クリニック売却・M&A|個人と医療法人の違い
クリニック(診療所)の売却を検討する際、「個人で開業している場合でも売却できるのか」「医療法人とは何が違うのか」と疑問を持つ院長は少なくありません。実際には、個人クリニックと医療法人では利用できるM&Aのスキームや必要な手続き、税務上の取り扱いなどが異なります。この記事では、クリニック売却・M&Aの基本から、個人と医療法人の違い、売却価格の考え方、売却を成功させるポイントまで分かりやすく解説します。事業承継を検討し始めた方や、まずは相場感を知りたい方はぜひ参考にしてください。
クリニック(診療所)の売却・M&Aは「個人」と「医療法人」で大きく異なる
クリニックの売却を検討する際、最初に確認したいのが「個人開業」なのか「医療法人」なのかという点です。
どちらもM&Aによる事業承継は可能ですが、利用できるスキームや必要な手続きは異なります。そのため、自院の運営形態を把握したうえで売却方法を検討することが重要です。
| 比較項目 | 個人クリニック | 医療法人 |
|---|---|---|
| 開設者 | 個人 | 医療法人 |
| 主な承継方法 | 事業譲渡 | 医療法人の形態に応じた承継スキーム |
| 契約関係 | 契約ごとに承継手続きが必要になる場合が多い | 法人単位で承継しやすいケースが多い |
| 行政手続き | 案件に応じて開設・廃止・保険医療機関等の届出が必要 | 承継方法に応じた届出等が必要 |
| 税務 | 個人の譲渡所得等が関係 | 承継スキームにより異なる |
「クリニックを売却する」という目的は同じでも、実際の進め方は大きく異なります。まずは自院に適した方法を理解することが、スムーズな事業承継につながります。
まず確認したい「自院はどちらか」
以下に当てはまる場合は、個人クリニックである可能性が高いでしょう。
- 院長個人が開設者となっている
- 個人事業として確定申告を行っている
- 医療法人を設立していない
一方、医療法人の場合は、法人名義でクリニックを運営し、理事長や社員など法人組織として管理・運営されています。
ご自身で判断が難しい場合は、登記事項証明書や開設許可書などを確認すると把握できます。
違いを最初に理解しておくことが重要な理由
「できるだけ高く売却したい」と考えることは自然ですが、価格だけでなく、売却後の手続きやスタッフ・患者への影響まで考慮することが重要です。
例えば、個人クリニックでは設備や契約などを個別に承継するケースが多い一方、医療法人では法人の形態に応じた承継方法が選択されることがあります。
そのため、「どちらが有利か」ではなく、自院の状況に適した方法を選択することが重要です。
個人クリニックの売却方法
個人クリニックでは、一般的に事業譲渡によって事業承継を行います。
事業譲渡とは、医療機器や設備、内装、営業上の権利などを買い手へ引き継ぐ方法です。ただし、何を承継できるかは契約内容や法令によって異なるため、個別の確認が必要です。
基本は事業譲渡で進める
個人事業には法人格がないため、法人そのものを譲渡することはできません。そのため、必要な資産や契約を一つずつ整理しながら承継を進めていきます。
代表的な承継対象は以下のとおりです。
- 医療機器・備品
- 内装設備
- 賃貸借契約(貸主の承諾が必要となる場合があります)
- スタッフとの雇用契約
- 継続的な診療体制の引継ぎ
一方で、行政上の手続きや許認可は、そのまま引き継げるとは限りません。案件ごとに必要な届出や手続きが異なるため、事前に確認することが重要です。
引き継げるもの・引き継げないもの
| 項目 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 医療機器 | 承継可能 |
| 内装・設備 | 承継可能 |
| スタッフ | 再契約等が必要になる場合がある |
| 継続的な診療体制 | 適切な引継ぎを実施 |
| 賃貸借契約 | 貸主承諾等が必要になる場合がある |
| 行政上の指定・届出 | 案件ごとに必要な手続きが異なる |
「クリニックをそのまま引き渡す」というイメージを持たれることがありますが、実際には契約や法令に沿って一つずつ承継していくことになります。
個人クリニックで注意したい行政手続き
クリニックは医療法などの関係法令に基づいて運営されているため、一般企業とは異なる行政手続きが必要になります。
売却方法によっては、開設・廃止・保険医療機関に関する届出などが必要となる場合があります。必要な手続きは案件ごとに異なるため、都道府県等の担当窓口や専門家へ確認しながら進めることが重要です。
クリニック売却を検討し始めたら準備したいチェックリスト
「まだ売却するか決めていない」という段階でも、事前準備を進めておくことで選択肢を広げやすくなります。
- 自院が個人クリニックか医療法人か確認する
- 決算書・確定申告書などを整理する
- 賃貸借契約やリース契約を確認する
- 医療機器・設備の一覧を作成する
- 後継者の有無や今後の経営方針を整理する
- 医療業界に詳しいM&A専門家へ相談する
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医療法人のクリニック売却方法
