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介護の事業承継補助金はM&Aに使える?2026年版

介護事業のM&Aでは、国の「事業承継・M&A補助金」を活用できる場合があります。一定の条件を満たせば、M&A仲介手数料や専門家への依頼費用などが補助対象となります。ただし、運営法人の種類や事業規模、契約時期などによって利用できるかどうかは異なります。本記事では、2026年10月時点の制度をもとに、介護事業者が知っておきたい補助金の対象条件、補助額、申請手順、注意点をわかりやすく解説します。

介護M&Aで使える事業承継・M&A補助金とは?

事業承継・M&A補助金は、中小企業や小規模事業者が事業承継・M&Aに取り組む際に発生する費用の一部を支援する制度です。

介護事業では、経営者の高齢化や後継者不足などにより、第三者への事業譲渡を検討するケースがあります。しかし、M&Aを進めるには仲介手数料や専門家による調査費用などが必要になる場合があり、費用面に不安を感じる経営者もいるでしょう。

こうした費用負担の軽減につながる選択肢の一つが、事業承継・M&A補助金です。

旧「事業承継・引継ぎ補助金」との違い

現在の「事業承継・M&A補助金」は、以前の「事業承継・引継ぎ補助金」を引き継いだ制度です。

令和6年度補正予算に基づく制度から名称が変更され、M&A後の経営統合を支援する枠などが設けられました。

2026年10月時点では、以下の4つの枠があります。

  • 事業承継促進枠:親族・従業員への承継に伴う設備投資などを支援
  • 専門家活用枠:M&A仲介手数料や専門家費用などを支援
  • PMI推進枠:M&A後の経営統合に関する費用を支援
  • 廃業・再チャレンジ枠:一定の廃業費用などを支援

介護事業の売却を検討している経営者にとって、特に関係が深いのが「専門家活用枠」です。

出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金の制度解説」(2025年8月22日公開、2026年3月25日更新)

2026年の最新公募情報

2026年10月29日時点では、第16次公募の申請を受け付けています。

項目内容
制度名事業承継・M&A補助金
公募回第16次公募
申請受付開始2026年10月2日
申請受付終了2026年11月6日17時
申請方法Jグランツによる電子申請
必要なアカウントGビズIDプライム

なお、事務局は申請内容に不備があった場合の差戻し・修正を希望する事業者に対し、締切5営業日前にあたる2026年10月29日までの提出を推奨しています。

最終期限まで申請は可能ですが、余裕を持った準備が大切です。

公募日程は変更される場合があるため、最新の受付状況は公式サイトで確認しましょう。

出典:中小企業庁「第16次公募の公募要領を公表」(2026年9月4日)

介護事業者は事業承継補助金の対象になる?

介護事業で補助金を活用できるかどうかは、運営法人の種類や事業規模などによって異なります。

介護施設や訪問介護事業所を運営しているという理由だけで、すべての事業者が補助対象になるわけではありません。

補助対象となる介護事業者の基本条件

第16次公募の専門家活用枠では、中小企業基本法に準じた中小企業者等が主な対象となります。

介護事業者が一般的なサービス業に該当する場合、資本金5,000万円以下、または常時使用する従業員100人以下という中小企業者の規模基準が目安になります。

ただし、実際の業種分類や申請資格は個別に判断されます。

また、次の条件にも注意が必要です。

  • 法人は申請時点で3期分の決算・申告を完了していること
  • 個人事業主は開業届と青色申告承認申請書の提出から5年経過していること
  • 大企業の出資割合などによる対象外条件に該当しないこと
  • 対象となるM&Aや事業承継の要件を満たすこと

開業して間もない介護事業所では、決算期数などの条件により申請できない場合があります。

株式会社・社会福祉法人などの法人形態による違い

第16次公募の専門家活用枠における主な取扱いは以下のとおりです。

運営形態補助対象の可能性
株式会社要件を満たせば対象
合同会社要件を満たせば対象
個人事業主要件を満たせば対象
社会福祉法人対象外
医療法人対象外
NPO法人対象外

例えば、株式会社が運営する訪問介護事業所は、必要な条件を満たせば申請対象となる可能性があります。

一方、社会福祉法人や医療法人は、第16次公募の専門家活用枠では対象外とされています。

この表は専門家活用枠について整理したものであり、すべての補助金制度に共通するものではありません。

売り手と買い手では申請する類型が異なる

介護事業のM&Aでは、売却する側と買収する側で検討する類型が異なります。

  • 売り手支援類型:介護事業を第三者へ譲渡する場合
  • 買い手支援類型:介護事業を買収して経営資源を引き継ぐ場合
  • 小規模売り手支援類型:小規模事業者等が第三者へ譲渡する場合

