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医療法人 歯科 売却|出資持分と社員退社を解説

医療法人(歯科)の売却・M&Aは、株式会社の事業承継とは仕組みが大きく異なります。特に理解しておきたいのが、「出資持分」と「社員(法人の構成員)」の考え方です。これらは売却方法や承継手続きに大きく関わるため、正しく理解していないと、手続きが複雑になったり、想定外の課題が生じたりする可能性があります。本記事では、医療法人の基本的な仕組みから、出資持分と社員退社の論点、売却時に押さえておきたいポイントまでを、歯科医院の院長にも分かりやすく解説します。

医療法人(歯科)の売却・M&Aは株式会社と何が違う?

歯科医院を法人化している場合、「会社を売却する」と同じように考えてしまう方も少なくありません。しかし、医療法人は医療法に基づいて設立される法人であり、株式会社とは制度や承継方法が異なります。その違いを理解することが、適切なM&Aを進める第一歩です。

医療法人には株式が存在しない

株式会社では、株主が保有する株式を譲渡することで経営権を移転できます。一方、医療法人には株式会社のような株式制度はなく、剰余金の配当も認められていません。そのため、歯科医院を売却する際も、単純な「株式譲渡」という方法は採用できません。

実際には、法人形態や定款の内容、出資持分の有無、社員や役員の構成などを踏まえて承継方法を検討することになります。

M&Aで承継されるもの

医療法人のM&Aでは、次のような経営資源を引き継ぐケースが一般的です。

  • 歯科医院・分院の運営体制
  • スタッフとの雇用関係
  • 患者との継続的な診療体制
  • 医療機器・設備
  • 賃貸借契約などの各種契約
  • 地域で築いてきた信用やブランド

どのような形で承継するかは法人ごとに異なるため、個別の状況に応じた検討が必要です。

歯科医院でもM&Aは有力な事業承継の選択肢

近年は院長の高齢化や後継者不足を背景に、歯科医院でもM&Aによる事業承継を選択するケースが増えています。

買い手は、患者基盤やスタッフ、設備などを引き継げる可能性があり、売り手は閉院ではなく地域医療を継続できる可能性があります。双方のニーズが合致すれば、有力な承継方法の一つとなります。

出資持分とは?持分あり・持分なしの違い

医療法人のM&Aで最も混同されやすいのが「出資持分」です。自院が「持分あり医療法人」なのか、「持分なし医療法人」なのかによって、検討すべき論点が異なります。

出資持分とは

出資持分とは、持分の定めがある社団医療法人において、出資者が有する財産権を指します。退社時の払戻請求権や解散時の残余財産分配請求権などに関係しますが、株式会社の株式とは法的性質が異なります。

また、出資持分を保有していることと、法人運営における議決権を有することは同じ意味ではありません。

持分あり医療法人とは

持分あり医療法人では、出資持分が存在します。そのため、M&Aでは出資持分の取扱いや税務面についても検討が必要となる場合があります。

ただし、具体的な課税関係や承継方法は法人の状況によって異なるため、税理士などの専門家へ確認することが重要です。

持分なし医療法人とは

2007年(平成19年)の医療法改正以降、新たに設立される社団医療法人は、原則として「持分の定めのない医療法人」とされています。一方、それ以前に設立された持分あり医療法人は、経過措置型医療法人として現在も存続しています。

持分なし医療法人では、出資持分の譲渡という考え方ではなく、社員や役員体制など法人運営の承継が中心となるケースが一般的です。ただし、具体的な承継方法は定款や法人の状況によって異なります。

比較項目持分あり医療法人持分なし医療法人
出資持分あるない
払戻請求権あるない
M&A時の主な論点出資持分の取扱い社員・役員体制の承継
新規設立不可(経過措置法人のみ存続)原則こちら

売却への影響

持分の有無だけで売却方法が決まるわけではありません。定款の内容、社員構成、役員構成、買い手の希望などを総合的に踏まえ、適切な承継方法を設計することが重要です。

社員退社が重要になる理由

医療法人のM&Aでは、「社員」という言葉が頻繁に登場します。しかし、この社員は会社で働く従業員とは全く異なる意味を持っています。この違いを理解しておくことは、医療法人の承継を考えるうえで欠かせません。

社員とは何か

医療法人における社員とは、法人の構成員であり、社員総会を構成するメンバーです。社員総会は社団医療法人の最高意思決定機関であり、社員は出資持分の有無や金額に関係なく、原則として各1個の議決権を有します。これは株式会社のような資本多数決とは異なる仕組みです。

つまり、「社員=従業員」ではありません。歯科医師や歯科衛生士、受付スタッフなどの従業員とは役割が異なります。

区分役割
社員法人運営の重要事項を決定する構成員
理事法人の業務を執行する役員
理事長法人を代表する役員
従業員診療や事務などの業務を担当するスタッフ

理事・理事長との違い

社員総会で重要事項が決定され、その決定に基づいて理事が業務を執行し、理事長が法人を代表します。そのため、理事長だけを交代すれば事業承継が完了するとは限らず、社員構成や定款の内容も含めて確認する必要があります。

