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自立訓練の売却・M&A|相場・流れと注意点

自立訓練(生活訓練・機能訓練)の事業所は、M&Aによる売却・事業承継を検討できます。ただし、譲渡価格は売上だけで決まるものではなく、収益性、利用状況、人員体制、報酬・加算、地域との連携、指定・行政上のリスクなどが総合的に確認されます。本記事では、自立訓練の売却相場の考え方から、買い手が見るポイント、M&Aの流れ、売却前の準備まで解説します。

自立訓練(生活訓練・機能訓練)は売却・M&Aできる?

自立訓練事業所も、第三者へのM&Aによる事業承継を検討できます。後継者不在、人材不足、経営者の引退、収益面の問題などから自社での事業継続が難しくなった場合でも、廃業だけでなく、他の事業者へ事業を引き継ぐ方法があります。

中小企業庁も、親族内承継・従業員承継とともにM&Aを事業承継の類型として紹介しています。また、2024年8月には「中小M&Aガイドライン(第3版)」が策定され、中小企業がM&Aを進める際の手続き、M&A支援機関との契約・手数料、トラブル防止などの留意点が整理されています。

自立訓練とは

自立訓練は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、「機能訓練」と「生活訓練」に分かれます。

機能訓練は、身体障害や難病等のある方などに対して、地域生活を営むために必要な身体機能・生活能力の維持・向上等を目的とした訓練や支援を行うサービスです。一方、生活訓練は、知的障害や精神障害のある方などに対し、地域生活を営むために必要な生活能力の維持・向上等を目的とした訓練や相談・助言等を行います。

なお、対象者や具体的な利用要件は個別の支給決定等によって異なるため、詳細は自治体・指定権者等への確認が必要です。

項目生活訓練機能訓練
主な目的地域生活に必要な生活能力の維持・向上等地域生活に必要な身体機能・生活能力の維持・向上等
主な支援生活に関する訓練、相談・助言等身体機能等に関する訓練・支援等
M&Aで確認したい点利用状況、人員体制、支援体制、地域連携等利用状況、人員・専門職体制、支援環境等

2026年(令和8年)には障害福祉サービス等報酬改定が実施されており、厚生労働省から改定事項、告示、通知・事務連絡等が公表されています。M&Aを検討するときも、最新の報酬体系や指定基準を踏まえて事業の状態を確認することが重要です。

小規模な自立訓練事業所でもM&Aを検討できる

「自立訓練だけでは規模が小さく、買い手が見つからないのでは」と不安に感じる経営者もいるでしょう。しかし、買い手が判断する材料は事業規模だけではありません。

たとえば、すでに相談支援、就労支援、共同生活援助などを展開している法人が、地域内のサービス体制を拡充するために自立訓練への参入を検討することも考えられます。

ただし、買い手候補の有無や譲渡条件は、地域、収益、利用状況、人員体制、物件などによって異なります。自立訓練であれば一律に売却できるわけではないため、個別に譲渡可能性を確認することが必要です。

M&Aの方法によって引継ぎ方が異なる

自立訓練のM&Aでは、法人格を維持したまま経営権を承継する方法や、対象となる自立訓練事業を切り出して事業譲渡する方法などが考えられます。

比較項目法人格を維持して経営権を承継するケース事業譲渡
主な対象法人の経営権対象事業・資産・契約等
契約関係法人が当事者となっている契約が継続する場合がある契約ごとに承継・再契約等が必要となる場合がある
職員法人格が変わらなければ雇用関係が継続するケースがある雇用承継について個別の手続きが必要となる
指定・行政手続き変更届等を含めて指定権者への確認が必要新規指定等を含めて指定権者への確認が必要

実際に選択できるM&A手法は法人形態によって異なります。また、障害福祉サービスの指定に関する手続きは、譲渡スキームや指定権者等によって異なる可能性があります。具体的なスキームを決める前に、指定権者や専門家へ確認してください。

自立訓練事業所が売却・M&Aを検討する主な理由

後継者が見つからない

経営自体に大きな問題がなくても、親族や職員の中に後継者候補がいないことがあります。経営者の年齢が上がってから急いで承継先を探すと、買い手候補の比較や引継ぎに十分な時間を確保できない可能性があります。

M&Aは、親族や従業員以外の第三者へ事業を引き継ぐ選択肢の一つです。

職員採用・人員体制の維持が難しい

障害福祉サービスでは、必要な人員体制を維持することが事業継続の前提です。採用難や退職によって経営者自身の現場負担が増え、将来の運営に不安を感じてM&Aを検討するケースもあります。

買い手側も、買収後に必要な人員体制を維持できるかを確認します。そのため、職員の資格、勤務形態、担当業務などを整理しておくことが重要です。

利用者確保や稼働状況に課題がある

自立訓練では、現在の利用者数だけを見るのではなく、利用終了と新規利用の状況を含めて、継続的に利用者を確保できる仕組みがあるかを確認することが重要です。

特に、利用相談が代表者個人の人脈だけに依存している場合、経営者交代後に新規利用者の確保が難しくなる可能性があります。どこから利用相談が入っているのかを整理し、地域との関係を法人として引き継げる状態にしておくことが望まれます。

経営者の引退や経営上の問題

経営者の年齢・体力面から引退を考えるケースのほか、赤字や資金繰りの悪化から事業継続を見直すケースもあります。

経営状態に不安がある場合も、廃業だけでなくM&Aによる承継可能性を確認しておくことで、選択肢を比較しやすくなります。

自立訓練の売却相場・企業価値はどう決まる?

