M&Aコラム

トップ > M&Aコラム > 医療 > 医療M&Aの流れ・進め方|手続きまで解説

医療M&Aの流れ・進め方|手続きまで解説

医療M&Aは、買い手が決まり契約を締結すれば完了するものではありません。クロージング後には、保健所や地方厚生局などへの行政手続きを適切に進めることで、診療を継続できる体制が整います。本記事では、医療M&Aの流れを相談から企業価値評価、契約、クロージング、行政手続きまで時系列でわかりやすく解説します。医療法人と個人クリニックの違いや、スムーズに進めるためのポイントも紹介しますので、初めてM&Aを検討する方はぜひ参考にしてください。

医療M&Aの流れは全部で8ステップ

医療M&Aでは、契約だけでなく行政手続きまで見据えてスケジュールを立てることが重要です。

まずは全体像を確認しましょう。

ステップ内容主な担当
STEP1相談・現状整理売り手・仲介会社
STEP2企業価値評価・資料作成仲介会社
STEP3買い手探索・トップ面談双方
STEP4基本合意双方
STEP5デューデリジェンス(DD)買い手
STEP6最終契約締結双方
STEP7クロージング・引継ぎ双方
STEP8行政手続き(保健所・地方厚生局等)専門家・行政

STEP1 売却・買収の相談

医療M&Aは、「売却を決めてから相談する」のではなく、「承継方法を含めて検討したい」という段階から相談するケースも少なくありません。

相談時には、次のような内容を整理します。

  • 後継者の有無
  • 希望する承継時期
  • 経営状況
  • 借入状況
  • スタッフの雇用継続に関する考え方

一般的には、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで情報共有を進めます。

STEP2 企業価値評価・資料作成

相談後は、医院・医療法人の企業価値を評価し、おおよその譲渡価格を算定します。

併せて、買い手へ提示する資料を準備します。

  • 決算書
  • 診療実績
  • 設備一覧
  • スタッフ構成
  • 許認可関係資料

匿名で概要のみを示す「ノンネームシート」と、詳細情報をまとめた企業概要書(IM)を作成し、候補先へ提案していきます。

STEP3 買い手探し・トップ面談

条件に合う買い手候補へ打診し、興味を示した企業とトップ面談を行います。

価格だけでなく、診療理念や地域医療への考え方、スタッフの雇用維持なども重要な確認事項です。

STEP4 基本合意書の締結

双方の方向性が一致したら、基本合意書を締結します。

  • 譲渡価格の目安
  • 今後のスケジュール
  • 独占交渉権
  • デューデリジェンス(DD)の実施

なお、基本合意書は最終契約とは異なり、条項によって法的拘束力の範囲が異なります。

STEP5 デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンス(DD)は、買い手がリスクや課題を把握するための重要な調査です。

  • 財務状況
  • 税務状況
  • 労務管理
  • 契約関係
  • 医療法上の許認可
  • 行政指導歴

医療機関では、医療法や保険診療制度への適合状況なども確認対象となります。

STEP6 最終契約の締結

DDで大きな問題がなければ、最終契約を締結します。

契約書では、譲渡価格、譲渡日、表明保証、競業避止義務、引継ぎ内容などを具体的に定めます。

STEP7 クロージング・引継ぎ

契約内容に基づき譲渡を実行し、診療体制の引継ぎを行います。

  • カルテ管理体制
  • 医療機器
  • 取引先
  • スタッフへの説明
  • 患者対応

スタッフへの説明時期は、買い手との調整状況や契約内容を踏まえ、慎重に判断することが重要です。

STEP8 行政手続き(保健所・地方厚生局等)

契約締結後は、保健所や地方厚生局などへの行政手続きが必要になるケースがあります。

必要となる手続きは、医療法人か個人クリニックか、また承継方法によって異なります。

例えば、開設者変更を伴う場合は、保健所への届出または許可申請等が必要となることがあります。また、保険医療機関として診療を継続するためには、地方厚生局で必要な申請・届出を行うケースがあります。

医療M&Aにかかる期間の目安

医療M&Aの進行期間は、医院の規模や交渉状況、行政手続きの内容によって異なります。

一般的な目安としては、初回相談からクロージングまで約6〜12か月程度となるケースが多いものの、案件によって前後します。

工程一般的な目安
相談・査定約2〜4週間
買い手探索・交渉約2〜4か月
DD・契約約1〜3か月
行政手続き・引継ぎ案件により異なる

特に行政手続きは自治体や承継方法によって必要書類やスケジュールが異なるため、早めに専門家や行政機関へ相談すると進めやすくなります。

保健所・地方厚生局ではどのような手続きが必要?