例えば、後継者不在のデイサービス事業所を売却する場合は、売り手支援類型を検討できます。

なお、株式譲渡によって会社を売却する場合には、対象会社と支配株主などによる共同申請が必要になるケースがあります。

事業譲渡と株式譲渡では申請主体や手続きが異なるため、M&Aの方法を整理してから確認しましょう。

出典:事業承継・M&A補助金事務局「第16次公募 専門家活用枠 公募要領」(2026年9月)

介護M&Aで利用できる補助金の種類と補助額

専門家活用枠|介護事業の売却・買収費用を支援

専門家活用枠では、M&A仲介会社やFAへの依頼費用、デュー・ディリジェンス(DD)費用などが補助対象となる場合があります。

FAとは、M&Aの交渉や契約について専門的な助言を行うアドバイザーです。

第16次公募の補助率・上限額は次のとおりです。

類型補助率補助上限額
売り手支援類型原則1/2以内、一定条件で2/3以内600万円、DD費用加算時は最大800万円
買い手支援類型2/3以内600万円、DD費用加算時は最大800万円
小規模売り手支援類型2/3以内450万円

※買い手支援類型の100億企業特例では、補助率・上限額が異なります。

売り手支援類型では、直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合など、一定条件を満たすと補助率が2/3以内になる可能性があります。

例えば、補助対象経費が300万円で補助率1/2が適用される場合、計算上の補助額は150万円です。

ただし、実際に交付される金額は審査や経費の認定結果によって決まります。

事業承継促進枠|親族・従業員への承継を支援

事業承継促進枠は、5年以内に親族または従業員へ事業を引き継ぐ予定の中小企業者等を対象とする制度です。

主に設備投資や施設の改修などに関する費用を支援します。

第16次公募では、補助率は原則1/2以内、小規模事業者等は2/3以内です。補助上限額は原則800万円で、一定の賃上げ要件を満たす場合には1,000万円となります。

親族や従業員への承継を考えている介護事業者は、設備投資の必要性と合わせて検討するとよいでしょう。

PMI推進枠|M&A後の経営統合を支援

PMIとは、M&A後に組織や業務体制などを統合する取り組みです。

介護事業では、勤怠管理、給与体系、介護請求業務などを統一する場面が考えられます。

第16次公募では、PMI専門家活用類型の補助上限額は150万円、事業統合投資類型は原則800万円です。一定の賃上げ要件を満たす場合、事業統合投資類型の上限額は1,000万円となります。

ただし、すべてのシステム導入費や経営統合費用が対象になるわけではありません。

廃業・再チャレンジ枠|一定の廃業費用を支援

廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに関連して既存事業を廃業し、新たな取り組みに挑戦する場合などを支援する制度です。

第16次公募では、補助上限額は300万円です。専門家活用枠などと併用する場合は、廃業費用の上乗せ上限額が適用されます。

なお、単に赤字の介護事業所を閉鎖するだけで補助される制度ではありません。

廃業・再チャレンジの要件を満たす必要があります。

出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金 第16次公募概要」(2026年9月)

介護M&Aで補助対象になる費用・ならない費用

M&A仲介手数料や専門家費用

専門家活用枠では、次のような費用が補助対象になる場合があります。

  • M&A仲介手数料
  • FAへの依頼費用
  • デュー・ディリジェンス費用
  • セカンドオピニオンに関する費用
  • 一定の表明保証保険料

デュー・ディリジェンスとは、買収対象となる事業の財務状況や法的リスクなどを調査することです。

介護事業では、利用者数、職員配置、介護報酬の請求状況、指定基準への適合状況などが確認対象になることがあります。

なお、仲介・FA費用については、M&A支援機関登録制度に登録された事業者へ依頼することなどが条件です。

仲介手数料には相見積もりの条件がある

補助金を利用する場合、専門家を選ぶ際の手続きにも注意が必要です。

第16次公募では、原則として2者以上から見積もりを取得する必要があります。

仲介・FA費用については、比較先もM&A支援機関登録制度に登録されている必要があります。

また、原則として最低価格を提示した事業者を選ぶことが求められます。

例外的な取扱いもありますが、選定理由を説明すれば必ず認められるわけではありません。

補助金の活用を予定している場合は、仲介会社を決める前に条件を確認しましょう。

補助対象外となる主な費用

費用補助対象の考え方
M&A仲介手数料登録・契約時期などの条件を満たせば対象
DD費用一定条件を満たせば対象
設備投資費用申請枠によって対象となる場合がある
株式・事業の買収代金原則対象外
交付決定前に契約した仲介費用原則対象外
対象期間外の費用原則対象外

