M&Aで企業価値を高めるためにできること

売却を検討している場合は、日頃から企業価値を高める取り組みを進めることが重要です。

  • 利益を安定させる
  • 利用者・患者の継続率を高める
  • 職員が定着しやすい環境を整える
  • 業務マニュアルを整備する
  • 代表者への依存度を下げる
  • 早い段階からM&A専門家へ相談する

売却直前に準備を始めるよりも、数年前から事業承継を見据えて改善を進めることで、買い手から評価される可能性があります。ただし、企業価値や譲渡価格は個別事情によって異なります。

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まとめ

のれん代(営業権)とは、企業が持つ目に見えない価値を表すものであり、M&Aにおいて企業価値を考えるうえで重要な要素です。

医療・介護・障がい福祉・歯科では、利用者・患者との信頼関係やスタッフの定着状況、地域での評判などが評価されることがあります。一方で、のれん代は一定の計算式だけで決まるものではなく、企業価値評価や将来性、買い手とのシナジー、交渉結果などを総合的に踏まえて決定されます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務・会計・行政手続きに関する助言を行うものではありません。実際のM&Aや事業承継については、公認会計士・税理士・弁護士などの専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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