医療M&Aでは、最終契約を締結して譲渡が完了した後も、必要に応じて行政手続きを進める必要があります。

ただし、必要となる手続きは、医療法人か個人クリニックか、病院か診療所か、また承継方法によって異なります。そのため、早い段階で管轄の行政機関や専門家へ相談しておくことが重要です。

保健所への届出または許可申請等

保健所では、医療法に基づく各種届出や許可申請等が必要となる場合があります。

例えば、開設者変更や管理者変更などが生じるケースでは、必要書類や提出期限が定められています。また、自治体によって運用が異なる場合もあるため、事前確認が欠かせません。

地方厚生局での保険医療機関に関する手続き

健康保険診療を継続するためには、地方厚生局で保険医療機関の指定や変更に関する申請・届出が必要となるケースがあります。

健康保険法や関連省令では、開設者の変更や指定内容の変更などについて、地方厚生局長等への届出・申請が定められています。提出期限が設定されている手続きもあるため、余裕を持って準備しましょう。

医療法人では都道府県への手続きが必要になる場合もある

医療法人の承継では、役員変更や定款変更などに伴い、都道府県への認可や届出が必要となるケースがあります。

一方、個人クリニックでは開設者変更などに伴う手続きが中心となるため、同じ「医療M&A」でも必要な対応は異なります。

行政手続きは専門家と並行して進めることが重要

行政手続きは契約締結後に慌てて準備するのではなく、M&Aの交渉段階からスケジュールを確認しておくことが大切です。

提出期限に間に合わないと診療開始時期へ影響する可能性もあるため、仲介会社や行政書士、弁護士などの専門家と連携しながら進めると安心です。

無料相談受付中
行政手続きは、承継方法や自治体によって必要な内容が異なります。「自院ではどのような手続きが必要なのか知りたい」という方は、まずは無料相談をご利用ください。現在の状況に応じた進め方をサポートいたします。

医療法人と個人クリニックでは流れが異なる

医療M&Aでは、医療法人を承継する場合と個人クリニックを承継する場合で、契約方法や行政手続きが異なります。

比較項目医療法人個人クリニック
承継対象法人そのもの事業・資産が中心
主なスキーム法人承継など事業譲渡など
行政手続き認可・届出等開設者変更等
特徴法人を継続しやすい必要な資産を引き継ぎやすい

医療法人の場合

医療法人では、法人自体を承継するため、契約関係や資産・負債なども含めて引き継ぐケースが一般的です。

役員変更や定款変更などが発生する場合には、都道府県への認可・届出が必要となることがあります。事前相談を求められるケースもあるため、余裕を持った準備が重要です。

個人クリニックの場合

個人クリニックでは、事業譲渡によって診療設備や患者との関係、スタッフなどを引き継ぐケースが多くみられます。

開設者が変わる場合には、保健所への届出または許可申請等に加え、地方厚生局で保険医療機関に関する手続きが必要となる場合があります。

事業譲渡と法人承継の違い

どちらの方法が適しているかは、医院の状況や買い手の目的によって異なります。

  • 法人をそのまま引き継ぐか
  • 契約や借入をどのように承継するか
  • 行政手続きの内容
  • 税務上の影響

それぞれにメリット・注意点があるため、税務・法務・医療制度を踏まえて検討することが大切です。

医療M&Aをスムーズに進める5つのポイント

医療M&Aは、契約だけでなく行政手続きや引継ぎまで含めて計画的に進めることが重要です。ここでは、実務上特に意識しておきたいポイントを紹介します。

1. 行政機関へ早めに相談する

保健所や地方厚生局への手続きは、医療機関の種類や承継方法によって異なります。必要書類や提出期限も変わる場合があるため、交渉が進み始めた段階から確認しておくと安心です。