社員退社・社員加入の流れ

社員の加入や退社は、定款に定められた手続きに従って行われます。M&Aでは、旧オーナーが退社し、新たな社員が加入するケースがありますが、その進め方は法人ごとに異なります。

変更内容によっては都道府県への届出等が必要となる場合もあるため、売却を検討し始めた段階で定款や社員構成を確認しておくと、その後の手続きを進めやすくなる可能性があります。

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医療法人(歯科)の売却で準備すべきポイント

医療法人のM&Aでは、買い手が見つかればすぐに売却できるわけではありません。法人の運営体制や法的な手続きを確認し、承継しやすい状態を整えておくことが、円滑なM&Aにつながる可能性があります。

定款の内容を確認する

最初に確認したいのが医療法人の定款です。定款には、社員資格の取得・喪失、社員総会の運営方法、理事・監事の選任や退任など、法人運営に関する重要事項が定められています。医療法では、社員資格の得喪に関する事項を定款へ記載することが求められています。

特にM&Aでは、社員の交代や役員変更を伴うケースがあるため、現在の定款でどのような手続きが必要となるのかを事前に確認しておくことが重要です。

社員・役員構成を整理する

次に確認したいのが、社員・理事・監事の構成です。

長年運営している医療法人では、設立当初の社員がそのまま残っていたり、実際の運営体制と社員名簿が一致していなかったりすることがあります。

買い手はデューデリジェンス(買収前調査)の中で法人運営体制も確認するため、次の資料を整理しておくと、その後の手続きを進めやすくなる可能性があります。

確認項目内容
定款社員資格・役員規定・社員総会の運営方法
社員名簿現状と一致しているか
役員一覧理事・理事長・監事
議事録社員総会・理事会
財務資料決算書・試算表など

出資持分の有無を確認する

持分あり医療法人では、出資持分の有無や出資者の状況が重要な確認事項になります。

一方、持分なし医療法人では、出資持分の譲渡という考え方ではなく、社員・役員体制など法人運営の承継が中心となるケースが一般的です。ただし、実際の承継方法は法人の状況や定款によって異なります。

行政手続きも確認しておく

医療法人では、役員変更や定款変更などについて、変更内容に応じて都道府県への届出や認可等が必要となる場合があります。

必要な手続きは法人の状況や自治体によって異なるため、事前に確認しておくことでスケジュールを立てやすくなります。

売却価格はどのように決まる?

「医療法人を売却すると、いくらくらいになるのか」は、多くの院長が気になるポイントです。

ただし、売却価格を一律に決める基準はありません。一般的には次のような要素を総合的に評価して決定されます。

  • 売上・利益の推移
  • 患者数や自費診療の割合
  • 設備や建物の状況
  • スタッフの定着状況
  • 地域性や競合環境
  • 将来の収益性

そのため、「同じ歯科医院だから同じ価格」ということはなく、個別の状況によって評価は大きく異なります。

医療法人(歯科)の買い手にはどのような法人がある?

買い手となるのは一つの形態だけではありません。

例えば次のようなケースがあります。

  • 歯科医療法人
  • 複数医院を運営する医療法人グループ
  • 分院展開を検討している歯科医師
  • 地域医療の維持を目的とする法人

買い手によって希望する承継方法や条件は異なるため、幅広い候補と比較検討することが納得のいくM&Aにつながる可能性があります。

医療法人(歯科)のM&Aを成功させるポイント

できるだけ早く準備を始める

売却を考え始めた段階で相談することで、社員構成の整理や定款の確認、財務資料の準備などを余裕を持って進められる可能性があります。

医療法人制度に詳しい専門家へ相談する

医療法人のM&Aでは、医療法だけでなく、税務・会計・労務・行政手続きなど複数の分野が関係します。

歯科医院や医療法人の承継実績がある専門家へ相談することで、自院に適した承継方法を検討しやすくなります。

秘密保持を徹底する

売却情報が早い段階で従業員や患者、取引先へ伝わると、不安や誤解につながる可能性があります。

そのため、一般的には秘密保持契約(NDA)を締結したうえで交渉を進め、情報開示のタイミングを慎重に判断します。

まとめ

医療法人(歯科)の売却では、「出資持分」と「社員」の仕組みを正しく理解することが重要です。

株式会社とは制度が異なるため、株式譲渡のような方法ではなく、法人形態や定款、社員・役員構成などを踏まえた承継方法を検討する必要があります。

また、持分あり・持分なしによって論点が異なるため、まずは自院の法人形態を確認し、早めに準備を始めることが円滑な事業承継につながる可能性があります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・法務・行政手続き等について個別の助言を行うものではありません。実際の手続きや税務判断については、弁護士・税理士・公認会計士などの専門家へご相談ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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