自立訓練だけの一律の売却相場を示すことは難しい

自立訓練事業所のM&Aについて、「売上の○倍」「利用者1人につき○万円」といった一律の価格基準で判断することは適切ではありません。

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料では、中小M&Aの主な企業価値評価方法として、簿価純資産法、時価純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)などが示されています。また、評価によって算定された金額がそのまま譲渡価格になるとは限らず、最終的には個別の条件や交渉を踏まえて決定されます。

自立訓練のM&Aでも、純資産や収益力だけでなく、利用状況、人員体制、将来の事業継続性などを含めて評価する必要があります。

自立訓練ならではの事業性も評価材料になる

  • 利用者数と利用状況の推移
  • 利用終了と新規利用開始の状況
  • 新規利用者の相談・紹介経路
  • 職員数・資格・勤務状況
  • 経営者や特定職員への依存度
  • 基本報酬・加算の算定状況
  • 指定基準の遵守状況
  • 行政指導や報酬返還リスクの有無
  • 物件の賃貸借条件
  • 地域の相談支援事業所・医療機関等との連携

同程度の売上・利益でも、経営者が交代した後も安定して運営できる仕組みが整っているかによって、買い手側の判断が変わる可能性があります。

自立訓練のM&Aで買い手が見る7つのポイント

1.利用者数・利用状況

現在の利用者数だけでなく、月ごとの利用状況や利用終了、新規利用開始の推移なども確認されます。過去からの数字を整理しておくことで、買い手は買収後の事業計画を立てやすくなります。

2.新規利用者を確保できる経路

相談支援事業所、医療機関、行政、他の障害福祉サービスなど、どのような経路から利用相談につながっているかを確認します。代表者個人の人脈だけに依存せず、組織として地域との関係を構築できているかがポイントです。

3.人員体制

職員数、資格、勤務形態、勤続状況などは重要な確認項目です。特に運営上重要な役割を担う職員がM&A後も継続勤務できるかは、事業継続性に関わります。

4.報酬・加算の算定状況

2026年(令和8年)には障害福祉サービス等報酬改定が実施されています。M&A時には、最新の報酬体系を前提として、現在算定している報酬・加算の要件と実際の人員・運営状況に問題がないか確認することが重要です。

5.行政指導・報酬返還等のリスク

指定基準や報酬算定要件に問題がある場合、過去の報酬について返還等が発生する可能性があり、M&Aの条件に影響することがあります。行政からの通知、運営指導等の記録、改善状況などを整理しておきましょう。

6.地域との連携

相談支援事業所、医療機関、行政、他の障害福祉事業者などとの関係も事業継続性を判断する材料になります。利用者紹介の経路や地域ネットワークを整理しておくと、買い手が承継後の運営をイメージしやすくなります。

7.経営者が抜けても運営できる体制

代表者が利用者対応、採用、請求、営業、地域連携のほぼすべてを担当している場合、買い手は代表者退任後の運営リスクを慎重に確認します。

業務マニュアルの整備、職員への権限移譲、請求・契約関係の整理などを進め、組織として運営できる状態をつくっておくことが円滑な承継につながります。

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「自立訓練事業所がいくらくらいで売却できるのか知りたい」という段階でも、売却を決める必要はありません。M&A承継サポートでは、介護・医療・障がい分野に特化した知見をもとに無料簡易査定に対応しています。まずは現在の事業の相場感や譲渡可能性を確認してから、売却するかどうかをご検討いただけます。

自立訓練を売却する前に準備しておきたいこと

人員・資格関係の資料を整理する

職員一覧、資格、勤務形態、雇用条件などを整理します。特に運営上重要な役割を担う職員と、その業務内容を把握しておきましょう。

利用状況と財務資料を整理する

決算書や試算表だけでなく、月別売上、利用者数、利用状況、新規利用・利用終了の推移なども整理します。数字が悪化している場合も、原因と今後の改善可能性を説明できる状態にしておくことが重要です。

報酬・加算・指定関係書類を確認する

指定通知書、変更届、体制届、加算関係書類などを整理し、現在の人員・運営状況と届出内容に食い違いがないか確認します。

物件や契約の引継ぎ条件を確認する

賃貸物件で運営している場合は、M&A後も同じ物件を利用できるかを確認します。賃貸借契約のほか、リース、車両、システム、業務委託などの契約条件も整理しておきましょう。