2. スタッフへの説明時期を慎重に判断する

スタッフへ早く伝えすぎると不安を招く可能性があり、反対に遅すぎると信頼関係に影響することもあります。買い手との合意状況や契約内容を踏まえ、適切なタイミングで説明することが大切です。

3. デューデリジェンス(DD)前に資料を整理する

DDの段階で必要資料が不足すると、スケジュールが延びる要因になります。事前に次の資料を整理しておくと、交渉が円滑に進みやすくなります。

  • 決算書・試算表
  • 賃貸借契約書
  • 医療機器一覧
  • スタッフ情報
  • 許認可関係書類
  • 主要な取引先との契約書

4. 余裕を持ったスケジュールを組む

医療M&Aは、相談からクロージングまで一般的に6〜12か月程度を要するケースがありますが、交渉内容や行政手続きによって前後します。

特に行政手続きは提出期限が設定されているものもあるため、契約締結後だけでなく、交渉段階から全体スケジュールを確認しておくことが重要です。

5. 医療分野に強い専門家へ相談する

医療M&Aでは、医療法や健康保険法など複数の制度が関係します。医療分野の実績があるM&A仲介会社や税理士、弁護士、行政書士などと連携することで、契約から行政手続きまで一貫したサポートを受けやすくなります。

よくある質問(FAQ)

医療M&Aにはどれくらいの期間がかかりますか?

一般的には、初回相談からクロージングまで約6〜12か月程度となるケースが多いものの、案件の規模や交渉状況、行政手続きによって前後します。

保健所への手続きはいつ行いますか?

開設者変更などを伴う場合は、保健所への届出または許可申請等が必要となることがあります。提出時期は承継方法や自治体によって異なるため、事前に管轄の保健所へ確認しましょう。

地方厚生局ではどのような手続きが必要ですか?

保険医療機関として保険診療を継続するためには、地方厚生局で指定申請や変更届などが必要となるケースがあります。必要な手続きは案件によって異なります。違いますか?

はい。医療法人では法人承継や役員変更等を伴う場合があり、個人クリニックでは事業譲渡や開設者変更などが中心となります。そのため、必要な行政手続きも異なります。

赤字の医療機関でもM&Aは可能ですか?

赤字であっても、立地や診療圏、スタッフ体制、設備などが評価され、譲渡につながる可能性があります。まずは専門家へ相談し、自院の状況を確認することをおすすめします。

まとめ

医療M&Aは、相談から企業価値評価、買い手探し、デューデリジェンス、契約、クロージング、そして保健所や地方厚生局などへの行政手続きまで、多くの工程を経て進みます。

また、医療法人と個人クリニックでは承継方法や必要な手続きが異なるため、全体の流れを理解したうえで計画的に準備を進めることが重要です。行政手続きは自治体や案件ごとに異なるため、早い段階から専門家や管轄行政機関へ相談しながら進めると安心です。

免責事項

本記事は、医療M&Aに関する一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税務・法務・会計・行政手続きに関する助言を行うものではありません。実際の手続きは承継方法や自治体の運用によって異なるため、税理士・弁護士・行政書士などの専門家および管轄の行政機関へご確認ください。

まずはお気軽にお問い合わせください。

松本 圭祐
記事監修
取締役
松本 圭祐
新卒で楽天株式会社に入社し、その後合同会社DMM.comに転職。オンライン英会話サービスの「DMM英会話」の立ち上げを担当し、3年で業界最大手となる。
日本チームのマネージャーを務めた他、新規事業や法人営業なども管掌。その後ヘルスケア・福祉関連の事業を行う上場企業に転職し、M&A支援事業の立ち上げ、グロース全般を担当。
今までにM&Aコンサルタントとして50件以上の案件を成約に導く。
一覧に戻る