医療法人が運営するクリニックでは、個人クリニックとは異なり、法人の形態に応じた承継スキームによって事業承継を行うことが一般的です。
ただし、医療法人のM&Aは一般企業とは異なる制度が関係するため、法人の種類や設立時期、定款の内容などによって適した方法が変わります。
医療法人M&Aの主な承継スキーム
医療法人では、主に次のような方法が検討されます。
- 社員・役員等の交代を伴う承継
- 持分の定めがある医療法人における持分の承継
- 事業譲渡
- 合併などの組織再編
実際にどの方法を選択するかは、法人の種類や買い手の目的、地域医療への影響などを総合的に判断して決定されます。
持分あり・持分なし医療法人の違い
医療法人には、「持分の定めがある医療法人」と「持分の定めがない医療法人」があります。
平成19年(2007年)の医療法人制度改革以降、新たに設立される社団医療法人は、持分の定めがない医療法人が原則となっています。一方で、制度改正以前に設立された持分の定めがある医療法人については、現在も存続しているケースがあります。
そのため、売却方法や承継方法は法人の種類によって異なる場合があります。自院がどちらに該当するか分からない場合は、定款や登記事項証明書などを確認するとよいでしょう。
医療法人特有の注意点
医療法人のM&Aでは、一般企業とは異なる制度が関係するため、次のような点に注意が必要です。
- 医療法に基づく運営が求められる
- 社員・理事など法人運営体制の確認
- 契約内容や債務の確認
- 承継方法に応じた行政手続き
制度や手続きは案件ごとに異なるため、医療分野に精通した専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
個人クリニックと医療法人の違いを比較
| 比較項目 | 個人クリニック | 医療法人 |
|---|---|---|
| 主な承継方法 | 事業譲渡 | 法人形態に応じた承継 |
| 契約関係 | 個別承継が多い | 法人単位で承継しやすいケースが多い |
| 税務 | 個人の譲渡所得等 | 承継方法により異なる |
| 行政手続き | 案件ごとに異なる | 案件ごとに異なる |
| 売却準備 | 契約整理が重要 | 法人運営体制の確認が重要 |
どちらが有利ということではなく、自院の運営形態や将来の方針に合った承継方法を選択することが大切です。
クリニックの売却価格はどのように決まる?
クリニックの売却価格は、医療機器や建物だけで決まるわけではありません。買い手は、将来の収益性や運営体制なども含めて総合的に評価します。
売却価格を左右する主なポイント
- 安定した売上・利益があるか
- 患者数や地域での需要
- 立地条件や診療圏
- 医療機器・設備の状態
- スタッフが定着しているか
- 院長に依存しすぎない運営体制か
これらを総合的に評価したうえで、譲渡価格が検討されます。
価格が下がる可能性があるケース
- 設備の老朽化が進んでいる
- 契約書類が整理されていない
- 患者数や売上が大きく減少している
- 院長しか診療できない体制になっている
ただし、これらに該当する場合でも売却できないとは限りません。地域性や買い手との相性によって評価が変わることもあります。
クリニック売却を成功させるポイント
後継者不足を感じた段階から準備する
M&Aは数週間で完了するケースばかりではありません。後継者について考え始めた段階から情報収集を始めることで、より多くの選択肢を検討できます。
必要書類を整理しておく
- 決算書・確定申告書
- 賃貸借契約書
- 医療機器一覧
- リース契約
- スタッフ体制が分かる資料
秘密保持を徹底する
売却情報が早い段階で広まると、スタッフや患者に不安を与える可能性があります。そのため、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで慎重に進めることが一般的です。
医療業界に詳しい専門家へ相談する
医療分野のM&Aでは、医療法や行政手続きなど専門的な知識が求められます。実績のある専門家へ相談することで、自院に適した承継方法を検討しやすくなります。
まとめ
クリニック(診療所)の売却では、個人クリニックと医療法人で承継方法や必要な手続きが異なります。
- 個人クリニックは事業譲渡が中心
- 医療法人は法人形態に応じた承継スキームを検討する
- 売却価格は収益性や立地、運営体制などを総合的に評価して決まる
- 早めの準備が選択肢を広げる
- 制度に詳しい専門家へ相談することが成功への近道
「まだ売却を決めていない」「今すぐではないが将来に備えたい」という場合でも、相場感や選択肢を知っておくことは経営判断に役立ちます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。制度や税務、行政手続きは個別の状況によって異なります。具体的な手続きについては、税理士・弁護士・行政書士などの専門家や関係行政機関へご確認ください。
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