専門家活用枠では、原則として交付決定後の補助事業期間内に契約・発注から支払いまでを行う必要があります。

また、補助対象経費の支払い方法は、原則として申請者名義の口座からの銀行振込、またはクレジットカードの1回払いに限られます。

出典:事業承継・M&A補助金事務局「第16次公募 専門家活用枠FAQ」(2026年)

介護事業の売却を検討している方へ
補助金の条件を確認するだけでなく、ご自身の介護事業がどの程度の価格で売却できる可能性があるのかを把握することも重要です。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい分野に特化したM&Aの無料相談・無料簡易査定を行っています。着手金・中間金無料の完全成功報酬制で、秘密厳守のもとご相談いただけます。

介護事業者が補助金を申請する流れと必要書類

STEP1|補助対象となる条件を確認する

まずは、法人形態、事業規模、M&Aの方法などを整理します。

売り手・買い手のどちらに該当するのか、株式譲渡と事業譲渡のどちらを予定しているのかを明確にしましょう。

また、介護事業者として必要な指定手続きも確認しておくことが重要です。

STEP2|GビズIDを取得する

電子申請にはGビズIDプライムが必要です。

中小企業庁の2026年9月公表資料では、取得に2〜3週間程度かかる場合があると案内されています。

補助金の申請期限が近い場合は、アカウントの取得状況を早めに確認しましょう。

STEP3|申請書類を準備する

専門家活用枠では、申請者の状況に応じて次のような資料が必要になります。

  • 履歴事項全部証明書
  • 直近3期分の決算書
  • 事業計画に関する情報
  • 従業員の雇用状況を確認できる資料
  • その他、公募要領で指定された書類

個人事業主の場合は、確定申告書や青色申告決算書などが必要です。

なお、第16次公募の専門家活用枠では、見積書は原則として公募申請時ではなく、採択後の交付申請時に提出します。

STEP4|Jグランツから電子申請する

必要書類がそろったら、Jグランツを通じて申請します。

申請後は審査が行われ、採択結果が通知されます。

採択された場合でも、その段階で補助金の交付が確定するわけではありません。

STEP5|交付決定後に事業を実施する

採択後に交付申請を行い、交付決定通知を受けてから補助事業を開始します。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 公募申請
  2. 審査・採択
  3. 交付申請
  4. 交付決定
  5. 補助対象事業の実施
  6. 実績報告
  7. 補助金額の確定
  8. 補助金の請求・受給

補助金は原則として後払いです。

そのため、仲介手数料などの支払いに必要な資金を、事前に確保しておくことが重要です。

出典:事業承継・M&A補助金事務局「第16次公募 公募申請手続き」(2026年)