自立訓練をM&Aで売却する流れ

  1. 相談・簡易査定:事業概要や財務状況を確認し、譲渡可能性や進め方を検討します。
  2. 資料準備・企業価値評価:財務資料、利用状況、人員体制、指定関係資料などを整理します。
  3. 買い手候補の探索:情報管理に配慮しながら候補先を探します。
  4. トップ面談・条件交渉:譲渡条件だけでなく、職員や利用者への対応、今後の運営方針などを確認します。
  5. 基本合意:譲渡価格やスケジュールなど主要条件について合意します。
  6. デューデリジェンス:財務・法務・労務・事業・行政上のリスクなどを詳しく確認します。
  7. 最終契約・クロージング:最終条件を契約書にまとめ、必要な手続きを経て譲渡を実行します。
  8. 引継ぎ:職員、利用者、関係機関等への説明を適切なタイミングで行い、事業運営を引き継ぎます。

自立訓練のM&Aで注意したい指定・行政手続き

障害福祉サービスは指定を受けて運営する事業です。M&Aでは、事業や設備を引き継げば行政上の指定も自動的に承継されると考えず、具体的な譲渡スキームに応じて必要な手続きを確認することが重要です。

厚生労働省は2026年6月に「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」を公表しています。実際に必要となる新規指定、変更届その他の手続きは、法人形態、M&Aの方法、指定権者等によって異なる可能性があります。

行政手続きが譲渡スケジュールに影響することも考えられるため、M&Aの具体的なスキームが見えてきた段階で、指定権者や行政手続きに詳しい専門家へ早めに確認してください。

自立訓練の売却で失敗を防ぐためのポイント

売却検討を早い段階で広めすぎない

M&Aの検討情報が早期に職員や利用者、関係先へ伝わると、不安や混乱につながる可能性があります。誰に、いつ、どこまで伝えるかを決め、秘密保持に配慮しながら進めることが重要です。

価格だけで買い手を決めない

提示価格だけでなく、利用者への支援方針、職員の雇用、事業所の継続方針、経営者の退任条件なども確認しましょう。障害福祉事業では、M&A後も安定してサービスを提供できる買い手かという視点も重要です。

M&A支援会社の契約・手数料を確認する

M&A支援会社を利用する場合は、着手金、中間金、成功報酬、最低手数料、業務範囲などを確認しましょう。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、支援内容と手数料、重要事項の説明などについて留意点が示されています。

赤字・小規模の自立訓練でも売却できる?

赤字や小規模であることだけを理由に、M&Aの可能性がなくなるわけではありません。ただし、安定した黒字事業所と比べて買い手候補や条件が限定される可能性はあります。

買い手が近隣で相談支援、就労支援、共同生活援助などを運営している場合、自立訓練を加えることで地域内のサービス体制を広げられる可能性があります。また、買い手側の本部機能や採用力を活用することで、単独運営時の課題を改善できる場合もあります。

一方で、重大な行政上の問題、多額の簿外債務、深刻な労務問題などがある場合は、買い手の判断や譲渡条件に大きく影響します。廃業を決定する前に、M&Aによる承継可能性も含めて比較することが重要です。

自立訓練の売却・M&Aに関するよくある質問

Q. 自立訓練事業所だけでも売却できますか?

A. 単独の自立訓練事業所でもM&Aを検討できます。ただし、買い手の有無や譲渡条件は、地域、収益、利用状況、人員体制、物件などによって異なります。

Q. 赤字でも買い手は見つかりますか?

A. 赤字だから一律に売却できないわけではありません。立地、人材、利用者基盤、買い手との事業シナジーなどを含めて判断される可能性があります。

Q. 職員にはいつ売却を伝えればよいですか?

A. 一律の正解はありません。M&Aの進捗や譲渡方法、職員の役割などを踏まえ、早すぎる情報開示による混乱と、説明が遅れることによる不信感の双方に配慮して決めます。

Q. 利用者はM&A後も利用できますか?

A. M&Aの方法によって契約や指定に関する対応が異なる可能性があります。利用者への説明や必要な契約手続き、行政手続きを含めて個別に確認する必要があります。

Q. 売却までどのくらいかかりますか?

A. M&Aの期間は案件によって異なります。M&A承継サポートには最短12日での成約実績がありますが、すべての案件で同様の期間を保証するものではありません。買い手探索、デューデリジェンス、契約や行政手続きなどに時間を要する場合があります。

まとめ|自立訓練の売却は早めの準備が重要

自立訓練(生活訓練・機能訓練)は、M&Aによる事業承継を検討できます。譲渡価格を考える際には、売上・利益だけでなく、利用状況、人員体制、報酬・加算、地域連携、行政上のリスク、経営者への依存度などを総合的に整理することが重要です。

また、障害福祉サービスでは、M&Aの方法によって指定や契約に必要な手続きが異なる可能性があります。売却価格だけで判断せず、利用者への支援や職員の雇用を含め、承継後も安定した事業運営ができる買い手かを確認することが大切です。

※本記事は、自立訓練事業所のM&A・事業承継に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件に対する税務・法務・労務・行政手続き等の助言を行うものではありません。実際のM&A、指定・届出、契約、税務処理等については、指定権者および弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家へ個別にご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
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