介護事業の補助金活用で注意したい5つのポイント

① 補助金の採択・交付は保証されない

補助金には審査があるため、申請しても採択されない場合があります。

また、採択後も実績報告などの内容によって補助額が減額される可能性があります。

介護事業の売却計画は、補助金が受給できない場合も想定して進めることが大切です。

② M&Aが成立しなかった場合は対象経費が限定される

補助事業期間内にM&Aが成立しなかった場合でも、一部の費用が補助対象になるケースがあります。

ただし、第16次公募では、補助上限額が原則300万円に引き下げられます。小規模売り手支援類型では50万円です。

また、買い手支援類型では原則DD費用のみ、売り手支援類型ではDD費用やシステム利用料などに対象が限定されます。

小規模売り手支援類型では、着手金、システム利用料、DD費用が対象となる場合があります。

未成立時にすべての仲介費用が補助されるわけではない点に注意しましょう。

③ 介護保険事業者の指定・届出を確認する

介護事業のM&Aでは、補助金とは別に介護保険法上の手続きが必要になる場合があります。

例えば、事業譲渡によって運営法人が変わる場合、新たな指定申請が必要となることがあります。

一方、株式譲渡では法人自体は存続するため、事業譲渡とは手続きが異なります。

ただし、実際の手続きはサービス種別や指定権者によって異なるため、事前確認が必要です。

訪問介護、通所介護、認知症対応型共同生活介護など、運営しているサービスに応じて自治体等に確認しましょう。

④ 職員・利用者への影響を考慮する

介護事業のM&Aでは、職員の雇用継続や利用者へのサービス提供にも配慮する必要があります。

事業譲渡の場合、労働契約の承継には原則として労働者本人の承諾が必要です。

また、利用者や家族への説明、サービス契約の取扱いなども検討する必要があります。

職員や利用者が安心して事業承継後も関わり続けられるよう、引継ぎ計画を整えることが重要です。

参考:厚生労働省「企業組織の再編に伴う労働契約の承継等」

⑤ 補助金だけでM&Aの条件を判断しない

補助金を利用できたとしても、それだけで望ましい事業承継になるとは限りません。

例えば、売却価格が希望に合っていても、職員の雇用条件や利用者へのサービス提供体制について十分に確認できていなければ、譲渡後に問題が生じる可能性があります。

補助金は費用負担を軽減するための手段の一つと考え、売却条件全体を検討しましょう。

介護事業の補助金活用を想定した3つのケース

ここでは、介護事業のM&Aにおける補助金活用の可能性を、仮想ケースで紹介します。実際の採択事例ではありません。

ケース①|後継者不在の訪問介護事業所を売却する場合

株式会社が運営する訪問介護事業所で、経営者が引退を検討しているケースです。

親族や従業員に後継者がおらず、第三者への事業譲渡を進める場合、専門家活用枠の売り手支援類型が候補になります。

ただし、法人の決算期数や事業規模、仲介契約の時期などの条件を満たす必要があります。

ケース②|デイサービス事業所を買収する場合

既存の介護事業者が、新たな地域でデイサービス事業所を買収するケースです。

買収前に財務状況や介護報酬の請求状況などを調査する場合、DD費用が補助対象となる可能性があります。

また、買収後に業務システムや経営体制を統合する場合は、PMI推進枠も検討対象となります。

ケース③|赤字の介護事業所を譲渡する場合

赤字が続いている介護事業所でも、条件を満たせば補助金を申請できる場合があります。

第16次公募では、売り手支援類型の補助率が引き上げられる条件の一つに、直近決算期の営業利益または経常利益が赤字であることが含まれています。

ただし、赤字であることだけで採択が決まるわけではありません。

事業の継続可能性や譲渡先の検討など、補助金以外の課題も整理することが重要です。

介護事業の事業承継補助金に関するよくある質問

Q1. 赤字の介護事業所でも補助金を申請できますか?

赤字でも申請できる場合があります。第16次公募の売り手支援類型では、一定の赤字条件などを満たした場合に補助率が2/3以内に引き上げられる仕組みがあります。ただし、法人形態や事業規模などの条件も満たす必要があります。

Q2. 社会福祉法人が運営する介護施設も対象ですか?

第16次公募の専門家活用枠では、社会福祉法人は対象外です。他の支援制度については、自治体や関係機関へ確認しましょう。

Q3. M&Aが成立しなかった場合も補助金を受け取れますか?

一部の経費が補助対象になる場合があります。ただし、補助上限額が減額されるほか、対象となる経費も限定されます。類型ごとの条件を確認する必要があります。

Q4. 補助金を申請する前にM&A仲介会社へ相談できますか?

相談すること自体は可能です。ただし、仲介手数料を補助対象とする場合は、契約時期や仲介会社の登録状況などに条件があります。正式な契約前に確認しましょう。

Q5. 補助金を利用せずに介護事業を売却できますか?

可能です。補助金は事業承継を支援する制度であり、利用しなければ売却できないわけではありません。事業の状況や希望する譲渡時期に応じて検討しましょう。

まとめ|介護M&Aの補助金を確認し、事業承継の準備を進めよう

介護事業のM&Aでは、事業承継・M&A補助金を活用することで、仲介手数料や専門家費用などの一部を抑えられる可能性があります。

ただし、法人形態や事業規模、契約時期、対象経費などに条件があります。

補助金の活用を検討する際は、最新の公募要領を確認するとともに、ご自身の事業の売却価値や引継ぎ条件も整理しておくことが大切です。

免責事項:本記事は2026年10月29日時点の公的情報をもとに作成した一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務・法務・行政手続きに関する助言ではありません。補助金制度の内容や公募条件は変更される場合があります。実際の申請や事業承継にあたっては、最新の公募要領をご確認のうえ、必要に応じて税理士・弁護士・行政書士などの専門家や関係行政機関へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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